研究課題/領域番号 |
23K17383
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分40:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究分担者 |
北川 貴士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (50431804)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2026年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2025年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 同位体 / 代謝 / 海洋生物 / 生態履歴 / 生理履歴 |
研究開始時の研究の概要 |
環境変化に対する個体群や種の適応性や生態系の回復過程を理解・予測するためには,温度順応などの生理学的応答と生息地の移動などの生態学的応答の両者を把握することが必要不可欠である.本研究の目的は,海洋生物の野外代謝速度について骨・血液・筋肉の炭素酸素安定同位体比分析により様々な時間解像度で測定する手法を開発することである.本手法により,生態学・生理学の最も重要なパラメータの一つである「生物の代謝速度」について自然状態かつ個体レベルで,直近数日間(筋肉水酸素同位体比)及び数ヶ月解像度で生活史を通した履歴(骨炭酸基炭素同位体比)が推定可能になると期待できる.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,生態学・生理学の最も重要なパラメータの一つである「生物の代謝速度」について,直近数日間(筋肉水酸素同位体比)及び数ヶ月(骨炭酸基炭素同位体比)という時間解像度で自然状態かつ個体レベルで代謝速度を推定する手法を確立することである. これまで体液の酸素同位体比の分析については,血液・筋肉小片・すり身を濾過した液体をヘッドスペース平衡法により同位体質量分析装置で分析していた.しかし,乾燥させていない生物試料は不純ガスを大量に発生させるため,バックグラウンド上昇と不安定化という問題を引き起こしていた.2023年度は,血液や体組織水分など揮発性有機物を多く含む体液の水の酸素同位体比を分析する手法の改良を行った.活性炭やシリカゲルを用いた不純物除去の妥当性について検証した結果,それらの吸着剤は同位体分別を引き起こすため不適であることがわかった.不純物の影響を最小限に抑えるための手法検討を行い,純二酸化炭素ガスと同位体平衡を達成させた後で微量の二酸化炭素をガスタイトシリンジにより分取し,ヘリウム雰囲気にしたガラスバイアルに注入し希釈するという方法により,揮発性物質を多量に含む体液サンプルについても安定同位体比分析装置を用いた分析が安定して実施できることが明らかとなった. これまで耳石の炭酸塩と極微量有機物の炭素同位体比から野外代謝速度を推定する手法が報告されていたが,実際の酸素消費量と比較し手法の妥当性を検証した例は多くなかった.2023年度はサケ稚魚についてスタミナトンネル(水流を作り酸素消費量を測定可能な閉鎖型の水槽)を用いて代謝速度を測定し,水温(3温度区)や体サイズと酸素消費速度の関係性について予備的に調べた来年度の本格的な計測に向け実験を行う予定である。今後はこの実験で用いた個体の耳石,脊椎骨,眼球などの同位体分析を行い同位体指標の有用性の検証を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施項目と研究手法の確立については当初の計画通りに順調に推移している.今後飼育実験や天然サンプルに応用することで仮説の妥当性の評価を進める.
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今後の研究の推進方策 |
スタミナトンネルを用いて代謝速度を測定した個体について,耳石,脊椎骨,眼球の分析を進める.耳石を用いた野外代謝速度推定手法について,既に報告されている手法とスタミナトンネルで得られた代謝速度の比較を行うことで妥当性について評価する.また,これまでの手法では代謝起源の炭素の同位体比の推定を筋肉の同位体比で代用していたが,眼球の炭素同位体比は時系列データが得られる上位互換として利用できる可能性があるため,その有用性について検証する.脊椎骨の構造炭酸基の炭素同位体を用いることで代謝履歴が推定できるかどうかの検証も実施する. 体液・血液の酸素同位体比や骨の構造炭酸基の炭素同位体について,部位別比較や魚種間比較を進めることで代謝速度指標としての妥当性評価も進める.また,体液の酸素同位体比の分析手法の改良についても継続して進める.
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