研究課題/領域番号 |
23K17378
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
天知 誠吾 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (80323393)
|
研究分担者 |
宇佐見 俊行 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (50334173)
門馬 法明 公益財団法人園芸植物育種研究所, その他部局等, 科長 (80469626)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)
2025年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
|
キーワード | 土壌還元消毒 / カプロン酸 / Clostridium / トマト萎凋病菌 / 中鎖脂肪酸 / フザリウム / 半身萎凋病菌 |
研究開始時の研究の概要 |
土壌還元消毒法は土壌病原体に対して顕著な消毒効果を示す一方、冷涼な地域では土壌の還元化が進行せず、効果が不安定である。また、土壌くん蒸剤と比較して処理費用が高い欠点もある。低温かつ低コストで消毒効果を発揮できれば、土壌還元消毒法は革新的な汎用技術となり得る。本研究では、嫌気性細菌を用いて植物病原菌に対し消毒作用を持つ中鎖脂肪酸を安価に発酵生産し、これを土壌に混和することにより、低温下でかつ低コストに土壌消毒処理が可能か検証する。
|
研究実績の概要 |
今年度はまず、カプロン酸が低温下でも植物病原菌に対し生育阻害効果を発揮するか検討した。酢酸、酪酸またはカプロン酸を含むGlucose-Yeast extract-Peptone寒天平板培地を調製し、その中心部にトマト萎凋病菌(Fol)を接種した後、15度のインキュベーターで2週間培養した。その結果、酢酸と酪酸添加区では無添加の対照区と比較して有意な生育阻害は観察されなかったのに対し、カプロン酸添加区ではFolの生育が強く抑制された。また、その生育抑制効果は培地pHが低いほど顕著であった。具体的には、pH4.0と4.5に調整した培地ではFolの生育が完全に抑制された。この結果より、カプロン酸は低温下でもFolの生育を阻害できること、またその効果には嫌気条件が必ずしも必要ないことが明らかになった。次に、E801株による効率的なカプロン酸発酵生産条件を確立するため、種々の濃度のエタノールと酢酸存在下でE801株を嫌気培養し、生産されたカプロン酸と酪酸の濃度をHPLCで定量した。その結果、250 mMエタノールと100 mM酢酸の存在下で最大120 mMのカプロン酸を生産することに成功した。また、エタノールと酢酸のモル比は2.5から3.0程度が最適であった。一方、過去の論文で報告のある酵母エキスの添加は、カプロン酸の生産に良好な影響を与えなかった。このため、カプロン酸のさらなる発酵増産には、pH制御した培養等が必要と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カプロン酸がFolに対し低温下かつ好気条件でも強い生育阻害効果を持つことが明らかとなった。またE801株のバッチ培養により、120 mMという高濃度のカプロン酸を発酵生産できた。一方、酵母エキスの添加は期待したほどの効果を発揮しなかった。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は黒ボク土にFolを接種し、そこにカプロン酸を添加することでFolを土壌中で消毒できるか検討する。本試験は30度に加えて低温下(15度)でも実施する。また、カプロン酸の施用によりFolを消毒した土壌を用いてチャンバー内でトマトを栽培し、萎凋病の発生を抑制できるか検証する。この他、半身萎凋病に対するカプロン酸の生育阻害効果や消毒効果についても検討する。
|