研究課題/領域番号 |
23K17432
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長村 登紀子 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (70240736)
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研究分担者 |
向井 丈雄 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60871324)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2024年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | 間葉系細胞 / 放射線性臓器障害 / 臍帯 / 再生医療 / 抗炎症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、放射線治療や原発事故や核被曝等による放射線障害に対する臍帯由来間葉系細胞(臍帯MSC)治療を目指し、放射線障害(脳、肺、骨髄、皮膚)モデルマウスや共培養系を用いてその有効性の検証及び作用機序を解明することを目的とする。放射線による組織障害の初期発生機序はROS等によるミトコンドリア機能障害であり、抗酸化作用、抗炎症効果や組織修復能を有する臍帯MSCが放射線によるROS抑制や組織修復に寄与すると期待される。本研究では、放射線性脳障害、肺障害(肺線維化)、骨髄抑制及び皮膚障害モデルマウスや共培養系を作成し、臍帯MSC輸注による効果を免疫組織学的及び分子学的に解析し、医療実装につなげる。
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研究実績の概要 |
本研究は、放射線治療や原発事故や核被曝等による放射線障害に対する臍帯由来間葉系細胞(臍帯MSC)治療を目指し、放射線障害モデルマウスやin vitro共培養系を用いてその有効性の検証及び作用機序を解明することを目的とする。2023年度は、主に放射線性脳障害及び皮膚障害に対する臍帯MSC効果について検討した。 放射線性脳障害に対する臍帯MSC効果の検討:in vitroにおいて、マウス胎仔皮質ニューロンの初代培養に放射線照射では、ROS活性の上昇を認めたが、臍帯MSCとの共培養によって、有意にROS活性が抑えられた。頭部放射線照射マウス(B6 Albino)への臍帯MSC静脈内投与における行動評価の結果、照射3週間後のOpen Field及びY迷路解析では有意差が認められなかったが、病理組織学的にはperiventricular部位でのグリア細胞の増加傾向を認めた。現在、照射3日後の海馬CA1領域の変性ニューロンの増加やマイクログリアの活性化について、病理組織切片を作成して免疫染色にて検討中である。 放射線性皮膚障害に対する臍帯MSC効果の検討:これまでB6アルビノマウスの背側皮膚への放射線照射での解析を行ってきたが、臍帯MSC皮下投与による改善傾向は認めたものの有意差には至らなかった。そこで、今年度は、より照射野を限定できる片側下肢へ放射線照射を行い、臍帯MSCを血流の多い筋肉内投与を行ったが、効果は限定的であり、再度至適照射量や投与経路を検討している。一方、作用機序の解明のため、放射線照射皮膚細胞株HaCaT細胞と臍帯MSCとの共培養(チャンバーへの播種)の系を樹立し、ヒーリングスクラッチ解析を実施した。その結果、コントロールに比し48時間後の修復速度に有意な改善を認めた。今後、放射線被爆細胞からのROSの放出量の臍帯MSCの制御機構や修復に関する液性因子を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射線性脳障害の行動評価に関して、特にOpen fieldに関して解析に時間を要した。放射線性皮膚障害に関して、背側皮膚への放射線照射での解析を行ってきたが、今年度は、より照射野を限定できる片側下肢へ放射線照射を行ったが、臍帯MSC投与による有意な効果が認められなかった。その原因として、照射量(40Gy)の過多、臍帯MSCの筋肉内注射による患部への細胞配布が十分ではなかった可能性が考えられた。令和6年度は、照射部位、照射量も含めて再度検討を行う。一方で、in vitroヒーリングスクラッチ解析では、期待通りの性かが得られた。R5年は、実験していたスタッフの人事異動等もあり、モデル系を立ち上げ直すのに、若干時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下臓器ごとに研究を進める。 1)放射線性脳障害に対する臍帯MSC効果の検討:臍帯MSC治療効果の検討:B6 Albinoマウスへの脳照射早期(3日後)の海馬CA1領域の変性ニューロンの増加やマイクログリアの活性化について、病理組織切片を用いて、ニューロン・グリア・マイクログリアを免疫染色し、定量化し、in vitroのデータを合わせて論文化する。 2)放射線性肺障害に対する臍帯MSC効果の検討:マウスモデルを作成し、臍帯MSCを静脈内投与し、肺病理組織にて線維化等を確認する。 3)放射線性骨髄抑制に対する臍帯MSC効果の検討:NOGマウスに放射線全身照射後、造血幹細胞移植(臍帯血CD34+細胞)を行い、臍帯MSCの投与の有無による血球の生着率、白血球回復速度等を検討する。既に、NOGマウスへの放射線照射及び細胞投与手技は確立している。 4)放射線性皮膚障害に対する臍帯MSC効果の検討:放射線量、照射部位を調整し、皮膚表面に当たる至適線量を再決定する。また臍帯MSCの投与経路に関して、Lucuferase遺伝子導入臍帯MSCを用いて、血管内投与と筋肉注射による細胞の分布及び停留時間、また組織修復に対する効果について比較検討する。一方、HaCaT細胞を用いて、放射線による損傷治癒の作用機序について、炎症性サイトカイン(IFN-γ,TNF-a)やROS量について、臍帯MSCとの共培養の有無による変化について検討する。臍帯MSCから分泌される液性因子(HGF, IDO-1, KRTAP, PGE2等)について、RT-PCRやELISAを用いて検証し、その作用機序について考察する。 以上、放射線がん治療や原発事故、核被曝等による組織障害の発生機序を解明するとともに、臍帯MSCの組織修復・抗炎症効果の有効性を検証し、治療に役立てる。
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