研究課題/領域番号 |
23K17676
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
近藤 正聡 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70435519)
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研究分担者 |
浜地 志憲 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (60761070)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 核融合炉 / 液体金属 / 腐食 / 物質輸送 / 電子風 / ダイバータ / 第一壁 / エレクトロマイグレーション / ブランケット |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、核融合炉環境化を想定し、高温の液体金属および固液金属界面において電子風により生じうるエレクトロマイグレーション(Electro Migration: EM)現象のダイナミクスを明らかにする事である。電流駆動型腐食試験装置を製作し、500℃以下の液体リチウム鉛合金や液体錫合金中における低放射化フェライト鋼やFeCrAl合金のEM現象を調べる。試験片と液体金属の界面に電流(0、0.1、1、10、100 A/cm2)を通過させながら250時間程度の腐食試験を実施する。電流(電子の移動)という物理化学的パラメータを取り入れた高温液体金属内の新しい腐食・原子輸送機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
核融合炉の第一壁を液体金属で覆い高熱負荷などから保護する液体壁概念が検討されてきた。こうした液体壁概念における化学的共存性の課題などを背景として、本研究の目的は、高温の液体金属および固液金属界面において電子風により生じうるエレクトロマイグレーション(Electro Migration: EM)現象のダイナミクスを世界に先駆けて明らかにする事である。核融合炉の燃料増殖材である液体リチウム鉛合金を用いた試験では、EM現象が腐食プロセスにおける金属原子の溶出と輸送に与える影響を調べる。2024年度は、エレクトロマイグレーション試験装置の整備と予備試験結果の解析を実施した。液体金属を介して正極側と負極側に304オーステナイト鋼(Fe-18Cr-8Ni)試験片を設置し、電流を印加しながら腐食試験を実施した。温度は500℃、接液界面における電流密度は3.7 A/cm2であり試験時間は250時間である。正極側では、電子風により運動量を付加された鉛原子がオーステナイト鋼表面に衝突を繰り返した事により腐食が大きく促進される事がわかった。一方で負極側では鉛が正極側に押されることで不純物が負極側に押し出されることで濃縮し析出物を形成することがわかった。こうした事について、固体金属におけるエレクトロマイグレーションモデルをベースとした、液体金属の場合のモデルを構築し、腐食に与える影響を定性的に評価した。こうした成果を日本原子力学会2024年春の年会@近畿大学にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高温の液体金属環境下におけるエレクトロマイグレーション現象の発生に関しては、極めて情報が限られている状況の中で、実験によりはっきりとその現象を捉える事に成功している。特に、材料内における電流の流れ方や、接液界面における腐食や析出の挙動をはっきりと捉え、その現象を説明する理論の構築へと進めている。今後はこうした成果を纏めて論文を投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
液体金属環境下におけるエレクトロマイグレーション試験の結果について、正極側における腐食の促進現象や負極側における析出について、STEMやFE-SEM/オージェ電子分光分析などによる原子の拡散現象の痕跡を明らかにする。また、比較をするために、同様の温度条件、試験時間において、電流を流さない腐食試験も合わせて実施し、電流による効果を明らかにする。 一方で、電流密度の影響や、電子風の影響が小さいビスマスのような液体金属を用いた試験も実施し、液体金属環境下におけるエレクトロマイグレーション現象を体系的に明らかにする。
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