研究課題/領域番号 |
23K17215
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
池田 真由美 和歌山県立医科大学, 薬学部, 助教 (90965708)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 超硫黄分子 / 経皮デリバリー / 乾癬 / 硫化水素 / 経皮 / ヒアルロン酸 |
研究開始時の研究の概要 |
アンメットメディカルニーズの高い疾患である乾癬の新規治療薬を開発する。具体的には、抗酸化・抗炎症作用を有する生理活性ガス分子である硫化水素 (H2S) をヒアルロン酸へ結合させたものを合成する。ヒアルロン酸と合成することにより、乾癬の炎症部へ安定かつ選択的にH2Sを供給することが期待できる。さらに、同化合物を経皮吸収促進作用をもつイオン液体に溶解することにより、炎症部位への効率的な浸透を期す。材料はいずれも安価であるため、医薬品コストを抑えた乾癬治療の開発へと期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究は超硫黄を皮膚に供給する新しいDDSを開発し、その乾癬治療を評価することを目的とする。超硫黄の経皮デリバリー方法として、ヒアルロン酸およびイオン液体に着目した。乾癬の炎症部にはヒアルロン酸の受容体であるCD44が過剰発現しており、ヒアルロン酸は乾癬の炎症部への薬物送達に用いられる。本研究では、ヒアルロン酸のカルボン酸を標的に架橋剤を用いてチオール化合物を共有結合させ、酸化させたのちに硫化水素と反応させることにより超硫黄付加ヒアルロン酸を合成することに成功した。未処理のヒアルロン酸と比較し、超硫黄付加ヒアルロン酸は高い抗酸化活性を示した。また、内皮細胞における取り込み活性を評価したところ、超硫黄付加ヒアルロン酸は細胞内に超硫黄を送達することが示された。さらに、フランツセルを用いた試験においても超硫黄付加ヒアルロン酸はラット皮膚に超硫黄を供給できることが示された。 もう一つの超硫黄送達方法として、イオン液体を用いた経皮DDSを試みた。チオール基を含有したイオン液体に超硫黄分子を溶解させることにより、超硫黄含有イオン液体を調製した。超硫黄含有イオン液体は超硫黄付加ヒアルロン酸同様に内皮細胞やラット皮膚に超硫黄を供給することが示された。現在、イミキモドクリームを用いたマウス乾癬モデルにおいて、チオール基含有イオン液体の治療効果を評価している。現時点では、病態により増加した脾臓重量の減少傾向が観察されている。 今後は超硫黄含有イオン液体および超硫黄付加ヒアルロン酸の乾癬治療効果についてin vivoで詳細な検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度に予定していたのは、超硫黄含有イオン液体および超硫黄付加ヒアルロン酸の合成および物性評価であり、予定通り合成に成功しており物性評価もおおむね完了している。in vitroにおいて取り込み試験および治療効果の評価を行う予定であったが、イオン液体を経皮に塗布した際の毒性を考慮して治療効果の評価は令和6年度に計画していたin vivo試験を優先させた。In vivoにおける毒性を評価しながらイオン液体の組成や超硫黄の搭載率を調整することで、より効率的に研究を遂行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
乾癬モデルマウスにおける超硫黄含有イオン液体の治療効果について、組織染色や炎症性サイトカイン定量を行うことでより詳細に解析する。治療効果が不十分であると判断された場合は、イオン液体の組成や投与量、投与濃度を調整する。超硫黄付加ヒアルロン酸においても乾癬モデルマウスにおける毒性や治療効果を評価する。さらに、超硫黄含有イオン液体および超硫黄付加ヒアルロン酸の治療効果についてin vitroにおいても評価し、メカニズムの理解に繋げる。
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