研究課題/領域番号 |
23K17417
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分49:病理病態学、感染・免疫学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
関谷 高史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 免疫応答修飾研究室長 (80519207)
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研究分担者 |
杉山 真也 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, テニュアトラック部長 (20612427)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2026年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 免疫学 / 制御性T細胞 / 細胞リプログラミング / 自己免疫疾患 / 免疫寛容 / CD4T細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
TN細胞は未分化で均一な細胞集団として捉えられており、組織特異的な免疫応答を担うファクターとしては検討されてこなかったが、均一な細胞集団と捉えるとうまく説明のつかない現象が多々見出されてきている。そこで本研究は、①組織間や加齢など、様々なパラメーターの下でTN細胞の不均一性を捉える ②不均一性の形成に寄与する分子機序を明らかとする ③TN細胞の不均一性が引き起こされることの意義を解明する ④得られた知見に基づき、TN細胞の性質を人為的に改変し、その作用を検討することを目指す。これらの試みにより、組織特異的免疫応答を担う新たなメカニズムの一つとして、TN細胞の不均一性の寄与の可能性を追求する。
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研究実績の概要 |
1. 脾臓とリンパ節におけるナイーブCD4T細胞のフェノタイプの違い、およびその分子・細胞メカニズムを明らかとした 先行研究で作製した、抗原受容体刺激をリアルタイムにモニタリングできる「Nr4a1-dsGFPマウス」を用い、ナイーブT細胞の性質変化に寄与することが広く知られていた「トニックTCR刺激」と、それ以外の環境因子の作用を、脾臓、腸間膜リンパ節、腋窩リンパ節から取得したナイーブCD4T細胞のATAC-seq解析により検討した。その結果、トニックTCR刺激よりも組織特異的因子の方がナイーブCD4T細胞の性質変化に対する寄与が大きいことを突き止めた。さらに、脾臓および各リンパ組織細胞の遺伝子発現の比較検討などにより、脾臓ナイーブT細胞は炎症性サイトカインIL-1bによる刺激をより強く受けており、それによりTregへの分化能の低下や、 脾臓環境における細胞生存の維持などの特徴を付与されていることを明らかとした。 2. 肺ナイーブCD4T細胞特異的な特徴に対し、SOCS3が重要な役割を担っていることを明らかとした 6種類の組織(末梢血、リンパ節、脾臓、肝臓、骨髄、肺)のナイーブCD4T細胞のRNA-seq解析により、肺ナイーブT細胞で特異的に発現が亢進している遺伝子の一つとして、サイトカインシグナル伝達の抑制因子・SOCS3を見出した。そこで、T細胞特異的にSOCS3を欠損させたマウス(CD4-Cre SOCS3-flox)を作製し、ダニ抗原の気管内投与による喘息モデルの解析を行ったところ、SOCS3欠損ナイーブT細胞はIL-17産生の亢進を示し、さらに、その喘息症状はステロイド抵抗性を示した。現在、RNA-seq結果をiCellNetなどのアルゴリズムを用いて更なる解析を進めており、肺におけるナイーブT細胞の性質変化に寄与する細胞種やシグナル伝達をSOCS3を中心に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、脾臓とリンパ節におけるナイーブCD4T細胞の性質の違いと、その変化の分子・細胞メカニズムに関する研究はCell Reports誌に論文発表を行った。さらに、肺のナイーブT細胞の性質維持に寄与する重要な因子としてSOCS3を同定し、その欠損マウスの解析を進め、多くの重要な知見が得られつつあるため、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
1. 肺組織ナイーブCD4T細胞の解析: ダニ抗原喘息モデルの肺から採取したナイーブT細胞(野生型とSOCS3欠損型)のRNA-seq結果に対しiCellNetや種々のパスウェイ解析を進めることで、肺組織でナイーブT細胞に対し作用する細胞種や、シグナル因子を絞り込む。見出された候補因子の作用を、肺組織から取得したプライマリーナイーブT細胞を用いて検討する。作用が確認された因子に関しては、その阻害剤やアゴニストを用いた活性制御により、それらの因子のin vivoでの作用を追求し、さらに、ダニ抗原喘息モデルの治療効果を検討する。また、ナイーブT細胞に対し作用することが推測された細胞種に関しては、抗体や薬剤を用いた細胞除去、および細胞移入実験により、それら細胞種のナイーブT細胞に対する作用をin vivoで検討し、また、ダニ抗原喘息モデルの治療効果を検討する。特に、SOCS3の欠損により喘息病態がステロイド抵抗性となることが確認されているため、SOCS3の下流でステロイド抵抗性に寄与している因子を突き止め、それらの因子の制御によりステロイド感受性を誘導できるか否かを入念に検討する。また、喘息モデルに加え、感染モデルでの検討も開始する。 2. 他組織ナイーブCD4T細胞の解析: 末梢血や肝臓局在性のナイーブT細胞に関し、特異的に発現する遺伝子をRNA-seq結果の解析により突き止め、それらの因子の欠損や活性増強がナイーブT細胞に対し与える影響をin vitro, in vivoの両方で追求する。
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