研究課題/領域番号 |
23K17199
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 静 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (80822494)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ダイレクトリプログラミング / 食道上皮細胞 / オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
食道がん切除後に「食道狭窄」を発症することがあり、問題となっている。食道狭窄は、上皮細胞の欠損による炎症が原因であることが知られている。そのため、上皮細胞欠損部を他の組織の細胞や人工的に作製した食道上皮細胞で補い、狭窄を予防することが望まれる。現在、口腔粘膜由来の細胞シートを移植する方法やiPS細胞から食道オルガノイドを作製する方法が確立されているが、口腔粘膜由来の細胞が食道上皮細胞として機能できるかは不明であり、iPS細胞を用いた場合も腫瘍形成のリスクがある。そこで、ダイレクトリプログラミングを用いてヒト誘導食道上皮細胞の作製を試みる。この細胞は、食道狭窄予防の新たな治療法として期待できる。
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研究実績の概要 |
食道狭窄に対する現在の治療法は、バルーンを用いて物理的に狭窄部を押し広げる方法が一般的だが、患者の身体的かつ精神的ストレスが非常に大きい。この問題を解決する方法として、内視鏡的粘膜切除時にできた潰瘍部に口腔粘膜由来細胞シートを移植することで狭窄を予防する方法も報告されている。しかしながら、口腔粘膜由来の細胞を用いる際の侵襲性の問題や、口腔粘膜由来の細胞は食道上皮細胞と同じ細胞ではないため、食道上皮組織として同様に機能できるかは不明である。リプログラミング技術を利用した細胞の作製としては、iPS細胞から食道上皮細胞を作製したという報告がある。しかし、iPS細胞から作製した細胞の移植は行われておらず、生体内で食道上皮組織を構築できるかは明らかになっていない。また、iPS細胞から誘導した場合、上皮細胞だけではなく間質の細胞も同時に分化し、上皮細胞と間質細胞が混在したオルガノイドが作製される。そのため、上皮細胞のみを使用したい食道狭窄の予防に対しては、iPS細胞由来の食道細胞の利用は困難である。一方、ダイレクトリプログラミングを用いた場合、上皮細胞だけを作製することができるので、食道狭窄予防のための潰瘍部への移植に適していると考えられる。そこで、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)から食道上皮細胞を作製するために必要な転写因子の探索を行った。食道上皮細胞で高発現している遺伝子を抽出し、それらをレトロウイルスでHUVECに導入した。いくつかの遺伝子を組み合わせてHUVECに導入した結果、いくつかの組み合わせにおいて食道上皮細胞マーカーの遺伝子発現が上昇した。現在、これらの細胞をゲル中で三次元培養して解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食道上皮細胞へのリプログラミングに必要であると考えられる候補遺伝子を食道の発生や恒常性の維持に必要な遺伝子を選び、それらの遺伝子を搭載したレトロウイルスベクターを作製した。これらの候補遺伝子をさまざまな組み合わせでHUVECに導入したところ、いくつかの組み合わせで食道上皮細胞マーカーの遺伝子発現が上昇し、HUVECから誘導食道上皮細胞を作製するために必要な転写因子を選択することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はマトリゲルを用いた3次元培養を行い、誘導食道上皮細胞由来オルガノイドを作製する。この方法を用いることにより、in vitroで生体内と同様の3次元的な構の形成が期待できる。作製したオルガノイドが生体由来の食道上皮細胞と同様の組織構造を構築できているかを解析する。生体の食道上皮細胞と同様の形態を持つ細胞が作製できた場合は、続いて生体の食道上皮細胞由来オルガノイドと誘導食道上皮細胞由来オルガノイドの網羅的遺伝子発現解析を行い、両者を比較する。網羅的遺伝子発現解析の結果から、生体由来の食道上皮細胞と同様の遺伝子発現を有していることが明らかになった場合は、3次元培養によって組織構築した誘導食道上皮細胞が生体内でも組織構築能を有するかを明らかにすべく、移植を行う。
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