研究課題/領域番号 |
23K17208
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石川 昇平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50897981)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ハイドロゲル / 多孔質材料 / スポンジ / 細胞足場 / 相分離 / 組織足場 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、今まで曖昧であったゲルとスポンジの定義を明確にし、ゲルとスポンジを自由自在に作り分け、かつ生体適合性のスポンジを作成する。ゲルは生体組織と類似する物性を持つという認識は厳密には間違っており、正確には、破断しにくく、離水的なスポンジこそが、生体組織と似たような性質を持つ。本研究により設計した高分子スポンジは、精密な物性制御が容易であるため、”高分子スポンジ”という新規な学問を開拓するのみならず、組織再生・組織工学の発展に寄与するものである。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、生体適合性のpoly(ethylene glycol) (PEG) スポンジの作成を目的とする。本年度は、PEG スポンジの作製にかかる設計手法の最適化を行った。ゼラチンなどの動物性由来材料は、細胞毒性の懸念となるシグナル伝達性を有するため、細胞と接触するバイオマテリアルの設計に適していない。本研究では、FDA に承認済みの材料であるPEG のみを用い、簡便な設計手法を用いてPEG スポンジの設計を行なった。設計したPEG スポンジは、10-100 μm の三次元連通した多孔質構造を有する。この材料の構造操作性と穴の大きさは、開発されたPEG ゲルの中で最も優れている。さらに、スポンジを圧縮試験機を用いて圧縮したところ、応力の緩和挙動が観察されたことから、開発したスポンジは実際のスポンジのように離水挙動を示すことが示唆された。また、100 μm 程度の穴を有するPEG ゲルは、細胞と同程度のサイズの粒子を透過したことから、細胞足場としての応用にも貢献しうる。実際にPEG スポンジに対し、細胞接着性分子であるRGD ペプチドを修飾し、線維芽細胞を播種し細胞培養を行なったところ、材料中への細胞遊走が達成された。さらに、頭骨欠損モデルのラットに対し、成長因子を添加したPEG スポンジを移植したところ、骨形成も確認された。以上のことから、本研究で開発したPEG スポンジは、バイオマテリアルとして応用しうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
完全合成材料からなる生体適合性に優れたPEG スポンジの開発に成功し、その穴の大きさを自由自在にコントロールできることを示したため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究では、PEG スポンジの作製にかかる設計手法を最適化し、高分子濃度に依存した相分離構造の形成を見出した。さらに、細胞足場材料としても展開しうることから、バイオマテリアルとしても応用できる。今年度の研究計画では、PEG プレポリマーを非当量混合しゲル化させ、多孔質構造を形成することで、構造操作性をより広げる。また、作製条件をさらに最適化し、ポアサイズの最大化を測る。さらに、形成した多孔質構造と物性との相関を調査するために、様々な多孔質構造を有するPEG スポンジでの弾性率、浸透圧、圧縮緩和挙動を調査する。これらの知見をもとに、ハイドロゲルで観察された物性の物理法則と比較し、ハイドロゲルとスポンジの違いを明確化する。さらに、様々な多孔質構造を有するゲルに対し、間葉系幹細胞の分化実験を行うことで、細胞の分化挙動に最適なポアサイズ、構造を明確化する。以上の結果から、これまで曖昧とされてきたゲルとスポンジを隔てる物性的な違いを定義付け、新しいスポンジの学理を確立する。
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