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任意波形磁気共鳴と磁場方向スイッチングによる新しいスピン操作と反応制御

研究課題

研究課題/領域番号 23K17662
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分13:物性物理学およびその関連分野
研究機関埼玉大学

研究代表者

前田 公憲  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70229300)

研究分担者 長嶋 宏樹  埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (60814027)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
キーワード電子スピン / 反応収量検出磁気共鳴 / ラジオ波 / 電子スピン共鳴 / 磁場効果 / スピン / 任意波形発生装置 / 量子制御 / RYDMR
研究開始時の研究の概要

本研究ではラジカル対の化学反応に対するスピンコヒーレンスの利用に着目し,複雑なコヒーレンスを操作し制御する方法論の確立を目指す.
そのために(1)任意波形ラジオ波照射による反応操作とそれによるスピン相関の時間分解観測,(2)パルス磁場を駆使した磁場方向スイッチングによるスピン系のコヒーレント操作とその応答の実時間観測,(3)これらを測定をしつつ,制御理論や機械学習などの新しい計算方法の開発や,実験時におけるリアルタイムフィードバック波形制御へのチャレンジ,などを行う.従来の実験結果を解釈するための理論ではなく,スピンを操作して化学反応を操作しようとする着想自体が挑戦的かつ萌芽的である.

研究実績の概要

すでに、ラジオ波による反応制御にトライする測定をすでに実施した。タンパク質中でのラジカル対、ミセル溶媒中のラジカル対において、すでに興味深い結果が得られた。任意波形発生装置を用いた、チャープ型パルス照射による化学反応に対する効果が、顕著に表れることを見出した。その一つはチャープRFパルスによる磁場掃引反応収量検出ESRスペクトルが、時間とともにシフトする事を観測することが出来、また周期的なチャープパルスを利用する事により、単周波数型の従来の化学反応収量検出ESR(RYDMR)と比べて著しく強い信号を得られることを確認した。この効果は、低磁場効果の領域まで及んでおり、チャープRFが極めて有効にスピン状態のミキシングを誘起している事を示している。これによりチャープ型パルスが多数の超微細結合状態とアクセスして、スピン選択的化学反応に影響する事を確認した。
パルス磁場を用いた測定も大きく進展した。低磁場効果の原因となるスピンダイナミクスと磁場スイッチングの寄与との関連を調べた結果、磁場スイッチング実験の結果が電子スピン系のデコヒーレンスに極めて敏感な応答を示すことが明らかとなった。しかし、低磁場効果はスピン運動の有無にかかわらずにある程度は観測されることが同時に明らかとなり、スイッチング実験はスピン系のコヒーレントなダイナミクスにアクセス可能な有効な手法であることも明らかとなった。
上記の2つを極めつつ、さらに化学反応の異方性との関連を電子スピンコヒーレンスの観点からより明らかにしていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究はAWGを用いた化学反応制御、ナノ秒磁場パルスを用いた測定の両面から低磁場領域での電子スピンダイナミクスとその化学反応との関連を調べるものである。初年度において、RFによる実験、ナノ秒磁場パルスによる実験システムがほぼ完成している。特にRFによる実験においては、AWGの応用の一つであるチャープ型ラジオ波を用いて、従来の単色がたの低磁場反応収量検出ESRを超える電磁波による化学反応制御観測に成功した。特に定常磁場による磁場効果とRF効果の測定を同時に行う事が出来た為、反応の低磁場効果、高磁場効果とそれに対するRFによる効果の双方を定量的に見ることが出来た。特にある比較的高磁場領域における、チャープRFによるスピンミキシングの増強効果が、低磁場効果領域に及んでいる事は、特筆に値する。パルス磁場による効果の測定も順調であり、多数の反応系における低磁場効果に対する逆磁場スイッチングから、低磁場領域でのスピン混合プロセスがどの程度コヒーレントに起こっているのか?という問題に迫りつつある。このように、それぞれのタイプの測定において、独立した重要な知見が得られており、理論的な考察やシミュレーション等を進めている。

今後の研究の推進方策

RFパルスの実験と、AWGラジオ波による実験はどちらも低磁場領域でのスピンダイナミクスにせまる研究であり、それぞれにおいて関連した有力な情報が得られている。
今後サンプル等を交換して、両方の手法による測定から、関連性やスピンダイナミクス特にスピン系のコヒーレンスおよびデコヒーレンスについて、より詳細な知見を得ることを求めていく。同時に、コヒーレンスの直接観測を目指して、ドイツのLambert教授によるパンププッシュ測定用のサンプルの提供を受けている。現在それを用いつつRFやパルス磁場の効果を観測する手法を目指して、サンプル調製や光学システム等のチューニングを進めている。さらに、磁場方向ジャンプの実現に向けて、新しいパルサーの製作を続けている。新しい関連した展開として、同様の反応系において高磁場での反応収量検出ESR測定にも成功している。これらにより、低磁場と高磁場でのAWGによる反応制御における様相の違いに迫る事もできる。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (14件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Anisotropic and Coherent Control of Radical Pairs by Optimized RF Fields2023

    • 著者名/発表者名
      Tateno Akihiro、Masuzawa Kenta、Nagashima Hiroki、Maeda Kiminori
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 号: 11 ページ: 9700-9700

    • DOI

      10.3390/ijms24119700

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 量子力学と生物センサ2023

    • 著者名/発表者名
      前田公憲
    • 雑誌名

      数理科学

      巻: 12

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 生体分子におけるキャビティ―を用いた多角的光吸収測定法2023

    • 著者名/発表者名
      ○木村飛翔,福井沙英, 前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学,
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] タンパク質環境で低磁場効果を示すラジカル対の ダイナミクスと構造における ESR と RYDMR 研究2023

    • 著者名/発表者名
      ○長嶋宏樹, 新井柊平,高橋華, 立野明宏, 前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学,
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 低磁場における AWG-RYDMR システムの作成と 周波数変調による RYDMR スぺクトルへの影響2023

    • 著者名/発表者名
      ○立野明宏, 増澤健太, 長嶋宏樹,前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学,
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 時間分解 ESR による逆ミセルおよび溶液中のフラビンとタンパク質の光反応の解析2023

    • 著者名/発表者名
      ○柏﨑真輝, 長嶋宏樹, 前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 逆ミセル中におけるフラビン-トリプトファン系の光反応ダイナミクス2023

    • 著者名/発表者名
      ○髙橋華, 佐野永昂, 長嶋宏樹, 前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] スピンラべル導入タンパク質系におけるラジカル対ダイナミクスの検討2023

    • 著者名/発表者名
      ○牧野航季,長嶋宏樹,前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] クリックケミストリーによるタンパク質距離測定を目指したシクロアルキン構造を 持つスピンラべルの合成2023

    • 著者名/発表者名
      ○田島大地, 長嶋宏樹, 瀧本篤, Lewis M. Antill, 古川俊輔,斎藤雅一,前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] SEMF による低磁場領域でのキサントン-DABCO ラジカル対の解析2023

    • 著者名/発表者名
      ○野沢竜生, 松尾太亮,長嶋宏樹 ,前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] フラビンの反応プロセス解明のための一重項酸素磁場効果測定2023

    • 著者名/発表者名
      ○神保知歩, 若村賢斗, 河合明雄,前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Pump-Push 分光法に対するラジカル対の量子制御2023

    • 著者名/発表者名
      ○栗原由樹, 立野明宏,長嶋宏樹,前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 磁気感受メカニズム解析に向けた鳥類クリプトクロム 4a の精製2023

    • 著者名/発表者名
      ○藤田みのり, 長嶋宏樹, 畑山愛, 深井歩実, Lewis M. Antill, 畠山晋, 前田公憲
    • 学会等名
      第62回電子スピンサイエンス学会年会 (2023), 神戸大学
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 量子生命化学ハンドブック2024

    • 著者名/発表者名
      前田公憲
    • 総ページ数
      346
    • 出版者
      NTS
    • ISBN
      9784860438821
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-07-04   更新日: 2024-12-25  

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