研究課題/領域番号 |
23K17298
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分11:代数学、幾何学およびその関連分野
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
阿部 拓郎 立教大学, 理学部, 教授 (50435971)
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研究分担者 |
沼田 泰英 北海道大学, 理学研究院, 教授 (00455685)
村井 聡 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (90570804)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2029-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2028年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2027年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 超平面配置 / 二重点 / Sylvester-Gallaiの定理 / 多重コクセター配置 / compatibility / 特性準多項式 / Shi配置 / 擬幾何学不変量 / 対数的ベクトル場 / ログ凸性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究計画では、まず古典的な問題であるSylvester-Gallaiの定理を複素数上で代数的に定式化すること、及び複素高次元配置の場合への一般化を目指す。更に挑戦的な目標として、幾何学が存在しない数学的対象に対して幾何学不変量を定義し、その性質を調べ上げるという「擬幾何学的不変量」理論を推進する。本アプローチは、純組み合わせ論的対象であるマトロイドに対してホッジ理論を展開することで多くの予想を解決した2022年度フィールズ賞受賞者であるJune Huh氏らのアプローチに触発された挑戦的なアプローチである。具体的には、マトロイドの対数的ベクトル場を定式化し理論を展開することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は超平面配置の二重点の研究を代数・組み合わせ論的な観点から行った。以下二つの研究成果について述べる。 一つ目は研究分担者である沼田泰英氏らが行った研究である。B_2型のコクセター配置に重複度を載せた場合、その対数的ベクトル場は自由加群となることがわかっていたが、指数についてはいまだ謎のままであった。B_2型配置は四重点配置であり、二重点をもたない配置を考察する場合三重点の次によく出てくる事象である。よってその場合の代数構造の考察は極めて重要であった。この問題に対して、沼田氏らは、B_2型多重配置の重複度がある種の対称条件を満たす場合、指数のみならずその基底の具体的な形まで決定することに成功した。二次元多重配置の指数決定は一般に極めて困難であり、ましてやその基底の具体的な構成はほとんどなされていないことを鑑みれば、これは極めて重要な進展である。 二つ目は研究代表者とハノーファー大学のTan Nhat Tran氏との国際共同研究であり、compatibleと呼ばれる組み合わせ幾何的条件の簡易化及びそれとShi配置の代数構造が関係しているという不思議な結果である。compatibleという条件はTan氏らによってワイル配置の部分配置に対して導入されており、この条件を満たす場合その配置の特性準多項式という数え上げ不変量がエルハート理論を用いて計算できることが知られていた。ただしこの条件は極めて複雑でチェックすることが困難でもあった。これに対して研究代表者とTan氏は、この条件がcodimension twoで満たされていることで、globalに成立することを示し、確認を平易なものとした。さらにこの条件を満たす配置が自由であることと、それをShi配置に付け加えたものの自由性が同値となることも示した。これは数え上げ幾何と代数をつなぐ重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度がスタートの年であったが、研究実績に記載した通り二つの重要な結果を示すことができた。特に分担者によるB_2型多重配置の指数と基底の決定は研究代表者が20年近く前に予想しながら誰も解けなかった問題であり、大きな進展といえる。二重点を持たない配置の解析が本研究の最初の重要な目標であるが、そのためには三重点以上の重複度を持つ点の解析が重要である。三重点は歴史的な経緯からすでにほぼすべてが分かっている中で、四重点は逆にまだほとんど謎に包まれていた。よってこの点に大きな前進が見られたことは、本研究を進めるうえで大きな朗報であるといえる。このような点を鑑みて、本研究は予定通りのスタートを切ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究二年目の2024年度は、二重点を持たない配置の特徴づけに本格的に着手する。現在考えているアプローチは、自由配置の間にある配置の構造の考察である。近年、二次元射影直線自由配置から三本直線を除去したものが自由である場合、その間には自由経路が存在することが分かっており、この場合研究代表者の2022年の結果から、この自由経路上の配置には必ず二重点が存在することが分かっている。よってまずこの経路の外にある配置が自由でない場合に二重点があるかを確認し、かつこれを一歩一歩広げてゆくことを考える。自由配置に一本付け加えた配置は必ず二重点を持つため、自由でない場合に考察を行い、これを帰納的に行うことができれば、自由でないすべての配置を、自由配置の間にある配置ととらえることで、二重点の存在を明らかにすることができる。この待遇対偶をとることで、二重点を持たないいわゆるSylvester-Gallai配置は自由であることを証明したい。 次にB_2型の多重配置の研究すなわち四重点周りの代数的状況に関する研究を深化させる。かなりの場合について基底が判明したが、まだすべての場合に対しては決定されていない。そこでこの研究を沼田氏らと推し進め、すべての場合の基底決定を可能なら実現したい。ただし一般に基底の構成はよほど特殊でないと不可能なので、基底の次数すなわち指数の決定を様々な方法から考察する。さらにこの研究の成功をもとに、さらなる多重点の解析も行う。つまり五重点六重点に対応する多重配置の基底構成あるいは指数決定を行う。このうち六重点はワイル群でいうところのG_2型に対応しており、由緒正しいものでありながら、指数の研究がその困難さから全くなされていない。そこでこの配置に先鞭をつけ、研究を推進してゆく。
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