研究課題/領域番号 |
23K17379
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (00532160)
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研究分担者 |
市川 明彦 名城大学, 理工学部, 准教授 (20377823)
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (30175228)
緒方 和子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (40761614)
武田 久美子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 上級研究員 (60414695)
及川 俊徳 宮城県畜産試験場, 畜産試験場, 上席主任研究員 (70588962)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2025年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
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キーワード | 乾眠 / 哺乳動物細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、哺乳動物細胞の遺伝資源としての利用促進および保全を目的として、ウシをモデルとして精子および体細胞の乾燥耐性能力を細胞生物学的および物性的に検討し、「乾燥しても生存する細胞」を実現するための挑戦的研究を実施する。さらに、本研究成果を礎として、「乾眠生物学」のような新しい学問分野を創造し、生物にとって必須と考えられている「水」の概念についてパラダイムシフトをもたらす。
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研究実績の概要 |
家畜の品種および遺伝的多様性を維持するためには、一般的に生殖細胞および体細胞を凍結保存する。しかし、液体窒素保存や超低温冷凍庫保存には、「持続可能性」という面で様々な問題点が存在する。加えて、南海トラフ地震の発生が予想されるなか、褐毛和種高知系の遺伝資源を確実に保存する技術が喫緊に求められている。我々は、新たな哺乳動物の遺伝資源保存技術を開発するために、核移植 (Nuclear transfer、以下NT) 技術と凍結乾燥 (Freeze dry、以下FD) 技術を組み合わせたウシ体細胞の保存および個体の生産技術の開発を目指している。これまで、FD後-30℃で保存した場合のウシ体細胞は1年間以上保存してもDNA損傷が少なく、核移植後の胚盤胞期胚作出に成功している。しかし、FDNT由来の胚盤胞期胚作出率は低く、一度に複数作出することが難しい。また、これまで胚移植を試みても、受胎には至っていない。本研究では、まずFD細胞の損傷度を評価し、アスコルビン酸二リン酸 (AA2P) の培地への添加が胚発生へ与える効果を検討した。次に、複数のFDNT胚盤胞期胚を一度に胚移植した際の受胎および胎子の成長を検討し、FDNT由来クローン産子生産の可能性について検討した。 FD細胞の損傷評価の結果、FD後も細胞小器官およびDNAが保存されていることが分かった。また、AA2P添加培地によって胚発生向上は認められなかった。さらに、FDNT由来の脱出中胚盤胞期胚を胚移植すると25%の確率で着床し、FDNT由来胎子の生産が可能であることが明らかとなった。 これまで、FD精子によるウシ産子とFD体細胞によるウシ胎子の生産に成功したことから、乾燥状態の精子および体細胞が、個体発生に必要なゲノムを備えていることを証明した。そこで次の段階では、精子および体細胞が乾燥状態でも生存する条件を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進捗しているために、(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
精子では乾燥後の細胞小器官の機能維持および鞭毛運動の再開、体細胞では細胞膜および細胞小器官の機能維持による増殖能の獲得を目指す。そのために、すでに産子や受胎に成功しているFD技術を指標にして、細胞生物学的特徴および物性を詳細に調査する。細胞生物学的特徴は、走査型および透過型電子顕微鏡による形態観察、各種細胞小器官の検出および機能評価を行う。また、物性評価では水分含量、ガラス転移温度を測定する。精子では、すでに確立している凍結保存技術を参考にして、低温ではなく常温で水分が少ない状態でのガラス化状態を目指す。そのために、精子を浮遊させる緩衝液および添加物の種類、乾燥方法 (FDも含む) を検討し、運動性を観察する。体細胞は、乾燥後の精子の細胞膜の状態を参照して、繊維芽細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞などを供試してその保護が可能な乾燥技術を検討し、復水後の核の変化や増殖能を調査する。
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