研究課題/領域番号 |
23K17322
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末光 哲也 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任教授 (90447186)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)
2025年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2024年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 半導体 / テラヘルツ / 進行波増幅 |
研究開始時の研究の概要 |
進行波管の固体化は1960年代に試みられたが失敗した。その理由は、マイクロ波帯では進行波管の動作原理である入力波とエネルギ源である電子ビームとの間での相互作用が半導体中では電子散乱によって乱されることにあった。しかし、実質散乱のない波長域(進行波の周波数>1/散乱されるまでの時間)を考えると、固体中を散乱のない真空と同様に見なすことができ、この問題を回避できる。この波長域は、半導体中では、周波数で言えばテラヘルツ帯に対応する。本研究は今までに誰も実現したことのない“固体中での進行波増幅”の可能性を検証する研究であり、極めて挑戦的な研究であると言える。
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研究実績の概要 |
進行波管の固体化は、マイクロ波帯域では不可能であったが、テラヘルツ帯域になるとその可能性が見えてくる。なぜなら、進行波の周期が十分に短くなることによって一周期の間に走行する電子が一度も散乱を受けることなく通過する確率が高くなるため固体中であっても真空と同様に扱うことが可能になると予測されるためである。その結果として表れる固体中での進行波増幅現象を実験的に確認するため、まず素子設計に必要となる各種材料パラメータの収集を行った。また、素子作製に必要となるプロセス装置の準備を行った。 材料パラメータの収集では、対象とする窒化物半導体の各種物性定数を文献やTCADドキュメントより収集した。特に、窒化物半導体では従来のIV族やIII-V化合物半導体にはない分極効果が見られるため、分極効果がショットキー障壁高さなど他の物性定数に影響を与えることをこれまでに指摘しており、その他の物性定数についても影響の有無を継続して調査する予定である。 素子作製に使用する装置の準備として、有機金属気相成長装置(MOVPE装置)、マスク露光装置、レジスト塗布装置、現像用ドラフトチャンバー、誘導結合型反応性イオンエッチング装置、オーミック電極形成用高速アニール装置等を実験室に確保し、用力や吸排気装置、原料ガス供給設備、除害設備等と接続して運転可能な状態とした。一部装置では実際に運転して動作確認まで達成した。その他の装置についても順次確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒化物半導体により進行波管の固体化を実現する目的を達成するため、素子設計に必要となる材料パラメータを収集し、素子設計の準備を整えることができた。今後、最適な材料の選定と素子構造の具体化を進める。また、素子作製に必要となる装置類を集めた実験室を立上げ、大がかりな電源、冷却水、排気ダクト等の工事を終えて個々の装置の稼働が可能となった。今後、更にいくつかの装置を移設し、素子作製工程を完結できるように仕上げていく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従って固体進行波管実現に向けて素子設計・試作を行う。素子設計では、TM波からTE波への変換器、および、導波路について個別に検討し、それらを組み合わせてテラヘルツ発振器を構成する。導波路はGaN/AlGaNヘテロ構造を基本と考えるが、電子速度の点で有利であるInNやInGaNの可能性も検討する。
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