研究課題/領域番号 |
23K17393
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
近藤 徹 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (30452204)
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研究分担者 |
浅井 智広 中央大学, 理工学部, 准教授 (70706564)
齊藤 諒介 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (90772385)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 20,280千円 (直接経費: 15,600千円、間接経費: 4,680千円)
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キーワード | 生命と地球の共進化 / 大量絶滅事変 / 絶滅光合成生物 / 太古のタンパク質 / マルチモーダル顕微分光 / 光合成 / 顕微分光 |
研究開始時の研究の概要 |
進化系統樹などを用いた生命史研究は現存種の情報を基に進められている。しかし、解析できるのは生命史全体のごく一部に過ぎず、全容解明には絶滅生物を含めた網羅的な分析が望まれる。一方で、地球史の研究でも地圏試料の分析から様々な仮説が提唱されているが、実証が困難であった。本研究は『絶滅生物のタンパク質機能解析』という新機軸を示し、生命史および地球史の両方の研究分野に革新的なブレークスルーをもたらす。特に、絶滅光合成生物に焦点を絞り、光合成機能と地球活動に伴う光環境変動の間に直接的な相関関係を導き出し、共進化過程を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、マルチモーダル蛍光顕微鏡を開発し、地質試料中に残存する有機分子種を分光解析する。特に、色素分子を多数結合した光合成色素タンパク質をターゲットに据え、機能性を保持したタンパク質粒子の検出を目指す。初年度である当該年度は、蛍光強度・蛍光スペクトル・蛍光寿命でイメージングが可能なマルチモーダル共焦点顕微鏡を作製した。さらに、フェムト秒レーザー光を非線形光学結晶に集光させて広帯域な白色光を出力し、プリズムで分光することで、480~800 nm領域で波長走査ができる波長可変光源も開発した。また、フェムト秒レーザー光自体も700~900 領域に幅を持つ広帯域光なので、これを分光して波長可変光源として利用した。これらを組み合わせることで、480~900 nmの範囲で励起光の波長掃引が可能となり、非常に幅広い波長域で励起スペクトルを測定できるようになった。これらの装置開発に加え、地質試料の調整方法も改良した。鹿児島県の貝池の湖底から採取した地質試料を用い、ガラス基板への設置方法や測定手法の最適化を行うことで、地質試料の顕微分光実験系を確立した。そこで、約2億5千万年前のペルム紀末に生じた大量絶滅事変の年代に対応する地質試料の顕微分光解析を行った。可視光域から近赤外域までの幅広い波長領域で蛍光スペクトルおよび励起スペクトルを測定し、これまで観測されたことのない未知の信号の検出に成功した。今後は、これらの信号の同定を進めるとともに、極低温クライオスタットを導入して極低温顕微分光測定系を構築する。さらに時間分解顕微測定を行うことで、エネルギー移動などの機能性が保存されているかを確認する。これらに加え、当該年度は、マイクロ流路を用いた単一タンパク質顕微測定系の開発も進めており、光合成アンテナタンパク質・アロフィコシアニンの1粒子検出に成功した。これも今後さらに改良を進めて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度となった当該年度は、蛍光の強度・スペクトル・寿命に加えて励起スペクトルが測定できるマルチモーダル型の共焦点顕微鏡を開発し、地質試料の顕微分光解析手法の最適化を行った。本課題の行く末を占う意味で、地質試料中に機能を保った光合成色素タンパク質が残存するかどうかを確認できるかが最初の最も重要な鍵となるが、約2億5千万年前の地質試料から有機物由来と思われる励起・蛍光スペクトルを観測でき、まずは大きなきっかけを掴むことに成功した。また、本課題の最大の強みは、光物理生物学・地球生命化学・光合成生物学という全くバックグラウンドの異なる3人の専門家がチームを組むことにあるが、当該年度は適宜オンラインミーティングで議論の場を設けながら進めており、相補的に連携しながら研究を進めるスタイルを確立できた。このように、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度で基本となる顕微分光測定系を構築することができ、地質試料の顕微分光解析手法も確立できた。また、約2億5千万年前の地質試料から有機物由来と思われる励起・蛍光スペクトルを観測できた。そこで、今後は得られた信号の同定を進めていく。そのために、ラマンスペクトルと時間分解蛍光スペクトルが取得できるように顕微分光測定系の改良を進めて行く。さらに、極低温クライオスタットを導入し、極低温環境下でより詳細なスペクトル解析を行えるように装置改良を行う。これらに加え、地質試料から有機物質を抽出する新たな手法を確立する。様々な溶媒を用いた抽出方法を現在進行形で試しており、最適な条件を導き出す。特に、光合成色素タンパク質の抽出を目指し、生化学的なノウハウも織り交ぜながら手法を確立していく。抽出溶液に含まれる極微量な標的試料を解析するために、マイクロ流路を用いた単一粒子分光顕微法も開発しており、光合成アンテナタンパク質・アロフィコシアニンの1粒子検出ができるレベルに達している。そこで、より詳細な分光パラメータを得られるように、引き続き装置改良を進めて行く。
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