研究課題/領域番号 |
23K17338
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
乾 晴行 京都大学, 工学研究科, 教授 (30213135)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2025年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2024年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 超高温セラッミクス / 遷移金属硼化物 / 遷移金属炭化物 / 降伏強度 / 固溶強化 / 平均原子変位 / 破壊靭性 / 積層欠陥 / 超高温セラミックス / 強度 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙往還機や極超音速旅客機の開発に向け,大気圏突入時の超高温にも耐える超高温セラッミクス(UHTC)に更なる高性能を付与すべく,その主構成相たる遷移金属(TM)硼化物TMB2あるいは炭化物TMCの高強度,高靭性化を実験,理論計算の両面から探り,高性能UHTCの材料設計指針の確立を目指す.具体的は,UHTCの硬度・強度が金属材料お固溶強度と同様に平均原子変位(MSAD)により記述できるか,また,変形能・破壊靭性が転位運動の難易を支配するその移動経路のエネルギー勾配を記述子として予測し得るかを検証し,ハイエントロピー化の観点から高性能UHTCの材料設計指針の確立を目指す.
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研究実績の概要 |
宇宙往還機や極超音速旅客機の開発に向け,大気圏突入時の超高温にも耐える材料の開発が必須である.超高温セラッミクス(UHTC)はその筆頭候補材料であるが,超高温実証試験で十分な材料特性を示せず,実用に耐え得るより高性能すなわち更なる高強度,高靭性を持つUHTCの開発が待ち望まれている.UHTCの高強度,高靭性化に関する材料設計戦略は現状では皆無に等しいと言わざるを得ない.本研究の終極の目的は,経験則に頼らない新規なUHTC材料設計戦略の開拓であり,(i) 平均原子変位(MSAD:Mean-Square Atomic Displacement)を強度(硬度)の(ii)1/2<a+c>積層欠陥エネルギーおよびその経路のエネルギー勾配を破壊靭性(変形能)の記述子として,UHTCの高強度・高靭性化の材料設計戦略足りうるかを理論計算,実験の両面から検証しつつ,ハイエントロピー化の観点から高性能UHTCの材料設計指針の確立を目指す.TMCおよびTMB2(TM:遷移金属)の強度(硬度)および破壊靭性を予測する記述子としてMSADおよび積層欠陥エネルギーを考え,TMとして第3周期(Ti, V, Cr),第4周期(Zr, Nb, Mo),第5周期(Hf, Ta, W)の9元素を考慮し,等原子量の5種類のTMからなるTMCおよびTNB2に対し第一原理計算により求め,有望なMSAD値,積層欠陥エネルギー値をもつ5種類のTMからなるTMCおよびTMB2を選定し,プラズマ焼結法により作製,マイクロピラー圧縮法およびナノインデンテーション法により強度,硬度を実測し,マイクロカンチレバー法により破壊靭性を実測し,理論計算結果を実験により検証しつつ,高性能UHTCの材料設計指針の確立を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TMCおよびTMB2(TM:遷移金属)強度(硬度)および破壊靭性を予測する記述子としてMSADおよび積層欠陥エネルギーを考え,TMとして第3周期(Ti, V, Cr),第4周期(Zr, Nb, Mo),第5周期(Hf, Ta, W)の9元素を考慮し,等原子量の5種類のTMからなるTMCおよびTNB2に対し第一原理計算により求めた.TMCについては,36種類の5種類のTMからなる等原子量TMCを計算した.構成TM元素の種類および組み合わせによりMSADの値は25~110平方pmと大きく変化する.これらの結果を回帰分析すると,強度(硬度)はMSADの増大とともに増大すると考えられるが,MSADの増大にはVが最も効果的で,Mo, Zrの順に効果があること,逆にMSADの減少にはTa, Nbが最も効果的で,Hf, Tiの順に効果があることが明らかとなった.積層欠陥エネルギーについても同様に計算が進行している.MSADが大きく異なる5種類の等原子量の5種類のTMCについて通電加熱焼結法により作製を試みた.通電加熱焼結直後ではすべてのTMCが単相ではなく,高温で熱処理を行って単相化を進めている.単相となった試料につき硬度及び破壊靭性の実験測定を順次進めている.
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今後の研究の推進方策 |
上記の5種類のTMからなる等原子量TMCに関する研究を引き続き行うとともに,強度(硬度)が最大となるTMCを同定し,その派生系として4種類及び3種類のTMからなる等原子量TMCに研究を拡張し,更に高い強度(硬度)をもつTMCを探索する.また,同時平行に研究を行っているTMB2についてもMSAD, 積層欠陥エネルギーの系統的計算を行い,回帰分析により個々のTM元素の果たす役割を解明し,強度(硬度)および破壊靭性の高いTMB2系を予測し,実験により実証するととともに,4種類及び3種類のTMからなる等原子量TMB2に研究を拡張し,更に高い強度(硬度)をもつTMB2の探索を行う予定である.同時に,MSADおよび積層欠陥エネルギーに及ぼす個々のTMの役割が回帰分析により解明されるが,その物理的な原因は現在未解明であり,個々のTM元素の電子構造,原子半径,対応するTMC, TMB2の電子構造,格子定数をガイドに物理的な要因の解明を行いたい
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