研究課題/領域番号 |
23K17605
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
白水 始 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 総括研究官 (60333168)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (10238355)
益川 弘如 聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (50367661)
辻 真吾 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (80431823)
石井 英真 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (10452327)
飯窪 真也 国立教育政策研究所, 初等中等教育研究部, 客員研究員 (40609971)
齊藤 萌木 共立女子大学, その他部局等, 専任講師 (60584323)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 知識 / ビッグアイデア / 単元 / 協調学習 / 知識構成型ジグソー法 / 単元マップ / 学譜システム / big ideas |
研究開始時の研究の概要 |
資質・能力の育成をコンテンツの深い学習を通して実現していこうとする試みが世界標準となっている。そのためには個々の事実的・手続き的知識を統合・包摂する概念的知識を教員が理解し、児童生徒の獲得・構成を支援できる必要がある。しかしこれらの知識は抽象度が高く、捉え難い。そこで本研究では、各授業での学習から長期的にどのような知識の構成が期待され、実際に児童生徒は構成し得るかについて、教育内容と学習過程が可視化された「単元マップ」を開発し、教員も学習者も学習指導要領策定者も協調的に吟味できる支援を行う。効果は多様な学校・児童生徒対象に検証する。
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研究実績の概要 |
豊かな内容知識は、コンピテンシー(資質・能力)育成の潮流に押されて教育目標として軽視されがちだが、知識は本来、思考力等を用いて主体的に構成され、より充実したコンピテンシーの発揮を可能にするものである。コンピテンシーの育成をコンテンツ(内容)の深い学習を通して実現していくには、個々の事実的・手続き的知識を統合・包摂する概念的知識を教員が理解し、児童生徒の獲得・構成を支援できる必要がある。しかしこれらの知識は抽象度が高く、捉え難い。そこで本研究では、各授業での学習から長期的にどのような知識の構成が期待され、実際に児童生徒は構成し得るかについて、教育内容と学習過程が可視化された「単元マップ」を開発し、教員も学習者も学習指導要領策定者も協調的に吟味できる支援を行う。 本年度は、学習指導要領の単元に「主体的・対話的で深い学び」を実現する教材をリンクした単元マップを開発した。マップは、指導要領解説の内容構成図の概念を軸として、「知識構成」を狙った約3千の授業を単元にリンクし、単元間の関係等の教科知識の構造と児童生徒の学習過程を照合できるようにした。マップは64名の教員対象ワークショップをはじめ、725名の教員の日常的な授業づくりに活用可能にし、教員が児童生徒の概念的知識の構成プロセスを効率的に支援できるようになることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は教育の世界に「知識」を取り戻すべく、学習指導要領の単元に「主体的・対話的で深い学び」を実現する教材をリンクした「単元マップ」というウェブシステムを開発・活用・評価することを目的とする。この単元マップの開発を【システム開発班】、教育現場における学校教員・児童生徒対象のシステムの活用・評価を【現場実践班】、活用結果を基にした学習指導要領検証・改訂への貢献を【教育政策班】で行う。以下2023年度の進捗状況を班ごとに報告する。 【システム開発】小中高の全教科の指導要領解説に掲載されている「内容構成図」と、主体的・対話的で深い学びの実現を目指す「知識構成型ジグソー法」の実践済み3024教材とを単元単位で紐づけた単元マップを作成する。単元マップは、社会・地歴公民、算数・数学、理科が作成済みのビューワーに、国語を新規に追加した。また、一部教科の単元に学習指導要領の解説ページを埋め込んだ。今後の方針として、ネットワーク型マップのエディターとメーカーを統合して一つのシステムとして開発することとした。 【現場実践】学習科学プロジェクト参加教員の725名が登録する授業研究プラットフォーム「学譜システム」に単元マップを掲載して、授業改善など日常的活用への普及効果をモニタリングした。また、そのうち64名の教員にはオンラインでのワークショップを7月に行った。その結果、2022年度33授業の授業づくりに掛かった時間の平均15.3時間から2023年度84授業の平均は9.7時間と36.5%の短縮効果が得られた。加えて、算数・数学専門の教員5名と共に乗法・除法の一体的理解を可能にする教員研修のデザインを協議した。 【教育政策】ビッグアイデアを重点的に獲得・構成させた実践の学習転移の効果に関するレビューを行った。知見は、文部科学省や中教審の関連会議・部会を通じて、指導要領改訂に関わる研究者・有識者に提供する準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定を班ごとに記す。 【システム開発】単元マップのビューワーに外国語(英語)を追加する。代表者・分担者辻・齊藤・飯窪が教材の再分類や関連付けによる新規な発見を可能にし、教員自らの教授、及び児童生徒自らの学習過程に基づくマップ作成も可能にするエディターの設計指針を策定、開発を委託する。また、現在教科書ベースで進めている国語・英語のマップ構成を概念や技能など、何らかの「柱」で構成する原理・方法を検討する。 【現場実践】2023年度同様の約100名の教員対象の集合研修、新規に各自治体教員対象の研修を計5回実施し、単元マップの普及を図る。さらに研修に連動した児童生徒対象のマップの閲覧・作成実証実験を「総合的な学習/探究の時間」等で行い、「なぜこの教科でこの単元を学ぶのか」「大事なビッグアイデアは何か」など学習者が自身の学習過程を協調吟味し、次の学習に役立てられるかを検討する。 【教育政策】以上の成果をすべてまとめて国内外の学会で発表、論文化を行い、次期学習指導要領諮問資料への反映を目指すなど、研究面からの政策への貢献を果たす。
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