研究課題/領域番号 |
23K17555
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
茂木 快治 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (60742848)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | 計量経済学 / 時系列分析 / Mixed Data Sampling / 閾値効果 / 閾値自己回帰モデル / Midastar / ワイルド・ブートストラップ法 |
研究開始時の研究の概要 |
閾値変数と目的変数が互いに異なる観測頻度を有するとき、既存の統計モデルを当てはめるためには観測頻度の高い方を低い方へと揃えなければならず、本来存在しているはずの閾値効果を見落とす恐れが生じる。本研究の目的は、閾値変数と目的変数の観測頻度が互いに異なる状況でも高精度で閾値効果を検出することである。この目的を達成すべく、Mixed Data Sampling (MIDAS)とthreshold autoregression (TAR)を融合させたMidastarモデルを提案する。Midastarにより、様々な学術領域においてこれまで見落とされていた閾値効果が検出される可能性がある。
|
研究実績の概要 |
令和5年度は、目的変数が低い頻度、閾値変数が高い頻度で観測される場合の閾値効果のモデル化と検定に取り組んだ。目的変数と閾値変数の観測頻度が揃っている場合は、閾値自己回帰モデル(Threshold Autoregression; TAR)というよく知られた時系列モデルを使用すればよい。目的変数と閾値変数の観測頻度が互いに異なる場合は、観測頻度の高い方を低い方に揃えてからTARモデルを当てはめるのが通例となっている。そのような時制集約は情報の損失を招き、統計的推論の精度を低下させる。特に、もともと存在している閾値効果が時制集約によって見かけ上消失してしまうという現象は、見せかけの非閾値効果(spurious non-threshold effects)として知られている。 複数の観測頻度が混在する状況下で、時制集約を避けつつ統計分析を構築する手法は、マイダス(Mixed Data Sampling; MIDAS)と総称される。令和5年度は、MIDASの着想をTARに応用し、マイダスタール(Midastar)という新たなモデルを定式化した。Midastarは、低い頻度で観測される目的変数と高い頻度で観測される閾値変数について、時制集約を伴わずに閾値効果を捕捉できる。つまり、Midastarを用いることで、見せかけの非閾値効果を回避することが可能となる。これは経済・金融データの変動メカニズムの解明や将来予測の精度向上に資する有益な貢献である。Midastarの定式化を行った後は、パラメータの推定や仮説検定の手順を組み立てた。閾値効果が存在しないという帰無仮説を検定する際は、帰無仮説の下で識別不可能なパラメータが存在するため、ワイルド・ブートストラップ法を用いて検定を構築した。以上の研究成果を3件の国際カンファレンスで報告し、次年度へとつながる有益なフィードバックを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の計画どおり順調に進行中である。低頻度の目的変数と高頻度の閾値変数の組み合わせについて、独自の時系列モデルであるMidastarを定式化できたことは有意義な研究成果である。Midastarに基づく推定・検定の手順も固まり、次年度の理論的・数値的・実証的な検証作業の見通しも十分に立っている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、Midastarモデルの優秀性を多角的に示すことに注力する。第一に、Midastarに基づく推定と仮説検定が、いくつかの前提条件の下で統計的に望ましい性質を有することを数式展開によって証明する。第二に、現実的な設定の下で、Midastarに基づく推定・検定が既存のTARモデルに基づく推定・検定よりも高い性能を示すことを、数値実験により確認する。第三に、現実の経済・金融データにMidastarとTARの両方を当てはめ、標本内予測と標本外予測の両面でMidastarがTARを優越することを示す。具体的には、月次の原油市場の実現ボラティリティ(realized volatility; RV)を目的変数、日次のボラティリティ指数(Volatility Index; VIX)を閾値変数とする実証分析を行う予定である。日次のVIXをそのまま用いるMidastarは、時制集約された月次のVIXを用いるTARと比べて、標本内予測・標本外予測の両面で高い性能を示すと予想される。 これらの研究成果をまとめた学術論文は、国内外のカンファレンスやセミナーで報告するとともに、査読付き英文学術雑誌へ投稿する。
|