研究課題/領域番号 |
23K17457
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 昌彦 筑波大学, システム情報系, 教授 (00222349)
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研究分担者 |
川崎 真弘 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40513370)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2026年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 脳波 / うつ度 / 位相リセット / うつ病 / バイオマーカー / 浅層ニューラルネット |
研究開始時の研究の概要 |
うつ病は早期の発見と治療が重要であるが,早期のうつ状態を客観的に検知できる簡便な生理指標はない.深層学習によってうつ病患者と健常者の脳波を判別した研究はあるが,恐らくうつ病による認知機能の低下を捉えているだけで,うつ病の兆候の検出に成功したものはない.本研究では,学習能力と透明性を両立した独自の浅層学習モデルを用いた安静時脳波の情報流解析などを通じて,短時間の脳波計測で容易に求められ,前うつ状態にも適用できる生理指標を確立するとともに,うつ病リスクの評価システムやニューロフィードバックによる治療システムの開発など,それをうつ病の早期発見・治療へ応用することを目指す.
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研究実績の概要 |
うつ病は「こころの風邪」と言われることがあるほど一般的な病気だが,自殺の大きな原因ともなる深刻な病気であり,早期の発見と治療が重要である.しかし,現在うつ病の診断は専門家による問診に頼っており,早期発見は容易でない. 脳波は比較的安価かつ容易に計測可能であり,これを用いてうつ病を診断するための客観的指標(バイオマーカー)を得ようという研究は長く行われてきた.しかし,中程度以上のうつ病患者と健常者を識別することはできても,うつ病の兆候を捉えることに成功した例はなかった. 我々は,昨年度までの研究で脳波の位相リセットと呼ばれる現象の頻度(位相リセット率)が,そのときのうつ気分の強さと高い相関をもつことを発見したが,本年度はそれを論文発表した.うつ病による認知機能等の低下ではなく,日々変化するうつ気分を反映した脳波活動の報告は世界で初めてであり,うつ病の早期発見につながる成果と言える. また,うつ病患者を含む脳波の公開データセットを解析した結果,うつ病の重症度を表すうつ尺度とも相関があることがわかった.また,これに関して脳波計測実験を実施するとともに,うつ病リスクの評価手法を開発して特許出願した. さらに,うつ病に限らず,より広い心理状態および認知・運動機能との関係を検証するための予備実験を行った.一つは1週間続けて脳波測定実験を予備的に行い、日々の心理状態の変動との相関を示す予備解析を行なった.もう一つの予備実験では、1週間続けて運動リズムの変動を計測する実験を行い、運動機能の変動が日々の気分状態の変動と関係することを特定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ病の早期発見につながる大きな成果を論文発表し,国内外のニュースサイトや雑誌に掲載されるとともに,メンタルヘルスケアに関心をもつ企業からもコンタクトがあった.また,これに関して国際特許(PCT)出願するとともに,うつ病リスク評価手法の開発などに関して新たに2件の特許出願を行った.
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今後の研究の推進方策 |
位相リセット率は個人差が大きいため,これを補正してうつ尺度の推定精度を向上させる.そのために,実験の規模を拡大して多くのデータを取得する.また,開発した手法の有効性を検証する. また,うつ病以外の精神疾患のスクリーニングのほか,より広い心理状態や認知・運動機能の可視化への応用を図る. さらに,挑戦的課題として,ニューロフィードバックによるうつ病等の予防や治療への応用が可能かどうか検討する.
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