研究課題/領域番号 |
23K17221
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
石井 大介 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (00376279)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 機械灌流 / 小腸 / 機械灌流保存 / 小腸移植 / 虚血再灌流障害 / 免疫応答 |
研究開始時の研究の概要 |
小腸移植においては、限られた保存時間に加え腸間膜リンパ節などによる特異的医的免疫応答(急性拒絶反応、GVHD)などが高頻度で起こりグラフト生着に大きく影響する。これを制御するための本研究の実現には大きく3つの課題がある。 ①小腸灌流保存する機能回復、免疫制御を目指した保存液作成。②機械灌流管理に重要な様々な条件検討。③小腸機械灌流の有効性を示す評価項目の検討。
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研究実績の概要 |
【はじめに】機械灌流は移植用ドナーの拡大には欠かせない技術として認識されており、欧米を中心に腎臓、肺、心臓、肝臓への臨床応用が進んでいる。しかし、小腸に対する機械灌流の可能性については、十分な検討がなされていないのが現状である。また、小腸に対する臓器灌流保存の評価法も確立されていない。本報告では、ブタ小腸を用い、機械灌流の適用可能性について検討する。 【方法】ブタ小腸を摘出し、バックテーブルにおいて初期灌流を行った。摘出臓器は単純冷却保存あるいは機械灌流にわけ、保存ののちに自己血を用いた体温条件下での血液灌流を行い、小腸の灌流中の特性を観察、評価した。評価項目としては、流量、圧力を基本とし、pH ならびに酸素消費などの特性、乳酸やグルコース濃度を計測した。あわせて、画像計測により蠕動の評価を行った。また、組織的な観察も行った。 【結果】両群とも、体温で希釈した自己血を用いた常温機械灌流では蠕動運動が観察されたが、単純冷却保存群では蠕動運動が観察されない部位があった。一方、機械灌流群では、すべての部位で蠕動運動が認められた。常温機械灌流時の最終血流量やブドウ糖消費量に両群間で差異を認めた。 【結語】ブタ小腸の機械灌流の有用性、および機械灌流時の小腸の評価方法の基本的な特徴を検討した。今後、医理工の横断型連携によって、(1)小腸保存における酸素化の検討、(2)工学的数値流体モデルによる小腸の動きの解析、(3)移植を模擬した体温血液灌流による評価を行い、臨床への展開を目指した技術の確立につなげていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の結果において、単純冷却保存群では蠕動運動が観察されない部位があった。一方、機械灌流群では、すべての部位で蠕動運動が認められた。常温機械灌流時の最終血流量やブドウ糖消費量に両群間で差異を認めた。 また腸管の機能評価として、小腸の蠕動運動を定量評価する方法として腸電計測および、腸管蠕動の局所運動の定量化、空間的な相関、時間的な相関による連成運動評価により、単純冷却保存群と機械灌流保存群間での蠕動運動の差異を評価できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
ブタを用いた小腸摘出と保存、そして虚血再灌流実験の評価方法は上記のように確立しつつある。続いて、虚血障害状態を流動力学(圧、流量、血管抵抗の変化)のほか小腸粘膜、リンパ組織などの形態学(光顕、免疫染色ERG, CD42)、RT-PCRを用いた分子生物学(mRNA,IL-1,IL-6,TNF,IFN)などの面から評価する。酸素供給、温度条件なども検討する。また、保存状況の評価として、体温条件(37℃)での血液灌流によって、移植を模擬し、保存時同様に各種酵素、ならびに分子生物学評価、病理評価などをおこない適切な灌流条件を探索する。これらによって最適なブタ小腸灌流条件を検討していく。加えて、酸化ストレスマーカーMDA、アポトーシス組織内サイトカイン、組織(光顕・電顕)、組織ATPなどを精査する。さらにICGを保存中に注入し蛍光カメラにて血流動態を観察する。保存温度、灌流流量・圧力の条件比較を行う。これらによって、移植模擬実験による虚血再灌流障害の抑制と免疫担当細胞の解析を行っていきたいと考えている。
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