研究課題/領域番号 |
23K17346
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白石 康浩 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (70343259)
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研究分担者 |
平井 隆之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (80208800)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 光触媒 / 硝酸 / 水 / 空気 / 表面欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
硝酸は化成品合成に不可欠な試薬であるため、空気中の窒素ガスから硝酸を直接合成できれば、既存技術を革新する新技術となる。本研究では、半導体の表面欠陥に生成する「エンドパーオキシド活性酸素種」の特異な窒素ガス酸化活性にもとづき、空気と水から常温・常圧下で硝酸を合成する新反応に挑戦する。活性酸素種を高効率に生成させる表面欠陥の形状の同定、欠陥形成技術の開拓にもとづく可視光応答化、ならびに表面欠陥近傍への酸化活性点の導入などの機能集積を通して課題達成に取り組む。これらの研究を通して、高難度反応を太陽光エネルギーにより駆動するクリーン物質変換を実現し、常温窒素固定の触媒化学を開拓する。
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研究実績の概要 |
表面欠陥形成を基盤とする光触媒設計により、太陽光を利用して、常温・常圧下、空気と 水から硝酸(HNO3)を合成する新物質変換プロセスを開発する。三年間の研究により、(1)表面欠陥への活性酸素種(エンドパーオキシド種)生成を軸とした新HNO3合成ルート(伝導帯ルート)の確立、および(2)表面欠陥形成技術の開拓による可視光応答化と高活性化(可視光応答型高活性触媒)に挑戦する。活性酸素種を高効率に生成させる表面欠陥の形状の同定とその形成法の基礎固め、新たな欠陥形成技術の開拓にもとづく可視光応答化、ならびに表面欠陥近傍への酸化活性点の導入、などの機能集積を通して課題達成に取り組む。 2023年度は、(1)について検討した。、アナターゼTiO2をH2気流中で加熱処理することにより水と空気からのHNO3生成が劇的に加速されることを見出した。本触媒では、表面酸素欠陥が形成されること、欠陥がO2を橋掛けしたエンドパーオキシド種を安定的に生成することを明らかにした。さらに、この種がN2を一旦還元した後、O2によって自動酸化されてHNO3が生成することを種々の分光分析により明らかにした。これらの成果により、提案していた伝導帯ルートを裏付けることができた。DFT計算により提案メカニズムの確認も並行して進めており、隣接する複数のエンドパーオキシド種がN2を還元している可能性を掴んでいる。さらに、WO3などの半導体にPtなどの貴金属粒子を担持した場合にもHNO3生成が進むこと、TiO2上にグラファイトを担持した場合には大幅にHNO3生成が促進されることを見出し、新たな触媒開発が可能である結果も得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体酸化物上に形成させた表面欠陥を活性サイトとして本反応が進行すること、欠陥上でパーオキシド種が生成すること、その種がN2を一旦還元することがN2を効率よく酸化することにつながっていることを種々の分光分析により明らかにすることができている。研究開始当初から予測していた「伝導帯ルート」が実際に反応を進めていることを確かめることができている。さらに、計算化学の併用して研究を順調に進めることができており、それゆえ区分(2)に該当すると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、欠陥導入型TiO2に関する成果を投稿論文としてまとめることが目標となる。計算化学部分を速やかにまとめ、N2資源化のためのマイルストーンとした。また、上述のように、金属/半導体系も本反応に有効であることを見出している。これはおそらく金属/半導体界面でカギとなるパーオキシド種が形成されていると考えている。種々の分光分析によりそれを解明し、この内容についても速やかにまとめたい。さらに、本触媒の改良により、可視光応答化などを図り、光触媒型HNO3合成プロセスのアップグレードを図る。
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