研究課題/領域番号 |
23K17334
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
三輪 空司 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30313414)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
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キーワード | ドップラレーダ / パルス加振 / 黒錆評価 / イメージング / X線CT / 振動過渡応答 |
研究開始時の研究の概要 |
RC構造物の劣化は最終的に鉄筋が腐食することで加速度的に進行していく。しかし、高速、かつ高分解能な非破壊定量腐食評価手法はいまだ開発されていない。乾湿繰り返し環境の多い国内構造物での鉄筋腐食様態は主に黒錆といわれているが、本研究では黒錆が磁性を有したコロイド状であり、鉄筋よりも磁気刺激に対する可動性が高いことに着目し、高速繰り返し電磁パルス源によりRC構造物中の腐食鉄筋をパルス状に加振しながら、ドップラレーダにより鉄筋からコンクリートに浸透した黒錆の過渡振動応答を連続的にスキャン計測することで、スペクトロスコピックな振動イメージングから、黒錆の空間的な密度分布を評価する技術を開発する。
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研究実績の概要 |
乾湿繰り返し環境の多い国内RC構造物の劣化要因の大半は鉄筋腐食であり、その主な腐食様態は黒錆の発生である。しかし、その非破壊評価には数十年にわたり自然電位、磁気応答、比熱、電波反射率といった鉄筋腐食の間接的な評価手法のみが議論され、高速、かつ高分解能な定量腐食評価手法はいまだ開発されていない。本研究では黒錆が磁性を有したコロイド状であり、鉄筋よりも磁気刺激に対する可動性が高いことに着目し、高速繰り返し電磁パルス源によりRC構造物中の腐食鉄筋をパルス加振しながら、ドップラレーダにより黒錆の過渡振動応答を連続的にスキャン計測するスペクトロスコピック振動イメージングなる技術を開発する。腐食生成物である黒錆の発生を直接的に検出するアイデアはこれまで皆無であり、空間分布情報と広帯域な振動スペクトル情報を併せ持つ定量イメージング手法により黒錆の量、分布等を直接的に非破壊評価する技術分野を開拓する点で、挑戦的な意義を有しており、また、レーダ、弾性波、磁気検査、材料力学等の幅広い学術分野に波及効果がある。 本研究でのキーとなるのはレーダのスキャンにより鉄筋等の過渡応答を安定に計測できる技術の確立である。従来、コンクリート面に平行な鉄筋に対して、その深さを特定し、鉄筋や黒錆の振動過渡応答の計測を行ってきたが、かぶりコンクリートの電磁波伝搬速度の不均質により、鉄筋反射波の到達時刻が場所により変動することで、振動過渡応答を正確に捉えることが困難であった。そこで、今年度は主に、イメージングをベースとした過渡応答計測に焦点を当てた研究開発を行った。さらに、腐食による局所的な振動変位増加の応答感度の向上のためのコイルの最適化や、鉄筋振動変位増加のメカニズムに黒錆が起因していることの仮説を検証するために、X線CTを導入し、円柱鉄筋モルタル供試体によりその基本的な撮影画像の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では高速なパルス繰り返しが可能な電磁パルス源を開発し、コンクリート中の鉄筋を加振することで、振動する鋼材の周波数依存性、時系列応答特性等による磁性体振動スペクトロスコピックイメージング技術を開発し、コンクリート構造物の鉄筋腐食における黒錆分布の非破壊イメージングへの適用を試みることを本研究の目的とし、以下の3つの研究課題に焦点を絞り、研究開発を行った。 1.高圧、高繰り返し周波数(PRF)の電磁パルス源の開発では60Aのピーク電流で50Hz以上のPRFを有する電源の選定が困難であり、条件設定の変更も含め再検討している。また、コイル形状の最適化においては、既往の半トロイダル上のコイルでは、磁極直下の加振力が強く、アンテナ直下を効率的に加振できていなかった。そのため、ソレノイドタイプのコイルにアンテナを埋め込んだコイルを新たに開発し、4倍程度の振動変位増加感度向上を達成した。 2.電磁パルス加振レーダスキャナによる多元スペクトルイメージングの開発では、これまで、鉄筋深さを一定とした振動変位計測を行っていたが、かぶりコンクリートの不均質により振動検出精度が不十分であった。そこで、逐次スキャンにより得られたレーダ波形列によるイメージングを行った後にドップラ解析を行うことで、任意位置でのパルス加振応答が計測可能なスキャンシステムを開発し、安定した計測が実現できることを実証した。また、鉄筋深さの変化する現場での適用も可能とした。 3.コンクリート中の黒錆イメージング手法の開発では管電圧150kVのX線CTスキャン装置を納入し、5μm程度の分解能で直径50mmの円柱状RCモルタル供試体の内部を鮮明に3Dイメージングできることがわかった。さらに、塩水サイクル腐食試験機により供試体の鉄筋腐食生成物も鮮明にイメージングできることを確認し、加振レーダによる振動変位増加との相関が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
開発項目1では、昨年度の励磁コイルの最適化により4倍程度の腐食感度向上が得られたことから、開発する高PRF電磁パルス源のピーク電流の上限を約半分の30A程度に下げることで、50Hz以上のPRFを有する電源を選定していく。もし、選定が困難であれば自作の電源を開発することも含めて検討を行っていく。コイルの最適化に関しては、コイル形状はソレノイドタイプとし、コイルの巻き数の最適化を行う必要がある。巻き数と電流の積の2乗が加振力に比例するため、ピーク電流の低下と合わせ、コイルの巻き数や、コアの磁極断面積の最適化や冷却方法の検討を行っていく。さらにはコアにアンテナを埋め込むため、最適なアンテナ設計も行っていく。 開発項目2では、従来のレーダ波形ベースでの固定位置の過渡応答計測から、逐次スキャン計測によるイメージングベースでの任意位置での過渡応答計測が可能になったことから、加振レーダを連続スキャンしながら、イメージングを行い、任意位置での振動過渡応答を抽出することで、多元振動スペクトルイメージング法の基礎的な検討を行う。初年度の検討により、イメージングベースの解析では必ずしも直交検波レーダ信号は必要ないことが実証できたため、ハードウエアを簡素化しSN比を向上させる検討も行い、屋外フィールドでの実証実験も行う。 開発項目3では導入したX線CTスキャン装置において、スキャン装置内に電磁石を配置し、予め腐食させた小型供試体を加振しながらX線等価撮影を行うことで、磁界により黒錆が振動する直接的な画像を取得することで、振動変位増加のメカニズムの解明を行う。また、本、X線CT装置はボクセルの輝度値だけでなく、CT値も再構成可能であり、腐食生成物中のFeOOH(赤錆)とFe3O4(黒錆)の2種類の管電圧でのCT値の違いから腐食生成物の弁別を行うデュアルエナジーX線CT法の検討を行う。
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