研究課題/領域番号 |
23K17573
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分8:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
樫田 美雄 摂南大学, 現代社会学部, 教授 (10282295)
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研究分担者 |
真鍋 陸太郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30302780)
岡田 光弘 成城大学, 文芸学部, 非常勤講師 (30619771)
堀田 裕子 摂南大学, 現代社会学部, 教授 (10712226)
加戸 友佳子 摂南大学, 現代社会学部, 助教 (50849370)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 治療中心主義批判 / エスノメソドロジー・会話分析 / ウオーカブルな街作り / 介護保険 / リハビリテーション / 生活学 / 都市工学 / フィールドワーク / 生活社会学 / ショッピングリハビリ / 感受性の向上 / モノとの連携 |
研究開始時の研究の概要 |
現代の保健医療社会学の課題は、どうやって療養者に生活の豊穣性を回復してもらい、かつ、それを学問的に定位していくかということにある。本科研研究は、この困難な課題に対して、「ショッピングリハビリ」という民間での介護保険サービスの発想(生活実践の中でのリハビリ)が有用であると考えて構想されたが、単なる学術調査ではない。この新規性のある目的を達成するため、研究者もまた、「狭量な目的意識の桎梏からの解放」を訓練されるべきだ、と考え、東京大学の都市工学研究室で実践されている「街歩き」活動を体験することで、発想力を鍛えた研究者が、「ショッピングリハビリ」の分析に挑む二段構えの活動を行うこととした。
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研究実績の概要 |
本研究は、保健医療社会学の領域に生活社会学的観点を導入するための研究者訓練法(生活の多面性と相容れない学問的課題意識から解放されるための方法)の検証を、実際の研究を通して行おうとするものである。 「ショッピング・リハビリ」とは、要支援1,2程度の介護保険利用者が、閉鎖空間でのお仕着せの「リハビリ」に満足してないことから発想された新しい介護保険サービスである。それは、全体重を掛けても倒れない「楽々カート」で「買い物をしながらの歩行実践」を行うものである。本研究は、この全国に拡がりつつある取組みが、利用者の生活をどのように豊穣化しているのかを探究する企画であるが、同時に、生活という多面的なものの豊穣性を捉える為に、研究者自身の感受性を向上させる試みでもある. 令和5年度は,この2つの目標を効率的に同時達成する工夫を行った.第一に,元々の「ショッピングリハビリ」が,介護保険制度の一部であった所を,その制限を外して,都市環境と住民のつながり全般を検討するようにした.第二に,研究者の感受性をUPさせる街歩きの取組に,障害者(歩行障害,感覚器の障害等がある20代の会社員)に複数の調査に同行してもらうことで,感受性の多様性を意識しながら,そのそれぞれをUPするように促す仕組みを導入した.具体的には,2023年10月には,都市空間の在り方に関するジェイコブスの映画を見た後,秋葉原近郊を東京大の院生にも参加してもらいながら街歩きをした.また,2023年11月には,神戸市で開催されていた「下町芸術祭」の現場を,障害者の方と共に街歩きした.又,ショッピングリハビリの会場となっていないスポーツ用品店での「楽々カート」の運用や,市中病院内での「楽々カート」の運用実験も行った.更に元々の企画である「ショッピングセンター内」での「楽々カート運用実験」も行った.生活の豊かさ研究として文学研究も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4箇所の研究協力者(この欄は公開されるので氏名は秘匿する)の好意溢れる支援によって,予想以上に研究が進捗している.第一に「秋葉原近郊街歩き」においては,街というものがもっている多様に変化しながら魅力を高めていく可塑性がよく感受された.第二に,大型スポーツ用品店においては,「楽々カート」の運用実験をになってくれた障害者の方が,調査に深くコミットして下さったおかげで,「スポーツウエア」がにあうかどうかの判別活動に関して詳細な動画収録ができた(分析中).第三に,某市中病院では,地域ケア科部長の特別の御配慮で,外来がおわったあとの土曜日の午後に2時間以上の「楽々カート」の運用実験を行うことができ,「誰でもトイレ」内での,「楽々カート」をもったままの向き変更が,中小型エレベーター内での方向転換と同様のテクニックを用いてのものであることなどがわかった.第四に,地方の「ショッピングリハビリ」営業所の代表のご好意によって,「楽々カート」の運用の背景にある,人々の生活の豊かさに関するインテンシブなインタビューが可能となった.たとえば,ある80代の女性の方は,歩行能力を維持するために,地域の温泉に毎日歩いて入りに行っていたが,その活動を支えていたのが,手押しカートであった.このような活動が長期間維持可能なのは,単に個人の意思の強さの問題ではなく,地域に生活の豊かさそのものとしての温泉入浴文化があることであるという見通しを,インタビューから得ることができた.さらに,「生活の豊かさ」を幅広く感受するために,文学や映画から学べるものがあるはずだ,という観点で,随時映画をはじめとする芸術作品鑑賞会や,文学作品批評会を開催することにした.そのような方向性を明確にイメージ化するために,学会発表(演題は「『走れメロス』の社会学」)や,論文執筆(タイトルは「『走れメロス』のシン・社会学」)を行った.
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今後の研究の推進方策 |
(1)日本生活学会に参加■令和5年度の活動によって,我々の研究目的を叶えるためには,日本生活学会に参加し,そこに蓄積されている「生活学」の知見を活用していくべきであるという見通しがえられた.したがって,令和6年度より,日本生活学会に参加し,令和7年度には,理事会と相談しながら,「楽々カート」の運用実験をもとにしたシンポジウムの実現を目指して行きたい. (2)生活の豊かさに焦点を当てた調査の継続■「試着」だけでなく「化粧」にまで進んで,生活の豊かさと広い意味での買い物(サービス利用まで含む)との関係を考えて行きたい.この目標を,一方では,眼鏡型カメラ(EP8)を多用する動画撮影調査で叶えようとしつつ,もう一方では,インテンシブなインタビュー調査で叶えて行きたい. (3)中間的総括としてのいなべ市役所と共催の形での「ウオーカブルな街作りシンポジウム」の開催■三重県いなべ市とは,住民の健康作りに関するさまざまなイベントを今後共同で進めていく流れになってきているが,令和6年度中には,「ウオーカブルな街作りシンポジウム」(仮題)を,現地で開催したいと考えている.その場で,商業者だけでなく,研究者と行政と市民も加わった形で,地域づくりの可能性を考えて行きたい. (4)文献,関連映像および関連調査データの再把握と活用■樫田研究室には,これまでの四半世紀にわたって収集されてきた,数多くの生活の社会学関連の書籍・論文があり,また,調査記録データが存在している.これらを,できるだけ検索が容易になるように電子化し,ラベル付けをすることで,生活の総合性を研究の中に取り込んでいきたい.たとえば,これまでの在宅医療や福祉施設での生活に関する調査データから,そこで暮らす人々がどのようにして,自らの暮らしの独自性を,(画一化を迫るものとしての)医療から守ろうとしたのか,を明らかにしていきたい.
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