研究課題/領域番号 |
23K17374
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 浩二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40203533)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2027年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2026年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 10,400千円 (直接経費: 8,000千円、間接経費: 2,400千円)
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キーワード | タンパク質ピロール化 / ピロールリジン / 抗DNA抗体 / ファージディスプレイ / 自己免疫疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
加齢や疾病などに伴うタンパク質の化学修飾は避けられない生命現象である。最近発見された“リジンピロール化”により、タンパク質は抗DNA抗体や核酸染色試薬などにより認識される。タンパク質がこうしたDNA様構造特性を示す現象は、ピロール化以外には知られていない。また、抗DNA抗体との親和性から全身性エリテマトーデス (SLE)などの難病との関連性が示唆されており、健康や疾病など、生命現象における何らかの関与が示唆される。この新規性・独創性に溢れたタンパク質ピロール化研究をさらに加速させることにより、生体内におけるタンパク質の化学修飾が及ぼす新たな疾患病態の分子機序解明に繋がるものと期待される。
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研究実績の概要 |
・新規ピロール化因子の同定:リジン残基をピロール-L-リジン (pyrK) に変換するタンパク質ピロール化は、脂質過酸化反応を介して発生する非酵素的共有結合修飾と考えられてきたが、タンパク質を金属/アスコルビン酸と反応させてもpyrKの生成が見られた。さらに、金属触媒によるアスコルビン酸の酸化的分解反応により、ピロール化因子としてグリコールアルデヒド及びグリオキサールが同定された。これらの結果は、脂質過酸化と同様に還元糖の自動酸化が自己抗原性ピロール化の原因となりうることを示唆した。 ・ピロール化タンパク質を認識する多重交差性抗体の解析:自己免疫疾患の一種である全身性エリテマトーデス(SLE)では抗DNA抗体の異常産生が見られる。こうした抗DNA抗体が翻訳後修飾タンパク質であるピロール化タンパク質にも特異性を示すことを明らかにしてきたが、これまで抗DNA抗体が非核酸分子であるピロール化タンパク質を認識するメカニズムは不明であった。そこで、ファージディスプレイ法を用いてピロール化タンパク質を認識する抗体フラグメントを複数作製し、抗体重鎖可変領域(VH)が抗原認識を担うことを発見した。特に抗原と結合する領域である相補性決定領域(CDR)に存在するArg残基の重要性を示した。また、VHが認識するピロール化タンパク質中の構造として、ピロールリジンと酸性アミノ酸を複数含むペプチド配列を同定した。これらの結果から、正に帯電した抗DNA抗体のVHが、負に帯電したピロール化タンパク質と静電的に相互作用していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属触媒によるアスコルビン酸の酸化的分解反応により、ピロール化因子としてグリコールアルデヒド及びグリオキサールを同定することに成功した。また、ピロール化タンパク質を認識する多重交差性抗DNA抗体に関しては、ファージディスプレイ法を用い、ピロール化タンパク質を認識する抗体フラグメントを複数作製することに成功し、抗体重鎖可変領域(VH)が抗原認識を担うことを発見した。さらに、VHが認識するピロール化タンパク質中の構造として、ピロールリジンと酸性アミノ酸を複数含むペプチド配列を同定することに成功した (Anan et al., Commun. Biol., 2024)。
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今後の研究の推進方策 |
・新規ピロール化因子の同定:付加体の網羅的解析法であるアダクトーム法を用い、細胞内におけるピロール化タンパク質の解析を行う。 ・ピロール化タンパク質を認識する多重交差性抗体の解析:前年度までの成果として、ピロール化タンパク質に対してアフィニティを示す一本鎖可変領域抗体 (scFv)は、抗体重鎖可変領域(VH)が抗原認識を担うことを見出した。今年度は、VHに関し、さらにX線結晶解析を行い、抗体-抗原結合機構を解明する。
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