研究課題/領域番号 |
23K17321
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分20:機械力学、ロボティクスおよびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
辻 敏夫 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (90179995)
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研究分担者 |
島谷 康司 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00433384)
秋山 倫之 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (10379737)
古居 彬 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (30868237)
土居 裕和 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (40437827)
竹内 章人 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部), 成育医療推進室, 新生児科医師 (40731386)
曽 智 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (80724351)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2026年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 乳児自発運動 / 基底運動 / 発達障害 / 深層学習 / 運動評価 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,乳児自発運動を構成する根本的な運動因子,いわば『基底運動』を発見し,乳児の運動発達を包括的に評価可能な新手法の創出を目的とする.まず,ビデオカメラとマットレス内蔵の音響センサを用い,乳児の自発運動を非拘束/非接触に計測可能な新しいマルチセンシング手法を確立する.次に,独自の深層潜在空間モデルと統計的因子分解に基づき,乳児の基底運動を特定する機械学習法を開発する.そして,基底運動の経時変化と発達障害との関係を明らかにするとともに,基底運動評価インデックスを提案し,超早期での発達障害の診断支援が可能なシステムの実現を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,自発運動を構成する根本的な運動因子,いわば「基底運動」の発見と抽出を目指す.具体的には,(A) 乳児自発運動を非拘束/非接触計測可能なマルチセンシング法の確立,(B) 乳児基底運動の解析手法の開発,(C) 発達に応じた基底運動の経時評価と発達障害との関係の解明,(D) 発達評価システムと臨床データベースの構築 といった研究項目から構成される.2023年度は,主に(B), (C)の研究項目を中心に取り組んだ. (A) 天井に取り付けたビデオカメラを用いて計測した,新生児/乳児の運動に関する動画像データセットを整備した.今後,視線トラッキングや体表脈波計測などを組み合わせたマルチセンシング環境に展開する予定である. (B) 周波数に着目した運動解析法の開発に取り組んだ.動画像から乳児の運動の重心を計算し,重心の短時間フーリエ変換に対して非負値行列因子分解(NMF)を適用することで,運動を周波数の観点で複数の基底成分に分解する手法を提案した.NMFにより計算した基底特徴および時系列特徴を機械学習に入力することで,既存の運動解析手法よりも高い精度でASDリスクの予測が可能であることを示した(国際学術雑誌への投稿準備中). (C) 新生児の運動と,18ヶ月時のASDリスクとの間の関係性解析に取り組んだ.新生児の多くは睡眠と覚醒の間を移ろいながら運動を行うため,覚醒状態に応じて新生児をグルーピングし,そのグループごとにASDリスクを予測するための統計モデルを構成することで,高い精度でASDハイリスク児とASDローリスク児を分類可能な方法を提案した.解析の結果,生後数日の運動から生後18ヶ月時のASDリスクを評価できる可能性を示した(H. Doi et al., Scientific Reports).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,(A) マルチセンシング法の確立を優先的に進める予定であったが,計測装置の確保等に時間を要したため,2023年度は既存の動画像データセットを利用した (B) 乳児基底運動の解析手法の開発と (C) 発達障害との関係解析を中心に研究を推進した.(B) については重心抽出と非負値行列因子分解に基づく新たな運動解析法のプロトタイプを提案し,その成果を国際学術雑誌投稿用の論文としてまとめている最中である.また,(C) については生後数日の運動を計測した動画像から将来の発達障害リスクを評価できる可能性を示した.以上より,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,運動解析手法の構築と発達障害との関係解析に取り組んでいく予定である.特に,現状は乳幼児の動画像から重心情報のみを抽出し入力データとして利用しているが,今後は姿勢推定により得られた関節座標の時系列変化なども入力に加えることで,より多面的に運動の基底成分を評価可能な手法に展開していく. また,実環境で運用可能な発達障害スクリーニング技術へと繋げるためには,スマートフォン搭載のRGBカメラ等で撮影した動画像を用いて運動評価ができれば有用である.そこで,スマートフォンで乳幼児の運動を計測したデータセットを整備するとともに,動画像中に含まれる撮影時の手ブレの影響や,乳幼児の相対的な位置変化に対してロバストな運動解析アルゴリズムの開発に取り組む予定である.
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