研究課題/領域番号 |
23K17510
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
島田 めぐみ 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 教授 (50302906)
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研究分担者 |
保坂 敏子 日本大学, 大学院総合社会情報研究科, 教授 (00409137)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 避難民 / 日本語教育 / 年少者 / オンライン / 日本語学習支援 / ウクライナ / 難民・避難民 / うえの式質的分析法 |
研究開始時の研究の概要 |
ウクライナ避難民に対し日本語学習を支援する支援者は,様々な面において困難を感じていると思われる。そのため,本研究では,避難民を対象者とした学習支援において特有の困難点はどのようなものか,また難民・避難民への教育経験のない教師が支援を行う中でどのような意識の変容を辿るのかを検証する。具体的には,約15名の支援者に対して半構造化インタビューを行い,うえの式質的分析法等を用いて,支援者にとっての困難点,それに対する対応,意識の変容などを明らかにする。また,他地域,他国における避難民への言語学習支援について,その実態や課題についても調査を行う。
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研究実績の概要 |
研究代表者と分担者が主催するGSSC日本語クラブでは,国内外の日本語教師がウクライナ避難民に対し,オンラインによる日本語学習支援を行っている。日本語学習支援者のうち,本研究への協力に関し許諾を得られた者を「協力者」と位置付け,実践の中でどのような意識の変容があったか,またオンラインによる指導の有効性を明らかにするために,下記の調査を行った。 (1) 協力者7名に対して,「実践の中で,困難だと思ったこと,それにどう対応したか,考えたこと,気づいたこと」等に関し,オンラインによる半構造化インタビューを行った。インタビュー内容は,KJ法の発展型である「うえの式質的分析法」にて分析を行った。分析の結果,実践者全体の傾向として,支援前には避難民への支援が未経験であることから教授方法に関する不安が多く,次第にそれらが解決されると,心理面での配慮や背景知識の必要性に意識が移ることが明らかになった。実践を通して得られた信念は,実践者の背景により多様であるが,実践を通して,避難民への教育に対しての意識が変容する様子が観察された。 (2) ウクライナからの児童を受け入れ,GSSC日本語クラブが支援を行なっている地域を訪問し,教育委員会や小学校の関係者と支援のあり方について意見交換を行った。 (3) GSSC日本語クラブの日本語教師と連携して日本語指導を行なっている日本語指導員に対して半構造化インタビュー調査を行った。 (4) 低学年児童には難しいとされるオンライン日本語学習支援を行い,成果をあげた。なぜ有効に機能したのかを明らかにするために,協力者2名が作成した教材と授業記録,協力者2名へのインタビューデータを分析し,支援における留意点や成功の要因を探った。その結果、低学年児童の認知レベルと学習の動機づけへの配慮,避難民に係る配慮,オンライン学習を支える環境の整備が主要な要因として浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の(1)から(4)は当初予定していた内容であり,予定通り研究が進んだ。(1)については,7人のインタビューを終え,うえの式質的分析法を用いて分析を行った。実践を通して,避難民への教育に対しての意識が変容する様子が観察された。分析結果は,2024年6月29日に開催される第33回小出記念日本語教育学会年次大会で発表が確定している。 (2)については,A市の教育委員会や小学校の関係者との意見交換を行い,A市在住の児童に対するオンライン日本語教育実践の意義,連携のあり方などについて確認した。 (3)については,A市の日本語指導員に対するインタビュー調査を行い,支援の実態を確認した。 (4)は当初の計画では予定していなかった項目であるが,研究過程で生じた疑問を明らかにするために行った研究である。(1)から(3)までは,主に協力者の意識に注目しインタビューに基づいた研究であるが,(4)は,インタビューデータのほか,使用した教材や記録の分析から支援のあり方を検討した。この調査の分析結果は,2024年2月9日に,「第8回シンポジウム未来志向の日本語教育」(筑波大学,オンライン)にて口頭発表を行った。 (1)から(3)までは当初の予定通りであるが,(4)については,分析の観点,分析の手法を広げ,より広い視点から行った調査である。しかしながら,日程調整ができなかったことから,専門家を招いての研究会を開催することが叶わなかった。これらのことを勘案すると,「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,(1) GSSC日本語クラブ以外のウクライナ避難民に対する日本語学習支援を行っている機関(大学,日本語学校,団体等)を訪問し,実態と課題を明らかにするために半構造化インタビュー調査を行う。 (2) ウクライナ等からの難民・避難民を受け入れている国における自国語教育について調査する。具体的には,ウクライナからの避難民を受け入れているドイツ,ミャンマーからの難民・移民を受け入れているタイを訪問し,現地言語の学習支援に関わる団体,教員を対象にインタビュー調査を実施し,質的に分析を行い,難民・避難民に対する自国語教育に関する現状と課題を明らかにする。(3) 第33回小出記念日本語教育学会年次大会にて,2023年度に日本語学習支援実践者に対して実施した調査の成果について研究発表を行う。(4) 質的研究の専門家や難民・避難民への教育の専門家を招いて勉強会を行う。 また,GSSC日本語クラブに登録しながらも支援に踏み切れない日本語教師が若干名存在する。2025年度は,(3) それら葛藤を抱える日本語教師のうち,協力に同意を得られた者に対して半構造化インタビュー調査を行い,支援をとどまらせる葛藤や不安材料について明らかにする。その上で,(4)全データを包括した分析を行い,日本語学習支援者にとっての困難点,それに対する対応,意識の変容などを明らかにする。また,専門家を招き,オンラインによる成果発表会を開催する。
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