研究課題/領域番号 |
23K17222
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
TON・THAT LOI 東北大学, 工学研究科, 助教 (90844499)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ダンベル状Au-Fe3O4ナノ粒子 / 磁気プラズモニックナノ粒子 / ドデカカルボニル三鉄 / 強磁性共鳴に基づく発熱 / ナノセラノスティクス / がん治療 / がん診断 / 金-酸化鉄複合ナノ粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、新材料として注目されている磁性ナノ粒子の研究成果をもとに、それをがん部位に集積させ、体外から高周波磁場を印加することで、磁性ナノ粒子を発熱させて、がんを局所的に加熱させる非侵襲的ながん磁気温熱療法の研究が国内外でスタートしている。応募者はこれまでにがん磁気温熱治療法の実用化を目指し、磁性ナノ粒子合成並びにその物性を利用した磁性ナノ粒子の非侵襲的な位置探索・温度検知・定温加熱技術、治療装置試作等を研究開発してきた。本申請では試作した治療装置の性能をより高めると共に、CT診断(またはCT-MRI組合せ)とがん診断・治療技術を可能とするナノセラノスティクス剤を新たに研究開発する。
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研究実績の概要 |
2023年度には、がんの診断と治療技術を向上させるためのナノセラノスティクス剤の研究開発が行われた。異なるサイズのFe3O4粒子は、まず熱分解法によって合成され、その後、金酢酸塩を還元して金を表面に堆積させた。Fe3O4粒子のサイズが大きくなるにつれて、飽和磁化と加熱効率(SAR)が増加することが確認された。特に、Fe3O4粒子のサイズが約13nmの場合、磁化は74.7 emu/gに達し、最大のSARは136.7 W/gに達した。さらに、これらのFe3O4@Auナノ粒子はCT造影剤として高いコントラストを示した。また、強磁性共鳴(FMR)効果に基づくFe3O4コア@Auシェルのナノ粒子の超高速温度上昇率も実験的に検討され、その共振周波数は数GHzであり、Kittelの式に非常によくフィットした。初期温度上昇率は、FMR条件下で最大値に達し、従来の磁気ハイパーサーミアのNeel-Brownian緩和と比べて桁違いに高いことが示された。 当初の計画に加えて、生物学的に安全なダンベル状Au/Fe3O4ナノ粒子合成法が提案された。有毒なペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)の代わりにドデカカルボニル三鉄(Fe3(CO)12)を前駆体とする安全な合成法を導入した。金(III)塩酸の三水和物をテトラブチルアンモニウムブロミドを用いて還元し、得られた金ナノ粒子をFe3(CO)12と結合させることで、ダンベル状のAu/Fe3O4ナノ粒子を合成することができた。これらのダンベル状のナノ粒子は、従来のAu被覆Fe3O4ナノ粒子よりも優れた加熱効率を示した。強磁性共鳴(FMR)下では、ダンベル状のナノ粒子は、HDC= 400 Oeの条件下で23.4°Cの最大温度上昇と1.73°C/sの加熱率を達成し、純粋なFe3O4ナノ粒子およびAu被覆Fe3O4ナノ粒子の加熱率を大幅に上回った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、予想以上のFe3O4@Auナノ粒子の高い加熱効率が実現された。特に、Fe3O4粒子のサイズが13nmの場合、磁化が74.7 emu/gに達し、最大の加熱効率は136.7 W/gに達した。この成果は、当初の計画を大きく超えるものだった。 次に、生物学的に安全な合成法の提案と成功が挙げられる。この提案は当初の計画に含まれていなかったが、有毒なペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)の代わりにドデカカルボニル三鉄(Fe3(CO)12)を使用する方法が採用され、高い製造収率が達成された。これにより、製造プロセスの安全性と効率性が向上した。 最後に、これらのダンベル状ナノ粒子は、従来の粒子よりもさらに優れた加熱効率を示し、特に強磁性共鳴(FMR)下で顕著な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度において、ヘテロダイマーナノ粒子を含む全体の製造収率が71%であり、ヘテロダイマーナノ粒子を含まないFe3O4ナノ粒子が29%を占めることから、製造収率がナノ粒子の特性と性能に与える影響について懸念がある。さらに、これらのナノ粒子のUV-VISスペクトルには明確なピークがないため、光学ベースの応用の探索に制限があるという課題も抱えている。2024年度の目標は、これらの制限を克服し、ナノ粒子の先進的な生物医学的応用を広げることである。AuシードとFe3(CO)12のモル比や沸騰時間を実験的にヘテロダイマーナノ粒子のサイズを最適化することで、顕著な磁気光学特性を実現することを目指している。また、この計画以上に進展であれば、CTやデュアルMRI/CTイメージングなどの画像技術と、磁気ハイパーサーミアなどの治療能力を統合した先進的な診断および治療プラットフォームを開発する。
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