研究課題/領域番号 |
23K17515
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒井 英男 富山大学, 理学部, 客員教授 (30134993)
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研究分担者 |
泉 吉紀 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60793669)
竜田 尚希 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (30521314)
高橋 浩二 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10322108)
菅頭 明日香 青山学院大学, 文学部, 准教授 (90554072)
伊藤 光雅 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60582921)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 遺物の破片 / 磁化 / 年代 / 熱履歴 |
研究開始時の研究の概要 |
考古地磁気学では,窯跡等の焼土の熱残留磁化が過去の地磁気を記録する特性を用いて年代研究が活用されている.土器,陶磁器は,安定な熱残留磁化を持つものの,焼成後に移動するので地磁気方向の研究に使えないとされてきた.しかし焼成時の水平面がわかれば,磁化から地磁気を復元できる.特に地磁気伏角(水平面からの傾斜)が求め易い.金属遺物の一部でも同様に研究できる.本研究では,土器・陶磁器や金属遺物の破片の磁化から地磁気を求める精度良い方法を得て,年代・産地の研究に利用する.考古学に貢献する遺物の磁化研究法を開発し,博物館・大学や関連機関に保管されている多くの遺物の破片を用いる研究を行う.
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研究実績の概要 |
考古地磁気では,窯跡等の焼土の熱残留磁化が過去の地磁気を記録する特性を用いて年代研究が行われている.一方,土器,陶磁器は,安定な磁化を持つが,焼成後に移動するので地磁気方向の研究には,使えないとされてきた.しかし焼成時の水平面がわかれば,磁化から地磁気を復元できる.特に伏角が求め易い.本研究では,土器・陶磁器の破片について磁化(地磁気)伏角を求める精度良い方法を得て,年代・産地の研究に利用する.考古学に貢献する磁化研究を開発し,博物館・大学等に保管されている遺物破片を用いて研究を行う. 土器・陶磁器の破片試料として,富山県と富山市の埋蔵文化財センタの保管試料を利用させて頂いて研究を進めている.近世,平安時代の陶磁器資料では,焼土から求められている地磁気変化とよく対応する伏角が得られた.また金属製遺物でも,破片について土器陶磁器と同様な研究が可能であることを青銅製試料で示し,査読論文で成果を公表した. 複数種類の現代の盃について超伝導磁力計の非破壊測定を行った結果もまとめた.各盃グループ(2-4個)の伏角は揃ったが,グループ毎では大きく異なる種類があり,製作地(緯度)の違いが原因と考えられた.成果は学会で報告しており,論文集への投稿を準備している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土器・陶磁器は生成後に移動するため,残留磁化の偏角は不明になるが,伏角は焼成時の水平面がわかれば復元できる.本研究では,土器・陶磁器の破片から磁化(地磁気)の伏角を求め,年代・製法を探る研究法を開発する.現代の盃(複数の種類)の測定では.各盃グループの伏角は揃ったが,グループ毎の伏角が,他とかなり違う種類があった.検討により,製作地(緯度)の違いが原因と考えられた. 予定していた本研究で扱う資料の調査では,富山県内の教育委員会の協力で多くの情報を集めることができた.富山県の埋蔵文化財センタの土器・陶磁器の破片を利用させて頂く研究を進めており,磁力計に載せる治具の工夫等を行いながら測定精度を上げている.予察研究では,近世と平安時代の破片の磁化伏角から,従来焼土で示された地磁気変化とよく対応する結果が得られ,破片の磁化伏角から様々な情報を得ることが可能とわかった.金属製遺物でも,破片について土器陶磁器と同様な研究が可能であることを青銅試料で示し,査読論文で成果を公表した. また沖縄県久米島の遺跡出土の陶磁器片の研究では,磁化伏角と地磁気強度の研究から,資料は中国陶磁のものと示されていたが,伏角がバラバラな破片資料も多くあった.熱消磁を行った結果,戦禍の再加熱で新たな磁化が獲得されたものとわかった.成果は学会で報告し,論文集への投稿を準備している.また研究分担者の研究も順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
考古地磁気では土器や陶磁器は焼土より安定な磁化を持つが,焼成後に移動する為,地磁気方向の研究に使えないとされてきた.しかし焼成時の水平面がわかれば,磁化から地磁気を復元できる.本研究では,土器・陶磁器の磁化から地磁気を求める精度良い方法を得て,年代・産地研究に利用する. 研究資料の遺物破片について,富山県内では,県と市の埋蔵文化財センタ保管の破片試料を利用して研究を進めており,予察的に焼土で研究された地磁気変化とよく対応する伏角が得られた.今後,富山大学考古学教室の保管試料(立山町上末窯)と射水市教育委員会所有の破片試料も研究予定で,分担者と準備している.研究資料については,県外も含めて教育委員会,博物館等の情報を更に収集する.また金属製遺物の破片も対象とする.実測定を行いながら磁力計に載せる治具作成など測定精度を上げる改良も進める. 沖縄県の遺跡出土の陶磁器底部片の研究では,伏角と地磁気強度の研究から,中国陶磁のものと示された.今後も,東南アジアや中央アジアの貿易陶磁の資料について,磁化から年代・産地を求める研究を予定している.また考古地磁気研究が殆どない北海道の遺跡でも焼土の研究に成功し(学会発表),擦文土器の破片等での研究を準備している.併行して,土器・陶磁器の破片から,画像と磁化を合わせる解析により元資料を復元する研究も,分担者とのシミュレーションを進める.
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