研究課題/領域番号 |
23K17672
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40334346)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 準結晶 / 近似結晶 / 結晶場 / 磁気異方性 / 非共線・非共面磁気構造 / 動的磁気構造因子 / 非相反磁気励起 / 20面体 / 磁性 / 磁気ダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
非周期的な原子配列からなる準結晶は周期結晶では許されない5回回転対称性などの特有回転対称性をもつ。その電子物性の解明は物性物理学のフロンティアである。準結晶において磁気長距離秩序が実現するか否かは長い間未解明であった。本研究では、準結晶における新奇磁性の開拓に挑戦する。具体的には、準結晶において、新奇磁気秩序を探索・同定する。さらに、同定した磁性相の素励起とダイナミクスを解明し、準結晶における磁気励起の概念を確立することをめざす。
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研究実績の概要 |
近年、準結晶Au65Ga20R15 (R=Tb, Gd)およびAuxGa85-xDy15 (x=62-68)において強磁性長距離秩序が実験により発見され、大きな注目を集めている。理論的には、これまで未解明であった結晶場の理論が定式化され、結晶場による磁気異方性の効果を正確に取り入れた有効磁気モデルにより20面体準結晶および近似結晶の磁気構造が明らかとなってきた。 また、20面体準結晶の非共線フェリ強磁性秩序およびヘッジホッグ秩序における磁気励起について理論解析が最近行われた。興味深いことに、一様なヘッジホッグ秩序相における静的磁気構造因子および動的磁気構造因子の理論解析により、周期系ではこれまで知られていない特異な動的励起、および広大な波数q -エネルギーw領域で非相反磁気励起が現れることが見出された。 本研究では準結晶で見出されたこれらの磁気励起の出現機構に洞察を得るため、1/1近似結晶の一様なヘッジホッグ秩序相における磁気励起について理論解析を行った。まず、静的磁気構造因子が一般に格子の構造因子と20面体の磁気構造因子の積の形で表されることを示した。さらに一様なヘッジホッグ秩序相の静的磁気構造因子を数値計算により明らかにし、解析的な表式も導出した。また、線形スピン波理論を適用することにより、磁気励起のエネルギー分散を数値計算により求めた。その結果、波数空間のN-P-Gamma線に沿った領域で、エネルギー分散が非相反性を顕著に示すことがわかった。さらに、動的磁気構造因子S(q,ω)は高エネルギー領域のGamma-H線およびP-Gamma-N線に沿ったGamma点近傍で強い強度を示すことを明らかにした。また、基底状態からのマグノン励起を摂動論により解析した結果、波数空間のN-P-Gamma線に沿った領域で非相反磁気励起が現れ、上記の顕著な非相反性の出現を説明できることがわかった。さらに、対称性の観点から非相反磁気励起の出現が説明できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近似結晶における磁気有効モデルについて、磁気基底状態を求める数値計算プログラムを構築した。さらに静的および動的磁気構造因子を計算するための理論の定式化および数値計算プログラムも構築した。これらを用いてヘッジホッグ秩序相の静的および動的磁気構造を明らかにすることができたので、当初予定通り順調に研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度明らかにした、準結晶のヘッジホッグ秩序相の静的および動的磁気構造因子を実験研究者に提示し、今後の中性子散乱実験による静的および動的磁気構造の観測に向けて、実験研究者と連携して研究を推進していく。
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