研究課題/領域番号 |
23K17550
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐藤 清隆 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30311319)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 経済ショックの波及 / 貿易建値通貨 / 海外現地法人 / 国際産業連関表 / 国際価値連鎖 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、国際価値連鎖(GVC)を牽引する海外現地法人の貿易建値通貨選択データを使用して、従来の経済ショック波及の実証分析を大きく発展させる、新たな研究手法を開発する。GVCを牽引する輸出企業の建値通貨選択は国境を越えた経済ショックの波及を左右する重要な要因であるが、多国籍企業(海外現地法人)の建値通貨選択データが公表されていないことが、実証分析を阻む原因となっていた。研究代表者が実施した過去4回の海外現地法人アンケート調査によって収集した所在国別・産業別・貿易相手国別の建値通貨データを活用し、国際産業連関表に基づく投入係数と組合せて、GVC下の経済ショック波及のメカニズムを分析する。
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研究実績の概要 |
本研究は、国際価値連鎖(GVC)を牽引する海外現地法人の「貿易建値通貨選択」データを使用して、従来のマクロ経済ショックの波及効果の実証分析を大きく発展させる、新たな研究手法を開発することを目的としている。具体的には、研究代表者が経済産業研究所(RIETI)で実施した過去3回の海外現地法人アンケート調査(調査対象:日系製造業海外現地法人約20,000社)によって収集した所在国別・産業別・貿易相手国別の建値通貨データを活用し、国際産業連関表における投入係数と貿易建値通貨比率によって、国際的な生産連鎖を通じた経済ショック波及のメカニズムを分析することを目指している。 2023年度の実績として、新たにRIETIで実施した第4回の海外現地法人アンケート調査のデータ処理を行い、その調査結果を2024年1月にRIETI Discussion Paper Series 24-J-002として公表した。今後、同アンケート調査データに基づいて日系海外現地法人の貿易建値通貨選択に関するデータセットを構築するが、2023年度中はその準備作業を完了したことになる。また、国際産業連関表についても、世界29カ国の産業別生産者物価指数を用いて、実質国際産業連関表を独自に構築している。同データを基に投入係数を算出し、貿易建値通貨選択を考慮した、経済ショックの波及メカニズムに関する分析を行う。 また、財務省の輸出入申告統計に関する公募プロジェクトの研究成果として、共著論文を2024年2月にNBER Working Paper 32142として公表した。また、本研究課題と関連する研究成果として、単著『円の実力:為替変動と日本企業の通貨戦略』(慶應義塾大学出版会)を2023年12月に出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、(1)国際産業連関表より産業間の投入係数を算出し、(2)独自に収集した日系現地法人の貿易建値通貨比率を算出し、(3)独自に収集した世界29カ国の産業別生産者物価指数を用いて、国際的な生産連鎖の過程で経済ショックがどのように波及するかを分析する。 国際産業連関表については、OECDのICIO Tableに基づいて、研究代表者は「アジア国際産業連関表(YNU-GIO Table)」を構築し、Web上で公開してきた (http://www.recessa.ynu.ac.jp/database/ynu-gio/)。2023年度に、このYNU-GIO Tableを実質表へと拡張した。内生国の産業別生産者物価指数を用いて実質化したYNU-GIO Tableを基に、投入係数を独自に算出する準備ができている。 貿易建値通貨のデータは、経済産業研究所(RIETI) の研究プロジェクトの一環として、日系海外現地法人アンケート調査(世界の約20,000社対象)の第4回調査を実施したが、そのデータ処理を進めて、第4回の海外現地法人調査の結果概要をRIETIのDiscussion Paperとして公表した。2023年度はこれらの基礎データの収集・処理に時間を費やした。 今後の研究では、これらの基礎データを活用して、貿易建値通貨のデータセットを構築する。具体的には、国際的な生産連鎖の過程で、海外現地法人と日本本社企業との間で、あるいは海外現地法人間の取引の間で、中間財や最終製品の輸出・輸入がどの通貨建てで行われているかの情報をデータベース化する。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(2023年度)は国際産業連関表や海外現地法人のアンケート調査などの基礎データの整備に取り組んだ。これら基礎データを用いて、2024年度は日系海外現地法人の建値通貨選択のデータセットを構築し、国際産業連関より投入係数を算出することで、経済ショックの波及に関する実証分析の手法を確立する。実証分析の結果を2024年度中にまとめてWorking Paperを作成することを目標とする。その後、2025年度には国内外の学会やWorkshopで研究成果を発表する。また、経済ショック波及の決定要因の分析も行う計画である。GVC参加率(当該国がどの程度GVCに加わっているか)、GDP成長率等の経済変数を用いたパネル推定によって分析を進める。研究成果を査読付き国際ジャーナルに投稿することを最終目標とする。
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