研究課題/領域番号 |
23K17276
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
中村 誠一 公立小松大学, サステイナブルシステム科学研究科, 特別招聘教授 (10261249)
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研究分担者 |
森島 邦博 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (30377915)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2025年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
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キーワード | ミューオン透視法 / コパンのマヤ遺跡 / マヤ文明 / 非破壊的調査法 / 重層的石造構造物 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ミューオン透視によりピラミッド内部に未知の空間を同定することに成功したエジプトにおける革新的手法を、エジプトとはまったく異なった環境・条件にありピラミッド状建造物の石材も内部構造も異なった中米のマヤ文明の遺跡に適用する。対象は、マヤ文明を代表する世界遺産であるホンジュラスのコパン遺跡とグアテマラのティカル遺跡である。正確な3Dモデルを作成し、ミューオン検出精度を改良しつつ、重層的な石造構築物でのミューオン透視を行う。確認された空間を3Dモデルの中に位置づけると同時に発掘調査を実施して、検証⇔改良のフィードバックシステムを構築し、持続可能な非破壊的考古学調査法を開拓することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ミューオン透視によりピラミッド内部に未知の空間を同定することに成功したエジプトにおける革新的手法を、エジプトとはまったく異なった環境・条件にありピラミッド状建造物の石材も内部構造も異なった中米のマヤ文明の遺跡に適用する手法の開拓を目的としている。その対象は、マヤ文明を代表する世界遺産であるホンジュラスのコパン遺跡とグアテマラのティカル遺跡である。正確な3Dモデルを作成し、ミューオン検出精度を改良しつつ、重層的な石造構築物でのミューオン透視を行う。確認された空間を3Dモデルの中に位置づけると同時に発掘調査を実施して、検証⇔改良のフィードバックシステムを構築し、持続可能な非破壊的考古学調査法を開拓することを目指している。
研究代表者は、今年度、その第一段階として、所有するLiDAR SLAM機材を使って、コパンのマヤ遺跡中心部のデジタル三次元計測と3Dモデルの構築を行った。研究分担者による透視成果(解析結果)をその中に位置づけるためである。
原子核乾板は、常に放射線の飛跡を記録するため、宇宙線イメージングに有用なミューオン以外の自然放射線(電子等)の蓄積がノイズとなり、計測時間に大きな制約をもたらす。特に、火山性の石材は比較的高い放射線量を有するため、コパン遺跡のような凝灰岩質の石材で築かれた遺跡で原子核乾板を用いた計測を行う場合、20日程度で計測を終える必要があることがこれまでの測定で明らかとなった。そこで、コパン遺跡の調査では、検出器の周囲に放射線を遮蔽する構造を設置することで、計測時間の長期化を狙う。研究分担者は、今年度、そのための準備として、放射線遮蔽構造の検討を実施した。具体的には、水や鉄などを用いた遮蔽体の厚さと遮蔽効果について検討し、小規模のスケールで実験を行い、遮蔽体系の決定に有用なデータを得た。また、コパン遺跡の調査で用いる原子核乾板の設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の計画では、2024年の3月頃に、研究代表者と研究分担者がコパンのマヤ遺跡で合同現地調査を実施し、対象建造物に原子核乾板(ミューオン検出器)の設置を行う予定であったが、環境放射線の影響評価実験や遮断構造の検討に予想外の時間がかかり、合同現地調査が出来なかった。対象建造物の三次元計測や考古学的発掘調査は、予定通りに実施され、原子核乾板の設置のためのピット発掘も開始されたが、ミューオン検出器設置時期の見通しが立たなかったため、途中で発掘調査を中断せざるを得なかった。これは、調査遺跡が世界遺産であり、対象建造物は、世界中の観光客が遺跡観光を行う主要な観光ルートに位置しているため、すぐに原子核乾板の設置をしないピットを開けておくことは禁止されているためである。
上記の理由により、総合的な判断によって「進捗状況はやや遅れている」としているが、2024年度に集中調査を実施し遅れを取り戻す計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第二段階として、宇宙線ミューオンラジオグラフィの観測と解析が必要である。まず、三次元点群データにより構築されたモデルをもとにして、コパン遺跡の神殿ピラミッド内部の未知構造探査のための検出器設置位置をシミュレーションにより決定する。また、宇宙線イメージングのための原子核乾板の製造、検出器の構成および放射線遮蔽体系の決定を行い、宇宙線イメージングを実施する。
名古屋大学が開発した「原子核乾板」は特殊な写真フィルムで、ミューオンなどの電荷をもつ素粒子の軌跡を1μm以下の精度で立体的に記録できる。薄く軽量で電源を必要としないため、コパン遺跡アクロポリスの内部に掘られたままになっている狭い調査用トンネル網の中への持ち込みや設置が可能である。研究分担者は、コパン遺跡やティカル遺跡の調査用トンネル網の中やこれまで未調査である神殿群に焦点をあてて、宇宙線ミューオンの飛跡を記録する原子核乾板を設置してミューオンを検出し透視観測する。回収後、フィルムは日本に持って帰り、名古屋大学で現像・解析を行う計画である。可能な場合、将来的な研究の発展も見据えて、現地コパンの研究センター内に現像できないか検討する。
さらに本研究の第三段階としては、透視成果の考古学的検証と検出技術の向上を目指す。ミューオン透視により未知の空間が観測された場合、研究代表者は3Dモデルを使ってその位置を同定し、そこへ最短距離で到達できる発掘調査法を企画し透視成果の考古学的検証を行う。一方、研究分担者は検出器の放射線耐性の改良など検出技術の向上に取り組む計画である。
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