研究課題/領域番号 |
23K17149
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 純平 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (10845027)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | X線自由電子レーザー / X線ミラー / X線ナノ集光 / X線非線形光学 |
研究開始時の研究の概要 |
X線自由電子レーザーの7×7ナノメートル集光とそれに伴う10^22 W/cm^2のピーク強度が達成された.可視光域の最先端にも比肩し得るこの超高強度X線レーザー場を用いて,本研究では,多重励起状態原子・分子物理の探索と高次の硬X線非線形光学現象の観測を実施する.具体的には,電子の多重励起が予測される7ナノメートル集光XFEL照射時に基礎とすべき励起状態を決定し,これらの知見を基に硬X線領域の高次非線形光学現象の観測を目指す.世界唯一の極限集光X線レーザーを真に使いこなし,新たな物理現象の探索へと乗り出す.
|
研究実績の概要 |
本研究では,多重励起状態原子・分子物理の探索と高次の硬X線非線形光学現象の観測を実施する.電子の多重励起が予測される7ナノメートル集光XFEL照射時に基礎とすべき励起状態を決定し,これらの知見を基に硬X線領域の高次非線形光学現象の観測を目指す. 本年度は,多重励起状態の観測と7 nmXFELでの実験様式の確立を進めた.具体的には,CrやMnといった元素の金属薄膜に7 nm集光XFELを照射し,蛍光X線分光測定を実施する環境を整備した.独自に開発した試料調製ユニットとマグネトロンスパッタ法を用いて,平らなカプトンフィルム基板上に1~2μm厚みの金属薄膜を再現性よく作製した.また,HAPG結晶アナライザにもとづく分光測定配置を確立した. 実験の結果として,CrからCoまでの4種の金属元素について特異な蛍光発光スペクトルを取得し,とくに高強度X線場に特有の水素様イオンからの発光スペクトルであるライマンα線およびライマンβ線とその元素依存性の取得に成功した. さらに非線形光学実験の下準備として,Zr元素を対象に二光子吸収の観測を行った.予測どおり,二光子吸収シグナルの計測に成功するだけでなく,極めて高強度なX線場において現象の非線形性が変化する様を観測した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目標としていた多重励起状態の観測を4種もの金属元素で実施でき,その元素依存性は高電離状態のイオン化エネルギーが従来の予測に従うことを実験的に明らかにするものであった.また,水素様イオンからの発光スペクトルは,現在の原子スペクトルデータベースには存在しない準位エネルギーを示し,X線励起に特有の原子・イオン状態を実現した可能性がある.また本来は次年度に予定していた非線形光学実験を前倒しして実施することができ,目標とするX線直接三光子吸収の実現に向けて不可欠な知見を得た.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度はX線領域での直接三光子吸収の観測を試みる.準位エネルギーの高いMoなどの重金属元素では,通常の場合電子励起されない1s電子であ っても,超高強度XFEL下では3光子の同時寄与により光電吸収される余地がある.3光子の入射-1光子の出射の4次非線形現象であり,実現すれば硬X線領域初となる. また,X線の高次非線形現象を観測したあかつきには,現状9.1keVに限られているX線波長の拡張を試みる.別波長への対応のみに留まらず,マルチd-space多層膜の開発により複数波長を利用可能とし,XFEL2色発振技術を組み合わせた物質の高強度ダイナミクス計測や,多波混合に基づく非線形光学事象の観測へと発展させたい.
|