研究課題/領域番号 |
23K17666
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小濱 芳允 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90447524)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 強磁場 / 磁場発生技術 / ヘリウムフリー / 産業応用 / ロングパルス |
研究開始時の研究の概要 |
ヘリウムを使わない強い磁場の発生およびその利用は産業応用および学術的にも広く必要とされている研究題目である.本研究では研究代表者が開発したスーパーキャパシタによるロングパルス磁場発生技術に組み合わせるコイルを改良し,この研究題目の達成を目指す. 本研究では低負荷コイルを作成し,これとスーパーキャパシタを組み合わせることで強磁場を発生する.低負荷コイルは,低残留抵抗の高純度銅等により構成され,液体窒素温度以下に冷却することで実現させる.ヘリウムフリーの冷凍機や,繰り返し磁場の発生が可能な充放電器でテストし,本手法がこれまでの磁場発生技術に改革を起こしうる新技術であるかを調査する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、『高純度銅線により構成されたコイルを使って、強磁場を発生する装置の改良』をすることである。この目標達成のために、99.9999%の高純度銅線によりパルス磁石を製作し、研究代表者の独自の技術であるスーパーキャパシタによる磁場発生回路を用いて、この高純度銅線による電磁石を使ったパルス磁場発生を達成した。この新しい磁場発生手法は、従来型のパルスマグネットを使った長い磁場発生時間を持つロングパルス磁場よりも、約2倍の長時間にわたって約1.6倍の強度を持つパルス磁場を発生できている。この実験成果を解析することで、磁場発生に用いる電源やパルス磁石の組み合わせを変えることで、どのようにパルス磁場波形を改良できるかも理解することができた。これは『高純度銅線を用いて、強磁場を発生する装置を改良する』という本研究の目的をほぼ完全に達成したことを意味している。以上の実験成果は数値計算の結果と比較検討しつつ論文として纏め、装置開発の主要な論文であるRev. Sci. Insturm.誌で発表した。また同時に特許出願も進めた。更にはこれらの成果を広く公表すべく、研究代表者主催で研究会を開催した。 2023年度における本研究の成功は、磁場発生装置に係る設備コストおよび運転コストを大きく下げるという意味があり、長期に見ればヘリウム液体を多く使っている超伝導磁石の代替手法になりえる。このため、現在世界的に大きな問題となっている、ヘリウム危機を乗り越える一つの技術となりえると期待できる。 以上のように、目的としていた新規磁場発生手法についての学理はほぼ完全に理解できた。現在は、本研究成果で得られた知見を活かし更に発展させるために、幾つかの磁場を使う現場でのニーズを確認しつつ、様々な場所で運用可能なプロトタイプとなる装置を構築している。これらの評価を来年度の目標としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である、『高純度銅線を用いて、強磁場を発生する装置を改良』については、2023年度中に終えることができた。実験を終了させただけではなく、実験結果と理論計算の結果をまとめ、これを装置開発の論文誌であるRev.Sci.Instrum.誌に発表し、同時に特許出願の手続きも済ませた。更には得られた成果を広く認知してもらうために、代表者により主催する研究会を開催した。このため、研究の進捗状況は極めてよく、初期に設定した研究目標は間違いなく達成している。 現在はさらに次の研究ステップである、磁場発生が必要な産業や理学的研究への応用を目指し、プロトタイプの磁場発生機を構築中である。安全装置の設計など、テスト機では簡易的な設計であったが、これを一新する必要がある。かなりの困難が予想されるが、この研究段階まで進んでいるのは驚きであり、明らかに当初の計画以上の成果がでている。このため『当初の計画以上に進展している』と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は既に『磁場発生手法の改良』という研究目標を達成しており、磁場が必要な現場での応用に向けて新規装置開発を進めている段階である。この次なる目標達成のためには低温で大型コイルを任意の放電幅で磁場発生する必要がある。新しい磁場発生用クライオスタット、磁場発生強度を上げるために、99.999~99.9999%の銅線で構成された大型パルス磁石が必須である。また磁場発生時には、マグネットの発熱を抑えるために、任意のタイミングで磁場発生を強制終了できる新型大電流放電回路も必要と考えている。 以上の実験に必要な器具を纏めると、(1)磁場発生用クライオスタット、(2)99.999~99.9999%の銅線で構成されたパルス磁石、(3)新型大電流放電回路の3つである。実は(1)の装置については納品は送れているが、2024年度の6月までに納品予定である。(2)は大型のコイルを巻く予定であり、この巻き線作業は遅れているものの、ノウハウは蓄積できており、2024年度9月までには整備可能である。(3)は既に前年度に設計を終え、その整備も終えている。以上の見通しでは、全ての装置を今年度の前期中に揃えることが可能である。この装置整備を終えた後に、そのテストを今年度の後期に始める予定である。ここでは繰り返し放電と最大到達磁場のテストを行う。『30テスラ級のロングパルス強磁場を5分に一回繰り返し発生』という困難な目標の達成を目指し、装置開発を進めていく。
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