研究課題/領域番号 |
23K17613
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分9:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
後藤 賢次郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (10634579)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 市民育成 / 教科横断 / 教師教育 / 教員研修 / 言葉・概念の捉え方 / 市民育成・市民性教育 / 言葉・概念 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,市民性教育に関する 「言葉」と「概念」について,社会科と他教科の研究者,現場教師との間で共有できていることと齟齬,及びその要因の解明と,「市民性教育の担い手」としての教師を育成する教材と教員研修プログラムを開発を,調査,考察,開発・発信パートを設け,推進していく。本研究の意義は,調査対象者に市民性教育に関する言葉,概念の理解,洞察をもたらし,市民性教育者としての自覚と多様な分野・領域を跨いだ共同・連携を促進が期待できることである。それにより,教科教育学研究・実践における汎用性・一般性と一教科の専門性・固有性との関係をめぐる問題への示唆が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究課題の「研究の目的」と「研究実施計画」に基づき,「調査パート」である令和5年度は,1)教科横断的な市民育成についての先行研究・実践の問題提起的な発表及び論文・書籍化,2)教科横断を視点に教職大学院の研究報告会に参加し情報収集を行い,以下の成果を得た。 1)については,同年10月,全国社会科教育学会(岡山大学)にて「教職大学院における規範的・原理的研究の活用-社会科教育の本質を議論することの意義と課題-」の題目で,他教科の院生が受講する科目で社会科の本質を議論することの意義と課題について発表した(指名)。また令和6年3月,「ガチ学びにおけるSTEAM教育実践のためのポイント-教師のリフレクションを通して-」の題目で口頭発表を行った。本発表は,他の科研費研究(研究代表者:豊嶌啓司)の一環で行われたものであるが,特にSTEM科目とA科目の関係に焦点を当て,教員研修を想定したアクティビティを提案することができた。論文・書籍については,現場教師の藤森啓太氏との共著「イメージマップ作りを通した市民育成に関する調査(1)-小学校国語科教師を対象に-」において,国語科教師の市民育成観の特質を明らかにすることができた。そして,「認知構成主義的なアプローチと社会構成主義的なアプローチ,普遍主義的なアプローチから見た市民像の実相」(『社会系教科の評価をめぐる理論と実践』風間書房)において,今日の教育研究・実践で主要な3アプローチの意義と課題を市民育成の点から考察した。これらは,市民育成に関する教科横断的な調査を進める上で,また現場教師を交えた研修教材やプログラムを開発していく上で重要である。 2)については,複数の教科の研究発表があることから立命館大学,弘前大学,佐賀大学の教職大学院研究発表会に参加し情報収集を行い,本研究課題に関わる論点を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3カ年に渡る本研究課題は,調査パート,考察パート,開発・発信パートの大きく3パートを設け,推進していく。 このうち,調査パートである令和5年度は,「研究実績の概要」でも述べたように,研究代表者が関わる先行研究実践についてのアウトプットを進め,本研究課題の成果を高める経験とノウハウを得た。しかし,個人を対象にした調査に関しては,「スノーボールサンプリング法」の起点となる研究者,現場教師には調査協力の内諾を得たものの,スケジュール調整が困難で年度内に調査が実現しなかった。 ただし,各大学の教職大学院の研究発表会に参加し,情報収集を行うことで,教科横断的に市民育成をしていく上で課題となりそうな論点を見出すことができた(今後の研究の推進方策参照)。今後は調査を急ぐとともに,その論点を調査内容に反映することで,調査結果の質を向上していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後,本研究課題は考察パート,そして開発・発信パートへと進む。このうち,考察パートである令和6年度は,令和5年度の研究の成果と研究実施計画に基づき,引き続きデータを収集しつつ,収集したデータの分析によってその形成要件及び形成過程の究明を中心に行う。その際,1)市民,社会,社会科を中心とした言葉,概念の他,令和5年度の成果で得られた以下を調査内容に反映する;教育委員会との連携,または教育行政から要請される言葉(主体的対話的で深い学びの実現など)の解釈の違いが各教科に見られること;教育方法学や学習科学への関心と教科の特質への関心の強さによって,横断的な議論がしやすかったり難しかったりすること;一方向的な理論と実践(研究者・教育行政と院生・現場教師)の関係がしばしば見られたこと。2)以上について,「個」の独自性を追求することで全体の本質に迫ろうとする「PAC: Personal Attitude Construct(個人別態度構造)分析法」を用い,収集した市民育成のイメージマップの形状や構造(ネット状/ツリー状に連なった言葉まとまりは,どのような言葉によって形成されているか)に注目し,調査対象者と研究代表者との相互的な解釈を通して,市民育成観の特色を抽出し,モデル化する。
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