研究課題/領域番号 |
23K17528
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分4:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
廣田 勲 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50572814)
|
研究分担者 |
岩松 文代 北九州市立大学, 文学部, 教授 (50382403)
片畑 伸一郎 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (80648395)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
|
キーワード | 民族植物学 / 矢 / 弓道 / 矢師 / 釣り竿 / 攪乱環境と竹文化 / レリクト植物 / 生態史 / 種内変異 / タケササ類 / アジア人とタケ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、過去盛んに利用されながら現在手つかずで残存する植物に着目し、遺伝情報を含む分布情報と歴史学・民俗学的情報を相互参照することにより、それを利用してきた人間集団の移動や文化の伝播過程を追跡するとともにその手法を確立することを目的とする。特にヤダケに着目し、各地の群落の遺伝情報と史料を統合することにより過去の日本の戦闘集団の分布動態を植物の履歴から再解釈し、文献にない史実へ接近する。本手法と近年大幅に整備されつつある遺伝情報を踏まえればさらなる応用が可能となり、人類の生存や移住に関わってきた植物分類群を対象とすれば、将来的には人と植物の関係史を人類史的視点まで拡大し考察できる可能性がある。
|
研究実績の概要 |
本研究で着目するヤダケの日本における分布を調べるため標本調査を実施した。京都大学総合博物館、大阪市立自然史博物館の標本庫のヤダケ標本270点(国内標本226点)を用い分布図を作成した。標本ラベルを調べたところ、少なくとも少なくとも26点が寺、23点が神社、3点が城にあり、標本の採取地に関して、住所や座標以上の情報があったもの全てに寺、神社、城の名前が明記されていた。また29点が15の島(1つの島は名前不明)で採取されており離島、特に陸地に近い無人島との関係性も窺うことができた。現地調査からもこれが窺うことができ、例えば琵琶湖の「多景島」はかつては竹島とよばれていたが、そこはヤダケの島であった。また彦根城でヤダケ群落の探索を行ったところ8つの群落を確認できた。1814年作成の地図には「矢箆竹(矢の軸に使われているタケ)」の記載があり、現在の群落と同じ場所にヤダケ群落が存在していたことがわかった。日本各地(5県23群落)からヤダケの葉のサンプリングを行い遺伝的解析を実施した。まずヤダケのクローン分析をするため、SSRマーカーの識別能力の検討を開始した。オクヤマザサとチシマザサで開発されているSSRマーカー10座について、PCRによる増幅の有無を確認した。その結果、4遺伝子座においてPCR産物を確認することができた。この4遺伝子座を用いてマルチプレックスPCR後にフラグメント解析を行った。その結果、1遺伝子座で多型性を確認することができた。一方、他の3遺伝子座については、非特異的な産物が多く増幅されていた。そのため、PCR条件のさらなる検討をするとともに、ヤダケを対象とした新たなSSRマーカーを開発することも必要である。文献調査も実施しており、地名、文化財、城郭の物資、中世の進軍経路、林野利用等様々な側面から文献、史料、古文書データベース等からヤダケの探索を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標本調査、現地調査、文献調査によって当初の仮説が正しそうであるというところまでは見えてきた。本年度は初年度であり、引き続きデータを蓄積する予定である。クローン分析についてはマーカーの有用性の検討を引き続き進める。
|
今後の研究の推進方策 |
ヤダケ群落のさらなる探索を行う。特に研究代表者が居住する岐阜市に存在する全ての群落の探索を目指す。これと地理的情報や歴史的建造物との関係性を検討し、ヤダケ群落の存立要因について検討をする。また豊富な文献が期待できる場所に存在するヤダケ群落については、当該地域に関連する網羅的な文献検索を実施しヤダケ群落との関連性を探索する。ヤダケの遺伝的解析も進める。場合によっては、新たなSSRマーカーの開発も検討する。
|