研究課題/領域番号 |
23K17523
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
寺村 裕史 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (10455230)
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研究分担者 |
押鐘 浩之 大阪大学, 大学院薬学研究科, 特任准教授(常勤) (10727283)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | DNA分析 / 動植物遺存体 / 試料サンプリング / 食文化研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ウズベキスタン・サマルカンド周辺の考古遺跡から出土した動植物遺存体のDNA分析を軸として生物種同定を行うことで、紀元6~8世紀頃にどういった植物・動物が食べられていたのか、そして当時の人々の食文化がどのようなものであったのか、またその伝播経路について考察する。その目的を実現するために、発掘現場等でのDNA簡易迅速定量法や、考古資料に対する効率的なDNA抽出法に関して研究分担者と共同研究を実施し、海外の調査現場において分析化学の専門家でなくとも試料サンプリングを可能にする簡易的手法を実証することによって、生物種同定の簡便化に向けた基礎的研究にも取り組む。
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研究実績の概要 |
令和5年(2023年)9月に、ウズベキスタン共和国・サマルカンド市に所在するサマルカンド考古学研究所(以下、考古学研究所)と国立民族学博物館(民博側協定担当責任者:寺村)との間で、学術協力に関する協定を締結した。本研究は、その協定のもと調査・研究を実施したものである。 令和5年度は、協定締結後に現地(ウズベキスタン共和国、カフィル・カラ遺跡およびサマルカンド考古学研究所)において、実際の発掘調査現場での動植物遺存体の出土状況や、遺物取り上げ後の試料の保管状況等を確認した。その上で、共同研究先の現地研究機関の研究者と議論しながら、各試料の状態によって最適なサンプリング方法を検討し、日本に持ち出せる試料については正式な手続きを経たうえで持ち帰り、試行的に日本での分析を実施することとした。 具体的な試料としては、ニンニクや豆類、種子類をサンプリングした。また、カフィル・カラ遺跡においては、発掘調査中に第9調査区(Tr.9)において小規模な建物遺構が確認され、部屋の内部から胴部径約70 cm の大型の甕が据えられた状態で検出された。時期的にはイスラーム期の初期と考えられる。この甕の内部の土をサンプリングし、土中に含まれ採取できた植物遺存体に関してもサンプリングのうえ持ち帰りDNA 分析を実施することとした。現在分析の途中であり、その結果については次年度以降に報告する予定である。 また、これらの成果の一部を途中経過報告として、日本西アジア考古学会主催の『第31回 西アジア発掘調査報告会』において、協定先機関所属の研究者との連名で口頭発表をおこなった。またその発表内容に関しては、『第31回西アジア発掘調査報告会報告集 -令和5年度考古学が語る古代オリエント-』として刊行されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだDNA分析の結果は出ていないが、カフィル・カラ遺跡やサマルカンド考古学研究所において試料サンプリングし、現地の正式な許可を得て日本に試料を持ち帰ることができたことなどを鑑み、おおむね順調に進展している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
考古資料由来のDNA分析は微生物などの環境要因によるDNA 断片化が一般的であるのみならず、PCR を阻害し得る物質が多く含まれることも大きな障壁であった。調査隊では考古資料由来のDNA 分析に特化した改良型PCR 法を開発しており、本調査において採取した各動植物遺存体に最適化した形でDNA 分析を実施することで、生物種・地理的情報・年代情報といった生物情報の獲得を目指す計画である。 また、炭化している試料に関しては、従来はDNAの熱分解によりDNA情報の抽出は困難であるとされてきた。研究分担者の押鐘博士は、土器片等に残存する有機物から生物情報を抽出・同定する方法に関する研究実績も有しているため、そうした新規技術を援用しながら調査方法の開拓・実践を共同研究として実施する予定である。 そして最終的には、DNA配列解析によって家禽であれば系統、作物であれば品種まで同定可能であることから、その生物種が何処から来たのか(from)、何処へ伝播したのか(to)という伝播経路に対して科学的データを提供できることから、食文化に対する研究を通して東西交流の結節点としての古代オアシス都市の意義を再発見できる可能性を見出すことを目標とする。
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