研究課題/領域番号 |
23K17504
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
梶浦 眞由美 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (70849025)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 音声速度適応 / 処理速度 / 読解速度 / 視線計測実験 / 脳機能イメージング実験 / f NIRS / f MRI / 速聴 / 第二言語リスニング / 眼球運動 / 脳機能イメージングデータ |
研究開始時の研究の概要 |
外国語の聴解を難しくしている最大の要因は「英語母語話者の話速についていけない」という問題で、音声認識処理速度を促進するために速聴という訓練方法がある。梶浦(2021)ではトランスクリプト読解と速聴の併用で、速い音声でも理解度を低下させず効果的な練習となることが行動実験と脳活動計測から示された。本研究は、第二言語の音声速度適応に関連するメカニズム、特に高速音声適応後に低速音声を提示した場合に、「よりゆっくり聞こえる 」という現象に焦点をおき、速聴時の眼球運動や脳活動を計測し、速聴訓練により促進された処理能力を普通速聴解の向上に繋げる脳内メカニズムを解明することを試みる。
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研究実績の概要 |
本年度は、行動実験として、音声と読解文を同時提示する方法で、速聴トレーニング実験を実施した。音声と読解文を同時提示する速聴トレーニングの前後で、音声なしの読解文を提示し、処理速度(読解速度)が向上するかどうかを検証した。 Eprimeを使用して、速い速度の音声と読解文を同時提示する意味性判断課題を作成し、読解を伴う速聴トレーニングを実施した。音声と読解文を同時提示した速聴トレーニングは、1.4倍速、1.6倍速、1.8倍速、2倍速と徐々に音声速度を速めていった。トレーニングと事前事後テストを含めて合計80問実施した。トレーニングの前後に実施した事前事後テストは、20問ずつ読解文のみ提示し、音声と読解文を同時提示した速聴トレーニングにより、読解速度が向上したかどうかを検証した。またワーキングメモリ容量が得点の伸長度に影響を与えるか検証するために、デジットスパンテスト、アンチサッケードテストも実施した。 音声と同時提示した場合は、音声なし条件や1.4倍速同時提示条件に比べて1.6倍速、1.8倍速、2倍速音声同時提示条件の方が読解時間が速かった。読解文のみを提示した事前事後テストでは、計測した読解速度に有意な差が見られなかった。 また、令和6年度は、音声と読解文が同時提示された場合の、英語の音声速度適応(高速→低速、低速→高速)に関するメカニズムを検証する眼球運動と脳活動を同時計測する実験を実施する予定である。その準備のため、以前より実施している、速い速度と普通速度の音声を文字と同時提示した際の眼球運動と脳活動を同時計測した実験のデータも追加で収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音声と読解文を同時提示する速聴トレーニング実験は、事前事後テストで有意な差が見られなかったが、これは問題数が多いことから、疲れが出て、トレーニング効果よりも、事後テストの読解速度に疲れの影響が上回った可能性も考えられる。このため、疲れの影響が少ないデザインに変更した実験も試してみたい。今回収集したデータより有益な結果も得られたが、速聴トレーニングにおける読解処理速度の効果をより精緻に検証できる実験デザインを使用して、データを再収集する予定である。 また、速い速度と普通速度の音声を文字と同時提示した際の眼球運動と脳活動を条件別に比較する実験においては、更にデータ収集し、分析する予定で、令和6年度実施予定の実験に役立てたい。 以上より、令和5年度に完了する予定だった行動実験について、デザインを変更した実験も再度試してみたいため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
音声と読解文を同時提示する速聴トレーニング実験により、トレーニング後は処理速度(読解速度)が向上すると仮説を立てていたが、問題数が多いことから、事後テストでは、疲れが出て仮説通りの結果が得られなかった。このため、問題数を少なくし、より効率的な速聴トレーニングを実施して更なる検証をする予定である。また、速聴を伴わない意味性判断課題を使用するコントロール課題も実施し、音声と読解文を同時提示する速聴トレーニングの処理速度への効果を検証する。 今年度は、実験2(令和6年、眼球運動とNIRS:近赤外分光法を使用した脳活動の同時計測)の本実験を実施し、音声と読解文を同時提示する速聴トレーニング後の読解処理中の眼球運動、脳活動に変化が見られるかどうかを検証する。現在収集中の高速と普通速の音声を文字と同時提示した際の眼球運動と脳活動を条件別に比較する実験データから、改善点等を見出し、より良い実験デザインを考案し実施する予定である。 また、令和7年度には、実験3(MRI実験: 磁気共鳴画像法)を実施し、音声速度適応に関連する神経基盤の解明(MRIによる脳活動計測)を試みる。 それぞれの実験から、音声処理速度促進に効果的な訓練を提示し、また、音声速度適応(高速音声→低速音声、低速音声→高速音声)に関連するメカニズムを解明したい。
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