研究課題/領域番号 |
23K17479
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
川上 茂 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (20322307)
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研究分担者 |
日宇 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00404260)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2027年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 脂質ナノ粒子 / 細胞外小胞 / ゲノム編集 / 脳 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、新規の機能性ペプチドで修飾したmessengerRNA(mRNA)封入脂質ナノ粒子や細胞外小胞を開発し、脳における細胞選択的送達法の開発をすすめる。一方、本研究で確立するDDS技術を基盤として、脳梗塞に対する新規核酸医薬の開発を行う。また、本研究で開発するDDS技術や集束超音波/マイクロバブル法と組み合わせることで、脳内の特定の部位における特定の細胞特異的なゲノム編集法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、配向性制御型の抗体修飾脂質ナノ粒子の開発を目的として、Fc領域結合ペプチド修飾高機能・高品質(High Functionality and Quality: HFQ)脂質の設計と合成を行い、水に高分散能を有し、単一分子量の新規FcBP-HFQ脂質を得た。次に、Fc-BP化したmRNA/LNPと抗トランスフェリン抗体RI7-217を混合し、配向性を制御した抗体修飾mRNA/LNPを調製した。抗体修飾mRNA/LNPは、トランスフェリンを高発現する細胞に対して選択的に高い結合性を示した。また、本システムの有用性を示すため抗Her2抗体Herceptinで修飾したところ、Her2を高発現する細胞に対して顕著に高い結合性を示した。これらの知見は、FcBP-HFQ脂質を用いることで抗体修飾mRNA/LNPの調製が可能であることを強く示すものである。一方、当研究室で開発した細胞膜への結合を高める新規両親媒性ペプチドであるKK-HFQ脂質ミセルとエクソソームを含む小型細胞外小胞(small extracellular vehicles: sEVs)の迅速後修飾・マイクロ流体法(microfluidic post-insert法)による修飾を行い、得られたKK修飾sEVsの細胞結合性をマクロファージなど種々の細胞株で評価したところ、いずれも顕著に高い細胞結合性を示し、HFQ脂質ミセルとsEVsのマイクロ流体フローによる大量調製可能な高機能化技術の開発に成功した。さらに、標的遺伝子への高い選択性をもつCRISPR/Cas9システムに必要なCas9 mRNAの鋳型プラスミド作製を行い、鋳型プラスミドから転写したmRNAの鎖長を電気泳動で確認することができた。本年度得られたゲノム編集用核酸とHFQ脂質を組み合わせて、標的指向性を有するゲノム編集治療薬の創成を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった、配向性制御型抗体修飾用HFQ脂質の新規開発、sEVsとHFQ脂質のマイクロ流体フローによる新規調製法、ゲノム編集用核酸の合成に成功したためである。これらの研究は現在2報の論文として投稿中でありアクセプトに至っていない。研究計画は目標通りであったが、投稿計画に遅れがあったため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
配向性制御型抗体修飾用HFQ脂質の新規開発については、FcBP-HFQ脂質の開発に成功したものの、生体内での抗体との置換が起こる可能性があるため、脳内局所投与に限られる可能性がある。そこで本問題を解決して血管内での適用を可能とする戦略として、アルキン基修飾HFQ脂質とアジド化抗体とのFc領域でのクリック反応を利用した結合法を考案し、現在、抗体特異的な細胞結合性の評価をすすめている。一方、抗体修飾mRNA/LNPの結合性を使用する抗体の種類によっても大きく異なることが分ったため、文献情報を参考に実験に使用する抗体の選定を慎重に進める。また、治療用mRNAとしてのHGF mRNAは既に鋳型プラスミドの作成に着手しており、合成完了次第、細胞にトランスフェクションしてHGFの発現を確認する。
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