研究課題/領域番号 |
23K17227
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
盛田 健人 三重大学, 工学研究科, 准教授 (40844626)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 深層学習 / 異常検知 / コンピュータ支援診断 / 顎骨骨髄炎 / 発症予測 / 医用画像 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線性顎骨骨髄炎は,頭頚部がんの放射線治療により発症する難治性の疾患である.発症の原因は未だ解明されておらず,発症率が低いためにRadiomics解析やAIを用いた研究も進んでいない.そこで,本提案では放射線治療前のCT画像・線量分布図から顎骨骨髄炎発症リスクを推定する手法を構築する.実験においては,頭頸部に対する放射線治療を行った患者を対象とし,顎骨骨髄炎未発症群のデータのみを用いて学習できる異常検知により,発症・未発症群間のデータ数の不均衡への対策を行う.また異常検知モデルの応用により,治療計画段階での顎骨骨髄炎発症有無の推定に加え,治療に伴う発症リスク値の算出,発症部位の推定も目指す.
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,頭頸部がん患者の頭部CT画像と放射線治療計画で作成した線量分布図を用いた異常検知により,放射線治療前に顎骨骨髄炎の発症リスクを予測することである.さらに,発症リスクの高い患者については,より発症リスクの少ない代替の治療法の検討やリスクを低減できる放射線治療計画の再立案することで顎骨骨髄炎の発症を予防することを目的としている.2023年度には,異常検知による顎骨骨髄炎発症有無の推定を主に行う予定であった.この計画に対し,AnoGANを用いた異常検知により,頭頸部CT画像と放射線照射量図のペアから顎骨骨髄炎の発症有無の推定を行い,AnoGANの学習に使用した顎骨骨髄炎非発症例との距離から発症リスクを数値化できることを確認した.また,AnoGANで抽出した画像特徴量と患者背景情報を用いた統計的機械学習による発症有無の推定についても検討した.これらの結果を国際会議1件で発表し,2024年度の国内学会での発表を投稿済みである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度における本研究の実施項目として挙げている「異常検知による顎骨骨髄炎発症有無の推定」,「顎骨骨髄炎発症リスク推定」の2項目について,進捗状況をそれぞれ述べる. 【異常検知による顎骨骨髄炎発症有無の推定】放射線性顎骨骨髄炎(Osteoradionecrosis of the jaw, ORNJ)非発症患者369名の頭頸部CT画像と放射線照射量図(RT画像)を用いてAnoGANを学習し,非発症患者59名と発症患者58名のデータを用いて学習モデルの検証を行った.その結果,ROC-AUCが0.72となり,CT画像のみを用いて学習したAnoGANによるROC-AUC 0.53を大幅に上回ったことからRT画像が予後予測へ大きく寄与することが確認できた.また,F値ではCT・RT画像を併用した場合で0.64,CT画像のみを用いた場合では0.68と大きな差は見られなかったが,ResNet50では0.51となり,より多くのデータで学習を行える異常検知が有用であることが確認できた. 【顎骨骨髄炎発症リスク推定】前述のAnoGANの学習により,検証データ群内でのORNJ発症・非発症群間の分布に差が見られたため,評価データと各群間でのユークリッド距離などからリスクを数値化できることが確認できた.しかし群間の距離が近く,算出したリスク値は臨床利用には不十分であった.そのため,AnoGANにより抽出した異常度と,患者背景情報(年齢,抜歯の有無,喫煙の有無など)を用いた統計的機械学習によりORNJ発症群・非発症群間の識別境界を明確にできるよう実験を進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
【異常検知による顎骨骨髄炎発症有無の推定】AnoGANによる推定ではROC-AUC0.72,F値0.64程度であるため,異なる異常検知手法により精度の改善を目指す.また,後述の顎骨骨髄炎発症リスク推定も勘案し,異常検知と対照学習などを組み合わせてORNJ発症群・非発症群間の距離を大きくすることができる手法を考案する. 【顎骨骨髄炎発症リスク推定】CT・RT画像のみを用いたORNJ発症有無の推定では臨床利用に十分な精度が得られなかったため,患者背景情報も併用した推定手法を取ることとした.現状では,一般的な2クラス分類を行う機械学習モデルによりORNJ発症有無の推定を行っているため,リスク評価モデルの学習にORNJ発症,非発症患者をそれぞれ58,59名分しか用いることができず算出したリスク値の信頼性が低いと考えている.2024年度には患者背景を考慮したAnoGANの学習や,One Class SVMによる異常検知によりリスク値の精度と信頼性の向上方法について検討する. 【骨髄炎発症範囲の推定】AnoGANのDiscriminatorには一般的なCNNが使用されているため,CAM(Class Activation Mapping)により異常(ORNJ)部位が可視化できるかを確認する.また,その結果を勘案し,最終年度の研究実施内容の詳細を決定する.
|