研究課題/領域番号 |
23K17568
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 福知山公立大学 |
研究代表者 |
大門 大朗 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (20852164)
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研究分担者 |
宮前 良平 福山市立大学, 都市経営学部, 講師 (20849830)
王 文潔 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助教 (10913270)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 防災行動 / 防災意識 / 防災環境 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、防災「意識」から防災「環境」へと発想を転回する「防災環境論」を構築することである。目的の達成に向け、行動と意識に関連した国内外の研究の体系化を行い、防災意識と行動のパラドキシカルな関係を批判的な視座から捉えた理論構築を行う。また、防災環境の不備を災害弱者を含む地域コミュニティ全体で確認し、対応策を話し合うためのツール(カルテ等)を開発し、環境防災論の社会実装まで行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、防災行動の失敗要因が防災「意識」ではなく「環境」にあることを突き止め、独自の「防災環境論」を構築することを目的とするものである。本研究は、①国内の意識と防災に関する文献研究と理論構築、②米国の文献研究および国際間の比較研究、③防災環境論に基づいた防災実践の社会実装の3つの研究からなる。 初年度は、主に、研究①を推進し、その成果について積極的に発信した。具体的には、防災研究を主に扱う国内誌から、日本における防災・意識に関する文献を整理・体系化した。特に、国内の「防災意識」用語の研究を深めるために、新聞記事(読売新聞1300件、朝日新聞1281件)のテキストマイニングの実施、国内の「防災意識」に関連する2010~2020年の文献1296件のレビューを実施した。さらに、防災意識の理論的実践的脆弱性を指摘し、「ナヴィゲート理論」「生態学的アプローチ」として整理した。 加えて、研究②、③に関する研究についても前倒しで一部実施した。研究②では、国外の防災行動に関する論文について整理し、302文献についてレビューを実施し、国内外の要因の違いとして整理した。また、研究③については、防災環境論に基づいた地域防災の実践について関西圏のAおよびB地域を対象にパイロット調査を行った。A地域では、地域防災の実践に関わるNPO職員への聞き取りや定期会議に参加し、防災まちづくりについて知見を得、B地域では、災害時の要配慮者や障害者の取り組みについて行政機関・支援組織へのヒアリング、活動参加を行い、社会実装のための関係づくりに取り組んだ。 以上の研究実績について、学術論文(Natural Hazards Review, Natural Hazards)、学会発表(日本自然災害学会)において成果発信するとともに、市民向けのセミナーやワークショップにおいて一般向けにも広く成果発信した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主に研究①と②を重点的に取り組んだ。研究①では、国内の論文496件についてレビューした結果をもとに2つのアプローチからの理論的整理を実施した。1つ目の「ナヴィゲート理論」のアプローチからは、定義、理論、多分野性・多次元性の観点から日本国内の論文を、2つ目の「生態学的アプローチ」からは、認知、環境、行動の要素から抽出し、認知7要素・環境13要素が相互的に関連することで行動に影響を与えていることを指摘した。研究②では、すでにレビューした302件の国際論文から、同様にして認知8要素、環境12要素を抽出し、国内との要素の比較を実施した。その中で国内において特徴的な要素・語である「防災意識」という語について更に新聞記事の内容をテキストマイニングし整理した。読売新聞・朝日新聞の頻出語および発行年での対応分析からは、阪神・淡路大震災の影響が強く見受けられることが明らかになった。上記の研究レビュー結果は、学会誌および学会発表で発信し、比較研究およびテキストマイニングについては現在成果を取りまとめている。 また、社会実装を行う研究③については、2地域でのフィールド調査を開始した。第一のA地域では前出のNPOを中心とした、防災事業から災害時の具体的な支援計画づくりへの移行過程を観察し、防災事業を中心に近隣地域と連携する具体案について情報収集を、第二のB地域では、行政および障害者支援組織、福祉関連担当者へのヒアリングや現場調査、避難訓練などへの参与観察また、研修会の実施を通して、関係構築を行った。 以上を踏まえ、防災環境論の理論的・実践的構築に向けて初年度の研究進捗については、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は、研究②の取りまとめを行い、研究③を更に進展する予定である。具体的に、研究②では、すでに実施している国際文献研究に加え、国際間の比較研究として、デラウェア大学災害研究センターが所持する災害専門の図書館を利用し、防災行動に関する文献調査およびAFN(アクセス・ファンクショナル・ニーズ)などの防災環境に関する文献のレビューを行う。さらに、日本における特殊用語「防災意識」の意味内容について巨大災害(阪神・淡路大震災等)の前後の変容についてさらに詳しく分析を加える。上記を踏まえて、国際比較を行い、アフォーダンス等の社会心理学の理論に紐づけながら、体系的な理解を深めることとする。また、研究③においては、A地域とB地域を主な対象として、災害時支援計画に向けて検討内容、人員体制の整備、必要な支援環境について、ワークショップや企画会議などに参加し、議論のプロセスを把握する。次年度は、特に、計画づくりにおける住民や外部有識者の関わり方、避難所以外の想定被災者への支援案を把握することを目的に調査を進める。さらに、内閣府「個別避難計画作成モデル事業」などの採択自治体などにヒアリングを行うなどして、防災環境において必要な要素や課題について、明らかにする。これらの成果を踏まえ、A・B両地域において、現地の人々と恊働しながらアクションリサーチを実施する。
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