研究課題/領域番号 |
23K17663
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
木村 健太 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70586817)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | フェロアキシャル / 横型物性応答 / 電気双極子 / 磁気トロイダル |
研究開始時の研究の概要 |
電気双極子の渦状配列として特徴づけられるフェロアキシャル秩序は、強誘電性や強磁性に次ぐ新たな強的秩序として注目を集めている。本研究は、フェロアキシャル秩序の特異な対称性に起因した新規な横型物性応答を実験的に明らかにすることを目指す。電場に垂直な電気分極や光の非線形偏光回転といった横型物性応答に狙いを定め、これらを実証することで、フェロアキシャル秩序の特異物性発現の場としての位置づけを確立する。
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研究実績の概要 |
本研究は、電気双極子の渦状配列で特徴づけられるフェロアキシャル秩序に着目し、その特異な対称性の破れに起因した新奇な物性応答を明らかにすることを目指すものである。本年度は、非線形誘電率測定系の構築とフェロアキシャル物質の探索に注力して研究を進めた。 本研究で構築した非線形誘電率測定系は、試料に交流電圧を与えた際に誘起される交流電流を、電流プリアンプとロックインアンプによって検出するものである。参照信号の基本波と高調波を同時に計測できるロックインアンプを導入することにより、線形誘電率と非線形誘電率の同時計測を可能とした。本測定系を典型的な強誘電体(硫酸トリグリシンなど)に適用することで、線形誘電率と非線形誘電率が測定できることを確認した。 新たなフェロアキシャル物質として、多様な物質バリエーションを誇るAB2C6Te3O18 (A = Pb, Sr; B = Mn, Cd; C = Ni, Co)系に着目し、その試料合成を行った。合成条件の最適化により、ABC = PbMnNi およびSrMnNiの単結晶を合成することに成功した。また、フェロアキシャル型の結晶構造をとるイルメナイト型MnGeO3の単結晶合成にも成功した。 フェロアキシャル秩序に由来する特異な現象の探索を行い、偽のキラリティと呼ばれる時間反転と空間反転対称性の破れた磁気状態と、フェロアキシャル秩序を組み合わせることで、磁気トロイダル秩序が誘起できることを提案した。この提案を、無偏光の光に対する方向二色性を観測することで実証した。この成果を、日本物理学会で発表するとともに、学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たなフェロアキシャル物質群AB2C6Te3O18に属する物質の単結晶合成に成功するなど、物質探索は順調に進んでいる。さらに、フェロアキシャル秩序が特殊な磁気構造と組み合わさることで磁気トロイダル秩序を誘起することを実証することにも成功している。一方、研究代表者は当該年度から新しい研究室を主宰しており、実験装置や研究環境の整備に時間がかかったため、当初予定していた実験のいくつかは実施できていない。そのため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況で述べた通り、研究環境の整備による時間的なロスがあった。しかし、本年度は研究環境が概ね整い、研究を加速していけると想定される。既存物質ならびに本研究で新たに見出したフェロアキシャル物質の単結晶を用いて、非線形誘電応答や非線形偏光回転といったフェロアキシャル秩序に起因する特異物性の検証を進めて行く。新規なフェロアキシャル物質の開拓も引き続き進める予定である。
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