研究課題/領域番号 |
23K17646
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
岡ノ谷 一夫 帝京大学, 先端総合研究機構, 教授 (30211121)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | クオリア / 聴覚 / 局所電場電位 / トリ / ラット / ミスマッチ陰性電位 / オペラント条件づけ / プロクラステス分析 / 意識 / 聴覚クオリア / 音声 |
研究開始時の研究の概要 |
心の要素であるクオリア研究の多くはヒト視覚の神経対応を探るものに限定されており、主観性や進化的連続性に踏み込めていない。本研究は、1)聴覚クオリアを刺激の空間布置として測定し主観・脳活動比較を可能にする、2)聴覚刺激の利点を活かし覚醒度を操作したクオリアを比較する、3)鳥類、齧歯類、ヒトを対象とし種特異性と普遍性を調べる、ことを目的としている点が挑戦的である。楽音と単音節発声とを刺激として、前者により聴覚クオリア空間の普遍性を、後者によりその種特異性を計測する。オドボール課題による行動潜時とミスマッチ陰性を空間配置し聴覚印象空間の差異を比較する。本研究はクオリア研究を生物心理学として刷新する。
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研究実績の概要 |
クオリアとは刺激への主観的な感じ方のことである。クオリア研究はこれまで、視覚刺激に対するヒトの心理物理的計測とその神経活動相関に限定されていた。本研究は、聴覚刺激の関係性を行動と脳のレベルで計測することでクオリアに座標軸を与える。複数動物種の聴覚クオリアを比較することによって、その生態学的適応性を比較し、睡眠・麻酔によりトップダウン処理を操作して、クオリア空間への影響を検討する。 令和5年度は、ヒト、トリとラットの脳波・局所電場電位を計測する技術開発を行った。ヒトについては、脳波計により音列のミスマッチ陰性電位を記録することができた。トリについては、頭蓋上に固定する無線脳波計測器を使って、音の提示に伴う局所電場電位を計測することができた。ラットについても同様な装置により、局所電場電位の計測に成功した。さらに、ヒトについては、動因操作のない状況での効果的な刺激提示法を工夫した。トリとラット双方について、自由行動下でオペラント条件づけを施しながら音声刺激を提示して、局所電場電位の計測を可能にするシステムを作成した。このシステムの電気的ノイズを落とすこと、刺激提示に伴う電気的ノイズを落とすこと、および刺激の多様性についての検討を進めた。 行動データと脳波データを比較する方法として、プロクラステス分析により両者の空間渕を対応させ、そのずれを補正するのに必要な情報量を検討した。具体的には、事象関連電位の潜時と電圧が指標となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で説明したとおり、ヒト、ラット、トリともに基本的な電気生理学的手法と行動学的手法を確立することができた。また、分析手法についてもプロクラステス分析がこの課題に非常によく合致することを発見し、実験と分析を継ぎ目なく連結するパイプラインを構成中である。
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今後の研究の推進方策 |
局所電場電位および脳波の計測の基本手法は確立し、動物のオペラント条件づけの手法も確立したので、今後はデータ量を増やすことを中心として研究をすすめる。また、生理実験で得られたクオリア空間と行動実験で得られたクオリア空間との対応づけ技術をさらに刷新する。加えて、動物については麻酔を用いたクオリアの変形を計測することを試みる。
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