研究課題/領域番号 |
23K17275
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 英一 名古屋大学, 博物館, 教授 (30324403)
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研究分担者 |
門脇 誠二 名古屋大学, 博物館, 教授 (00571233)
南 雅代 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (90324392)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2029-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
24,960千円 (直接経費: 19,200千円、間接経費: 5,760千円)
2028年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2027年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2026年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 遺跡恒久的保存 / コンクリーション化 / 保存技術開発 / 文化遺産修復 / コンクリーション / シーリング |
研究開始時の研究の概要 |
名古屋大学博物館では,これまで国内外の研究機関と共同で国内史跡の石材調査,軍艦島などの古いコンクリート分析の他,海外(ヨルダンなど)での古代遺跡の発掘調査を行なってきている.これらのこれまでの調査から,石材や古いコンクリートの劣化は酸性雨などによる炭酸カルシウムの溶出が主たる原因であり,また海外の石材や煉瓦は炭酸カルシウムが豊富に含まれているものが多く,乾燥地域でも長期間におけるこれらの溶出が劣化・崩壊の主な原因であることが分かってきた.本音件研究では,コンクリーション化剤によってこれらの影響を上記研究計画によって固定化させ劣化を抑制する手法を開発する.
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研究実績の概要 |
国内外に存在する文化遺産の多くは,古くは石積み建築材や煉瓦等による城壁・住居等のほか,近年では軍艦島のようにコンクリートを建築素材としている.しかし,(雨)水や湿気との風化反応に伴うこれらの劣化・亀裂形成,そして崩落を完全に防ぐことはできない.とくに日本のように湿潤で温暖な気候下では,昨今の温暖化に伴う雨量や寒暖差の増加も加え,その影響は増加の一途を辿っている.このような環境条件下において,これらの文化財石材・素材等にダメージを与えることなく,できるだけ長期に劣化や崩壊を防ぐことができるような劣化抑制・修復の技術開発は喫緊の課題である. 本研究は,球状コンクリーションの炭酸カルシウム化メカニズムを応用し,世界で初めて開発した“構造物や岩盤中の亀裂シーリング剤(コンクリーション化剤)”を活用し,コンクリートや石材,煉瓦等で構成されている国内外の世界遺産等文化財の恒久的な劣化抑制・修復新技術開発を目的とするとして,室内での実験研究のほか,現場での実証試験を行っていくものである. 初年度は,調査対象とする遺跡として長崎県鷹島の海域から出土する元寇遺物を選出し,奈良文化財研究所と共同で,研究資料の選出・現地鷹島教育委員会との意見交換などを行った. 次年度では、これら元寇遺物の中でも、金属器を覆う炭酸塩コンクリ―ションの形成プロセスを明らかにするために、コンクリ―ションの年代測定や化学組成測定、元素マッピング、鉱物同定、顕微鏡観察などを行う。必要経費として、放射性炭素年代測定利用料、遺跡・遺物見学のための旅費(元寇の遺物が保管されている松浦市立埋蔵文化センター訪問)、および名古屋大学での研究打ち合わせのための旅費を計上した。それ以外の分析は、名古屋大学博物館に設置されている機器(XGT, SEM, XRD)での分析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外に存在する文化遺産の多くは,古くは石積み建築材や煉瓦等による城壁・住居等のほか,近年では軍艦島のようにコンクリートを建築素材としている.しかし,(雨)水や湿気との風化反応に伴うこれらの劣化・亀裂形成,そして崩落を完全に防ぐことはできない.とくに日本のように湿潤で温暖な気候下では,昨今の温暖化に伴う雨量や寒暖差の増加も加え,その影響は増加の一途を辿っている.このような環境条件下において,これらの文化財石材・素材等にダメージを与えることなく,できるだけ長期に劣化や崩壊を防ぐことができるような劣化抑制・修復の技術開発は喫緊の課題である. 本研究は,球状コンクリーションの炭酸カルシウム化メカニズムを応用し,世界で初めて開発した“構造物や岩盤中の亀裂シーリング剤(コンクリーション化剤)”を活用し,コンクリートや石材,煉瓦等で構成されている国内外の世界遺産等文化財の恒久的な劣化抑制・修復新技術開発を目的とするとして,室内での実験研究のほか,現場での実証試験を行っていくものである. この目的、実施方針のもと、初年度においては、研究対象とする遺物の選出、またその研究を展開するにあたっての奈良文化剤研究所などの共同研究者との連携、そして研究体制作りのほか、室内試験の準備と予察的な遺物資料の分析などが主たる実施内容であるが、ほぼその内容を実施・展開するに至っており、上記達成判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究としては、鎌倉時代の元寇の際に海底に沈んだ金属器を覆う炭酸塩コンクリ―ションの形成過程を解明するための分析を行う。元寇は日本史でも有名な蒙古襲来の出来事で、1274年(文永の役)と1281年(弘安の役)という2回の年代が歴史記録から分かっている。元の船団が沈んだ鷹島神崎遺跡(たかしまこうざきいせき)(長崎県)は、水中の国史跡として日本初の指定を受けたことで有名である。本遺跡の海底に沈んだ様々な遺物のうち、金属器の表面が炭酸塩コンクリーションで覆われていることがこれまで知られている。そのCT撮像によると、コンクリ―ションで覆われた内部は金属が腐食し、金属器の形のみが「鋳型」のように残されていることが分かっているが、その形成過程については不明である。 次年度では、金属器を覆う炭酸塩コンクリ―ションの形成プロセスを明らかにするために、コンクリ―ションの年代測定や化学組成測定、元素マッピング、鉱物同定、顕微鏡観察などを行う。必要経費として、放射性炭素年代測定利用料、遺跡・遺物見学のための旅費(元寇の遺物が保管されている松浦市立埋蔵文化センター訪問)、および名古屋大学での研究打ち合わせのための旅費を計上した。それ以外の分析は、名古屋大学博物館に設置されている機器(XGT, SEM, XRD)での分析を実施する。
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