研究課題/領域番号 |
23K17372
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分37:生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真鍋 良幸 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00632093)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2027年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | 糖鎖 / 免疫 / 生体適合反応 / 糖鎖合成 / 細胞機能制御 / 細胞医薬 |
研究開始時の研究の概要 |
非鋳型的に生合成される糖鎖は,核酸やタンパク質と比べて構造多様性に富む.この問題に対し,本研究では,細胞表層糖鎖の直接的編集を可能とする極めて独自性の高い合成生物学的アプローチ(糖鎖合成,糖鎖ケージング,糖鎖ケミカルノックイン)を開発する.この技術革新により,細胞表層糖鎖を「複雑すぎて制御できない(Undruggable)標的」から,「化学ツールにより編集・利用できる(Druggable)標的」へと変え,これまでの学術体系を大きく変革・転換させて,糖鎖の医薬品開発への扉を開く.
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研究実績の概要 |
細胞表層にはグリコカリックス(糖衣)と呼ばれる糖の層があり,細胞の特性を決定づける.そのため,糖鎖は「細胞の顔」と呼ばれ,感染症,細胞接着,免疫応答,シグナル伝達など多くの生命現象に関与する.本研究では,この細胞表層糖鎖を化学的に編集し,その機能を制御する.具体的には,任意のタイミングでの糖鎖機能のスイッチングを可能とする“I)糖鎖ケージング”,生細胞表層へ合成糖鎖を提示する“II)糖鎖ケミカルノックイン”をカギ技術として,糖鎖を用いた細胞特性の自在改変を実現し,“III)次世代細胞治療”の開発を目指す.本研究では,細胞表層における生命現象を,それを覆う糖鎖を含めて正しく理解し,制御することを目指しており,生体膜における新たな学理の構築にもつながる. I)糖鎖ケージング:糖鎖の生物活性の時空間制御を目指し,糖鎖を“保護(ケージング)”し,望む場所・タイミングで“脱保護(アンケージング)”する手法の開発を目指した.本年度は,まず,さまざまな生物活性糖鎖を合成した.さらに,免疫誘導性糖鎖に関して,光開裂性の保護基を導入することで光りによる活性の時空間制御を達成した. II)糖鎖ケミカルノックイン:生細胞の膜タンパク質への合成糖鎖導入法を検討した.HaloTagを用いた特定のタンパク質への糖鎖導入を達成し,膜タンパク質の動態制御に成功した.さらに,代謝標識法を利用したグリコカリックスの編集,近接標識法を利用した細胞表層への糖鎖導入にも成功した. III)次世代細胞治療:細胞にケージド糖鎖をノックインし,望む場所・タイミングでアンケージングし,さまざまな生体機能制御の実現を目指す.本年度はがん細胞表層に免疫誘導性糖鎖を導入し,がん細胞を殺傷する新規がん免疫療法を検討した.さらに本手法をケージド糖鎖を用いて行うことで,誘導する免疫応答の時空間制御にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の肝は,糖鎖の合成である.糖鎖を用いたの生体機能制御には,均一構造の生物活性糖鎖を十分に供給することが必須である.一方で,糖鎖の合成は大きな困難を伴い,時間,労力もかかる.これまでに,免疫誘導性の糖鎖として,糖鎖抗原のα-gal,ラムノース,血液型抗原糖鎖を合成した.さらに,免疫抑制性の糖鎖として,シアリル糖鎖も複数合成した.特に,免疫制御に重要なSiclecと高い親和性を持つ多分枝シアリル糖鎖の合成に注力し,複数の4分枝シアリル糖鎖に成功した.他にも,細胞接着に関わるスルホシアリルルイスXの合成にも成功した.加えて,本研究では糖鎖機能の時空間制御を実現するために,糖鎖のケージングを検討した.ここでは,免疫誘導性糖鎖のラムノースに光開裂性の保護基を導入し,光によりその機能を時空間制御することに成功した. 本研究におけるカギ技術は,細胞表層に糖鎖を自在に導入する細胞表層糖鎖エンジニアリングである.そのために,HaloTagを用いた糖鎖提示システムを利用した.HaloTag発現細胞を調製し,合成糖鎖の提示に成功した.加えてこの合成糖鎖がレクチンに認識されることも確認している.加えて,ガレクチンにより認識される糖鎖をHaloTagに導入することで,ガレクチンとの相互作用を利用して膜タンパク質の動態を制御することにも成功した.現在,この動態制御が細胞特性に及ぼす変化を検証している.また,代謝標識を用い鎖細胞表層糖鎖エンジニアリングにも成功した.アジド糖の取り込みにより細胞表層糖鎖をアジド標識し,ここに抗原糖鎖を導入することで,その抗体をリクルートして免疫反応の誘導に成功した.さらに,ケージド糖鎖を利用することで,この免疫反応の時空間制御にも成功した.これに加え,近接標識法を利用した細胞表層への自在糖鎖導入法の開発にも成功した.
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今後の研究の推進方策 |
がん治療や免疫制御に焦点を当てて,次世代細胞治療を提案するための基盤技術として以下の検討を行う. I)糖鎖ケージング:種々の生物活性糖鎖を合成し,これらの糖鎖の活性を生体内で望む場所・タイミングで利用するために,ケージングする.本研究では,免疫制御,細胞接着,タンパク質分解などの活性を示す糖鎖を利用し,光や酵素反応,生体適合反応などで切断できるケージング基を導入する.この際,選択的アシル化,アセタール化,エステル化などの反応を用いて,ケージング基の導入を必要最低限にとどめ,水溶性の低下を防ぎ,かつ,シャープな活性のスイッチングを実現する. II)糖鎖ケミカルノックイン:細胞表層糖鎖の直接編集のために,生細胞上の膜タンパク質に合成糖鎖を導入する手法を開拓する.生体適合反応や代謝標識を用いて糖鎖を細胞全体に大量に導入することで,細胞の特性を改変できる.開発済みのHaloTagを用いた手法に加え,in vivo系での利用を想定し,抗体を用いた近接標識によるインタクト細胞への選択的な糖鎖導入法も開拓する.すなわち,ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)や光触媒を複合化した抗体を用い,ラジカルやニトレン,キノンメチドなどの活性種を発生させ,標識の範囲(細胞全体,複合体,タンパク質など)を制御しつつ,目的の細胞に糖鎖を導入する.
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