研究課題/領域番号 |
23K17673
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分13:物性物理学およびその関連分野
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
石井 悠衣 島根大学, 学術研究院機能強化推進学系, 教授 (50708013)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 構造量子臨界点 / ソフトモード |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、従来の量子相転移研究に対し、「フォノン系の量子相転移」という新たな切り口から取り組む。フォノン系の量子臨界点では「フォノンの量子揺らぎ」が発現しているはずであるという発想のもと、音響ソフトモードに由来する構造量子臨界点(sQCP)近傍での格子ダイナミクス変化を定量的に解析し、さらに光学ソフトモード由来のsQCPでのフォノン物性の異常を明らかにする。これにより、「フォノンの量子揺らぎ」とは具体的にどのような物理パラメータの変化を伴うのか、そのミクロスコピックな解明を行い、この新興研究分野において、様々な物質に適用可能な形へ「構造量子臨界現象」を一般化する。
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研究実績の概要 |
秩序相に隣接して出現する新奇量子相の探索と解明は、現代の物性物理学の主要課題の1つである。本研究では、従来のスピン系に主眼の置かれた量子相転移研究と対比する形で、「フォノン系の量子相転移」という新たな概念に注目している。スピンを主役とする量子臨界現象に関しては実験・理論ともに基礎研究の積み重ねがある。例えば電子の有効質量の増大や超伝導の増強など、スピンが関与する何らかの物理パラメータが量子臨界点で増加することがその特徴である。一方、フォノンもスピンと並ぶ量子の1つであるにもかかわらず、フォノンはどちらかというと脇役であることが多く、フォノン主導の量子相転移というフレームワークは、これまで十分に認識されていない。そこで、「構造の」量子臨界性について独自に研究を進めた結果、最近、Ba1-xSrxAl2O4強誘電体において、x=0.1付近で音響ソフトモードの凍結が絶対零度まで抑制され(構造量子臨界点, sQCP)、x > 0.1の組成では、インコヒーレントに凍結したソフトモードによって、結晶の副格子内で並進対称性が3次元的に破れ、全体としては結晶性であるにもかかわらずフォノンの性質は完全に非晶質そのものである、「副格子ガラス状態」が実現していることを見出した。この状態はまさに、構造量子臨界性の主要な発現の1つであると考えられる。本研究では、この「副格子ガラス状態」に変化する過程での格子ダイナミクス変化を定量的に解析し、「フォノンの揺らぎ」に直結する物理パラメータとその変化の解明を目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの本研究による中性子非弾性散乱(粉末)実験から、Ba1-xSrxAl2O4ではsQCP組成に向かってフォノンスペクトルが大きく減衰し、非晶質固体で見られるブロードなスペクトルへと変化していることが明らかになっている。sQCPのダイナミクスの変化を捉える方法として、単結晶を用いた中性子非弾性散乱があるが、それには大型の単結晶が大量に必要であり、現実的ではない。そこで、まず小さな単結晶で測定が可能なX線非弾性散乱に注目し、BaAl2O4単結晶に対するX線非弾性散乱を行った。その結果、まずBaAl2O4のソフトモードの観測に成功しており、現在そのソフトモードのスペクトルを解析中である。このことを踏まえ、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Ba1-xSrxAl2O4は音響フォノン分枝にソフトモードを持つ構造量子臨界物質であることが実験的に明らかとなった。そこで、今後は対象物質を広げ、音響・光学それぞれのフォノン分枝にソフトモードを持つ物質について、その構造量子臨界点での物性変化を明らかにしていく。
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