研究課題/領域番号 |
23K17458
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大塚 翔 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (00776049)
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研究分担者 |
高木 明 地方独立行政法人静岡県立病院機構静岡県立総合病院(救急診療部、循環器病診療部、がん診療部、臨床診療部, 臨床診療部, 副院長 (10175424)
山岸 慎平 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 研究員 (20974736)
中川 誠司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (70357614)
古川 茂人 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 人間情報研究部, 上席特別研究員 (90396169)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 12,090千円 (直接経費: 9,300千円、間接経費: 2,790千円)
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キーワード | オリーブ蝸牛束反射 / アブミ骨筋反射 / 遠心性神経 / 皮質 / 遠心生神経 |
研究開始時の研究の概要 |
聴覚系には皮質から末梢に至るまで遠心性神経系が張り巡らされている.脳幹から末梢に至る遠心性神経は,音に反応して反射的に末梢入力を調整する機能,いわゆる脳幹反射を司ることが知られている.一方で,皮質から脳幹へ至る遠心性経路の機能とメカニズムについては,断片的な知見があるものの総合的な理解には至っていない.本研究では,予期や注意に関わる神経活動を計測・制御する方法論を導入し,ヒトの皮質から末梢に至る聴覚遠心性経路の機能とメカニズムの総合的理解を目的とする.この学術的なメカニズムの解明に基づいた新たな臨床技術の基盤も提案する.
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研究実績の概要 |
聴覚系には皮質から末梢に至るまで遠心性神経系が張り巡らされている.脳幹から末梢に至る遠心性神経は,音に反応して反射的に末梢入力を調整する機能,いわゆる脳幹反射を司ることが知られている.一方で,皮質から脳幹へ至る遠心性経路の機能とメカニズムについては,断片的な知見があるものの総合的な理解には至っていない.本研究では,予期や注意に関わる神経活動を計測・制御する方法論を導入し,ヒトの皮質から末梢に至る聴覚遠心性経路の機能とメカニズムの総合的理解を目的とする. 本年度は,2系統ある脳幹反応の1つであるオリーブ蝸牛束反射を,聴取課題実行中に計測する実験系を確立した.その手法を応用し,課題実行中にはコントロール条件(課題実行なしでオリーブ蝸牛束反射強度を測定)と比べてオリーブ蝸牛束反射が増強されることを明からにした.さらに,聴取成績は課題実行中のオリーブ蝸牛束反射強度と有意な相関があったものの,コントロール条件でのオリーブ蝸牛束反射とは有意な相関が見られなかった.この結果は,聴覚的な注意に伴うオリーブ蝸牛束反射の増強が,雑音下での聴取に寄与していることを示している.一方,脳幹反射のもう1つの系統であるアブミ骨筋反射には,課題実行に伴う変化は見られなかった.また,これまでに大塚らは,刺激音のタイミングの予期できる場合にオリーブ蝸牛束反射が増強することを示してきた.本年度は,測定されたデータを再解析を行い,アブミ骨筋反射の強度を算出した.聴取課題実行中と同様,予期に伴うアブミ骨筋反射の変化は見られなかった.これらの結果は,オリーブ蝸牛束反射とアブミ骨筋反射は異なるメカニズムで制御されていることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,2つの系統の脳幹反射を評価することで,ヒトの皮質から末梢に至る聴覚遠心性経路の機能とメカニズムの総合的理解を目的とする.これまでに,注意や予期に伴うオリーブ蝸牛束反射の増強,さらには,その増強に皮質の低周波数の脳律動が関与することを明らかにしてきた.また,課題実施中のアブミ骨筋反射の測定手法を確立し,予備的な検討を行った.両脳幹反射の神経メカニズム・役割の違いを検討する下地が整ったという点で,本年度の進捗としては概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,注意や予期に伴うオリーブ蝸牛束反射の増強,さらには,その増強に皮質の低周波数の脳律動が関与することを明らかにしてきた.一方,これまでの実験条件では,比較的に低い強度(60 dB SPL)の刺激音を用いてきた.アブミ骨筋反射は比較的に高い強度(75 dB SPL 以上)で働くとされていることから,次年度は高強度の刺激音を用いた実験パラダイムを確立し,両脳幹反射の神経メカニズム・役割の違いを検討したい.また,経頭蓋電気刺激法を用いて皮質領域を刺激し,その強度及び位置を変えながら両脳幹反射に与える影響を比較することで,より体系的に神経メカニズムの違いを検討する.
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