研究課題/領域番号 |
23K17677
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分14:プラズマ学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
間嶋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50515038)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 負イオン / 電子衝突 / 分子解離 |
研究開始時の研究の概要 |
電子衝突による分子からの二次イオン生成は,プラズマや放射線・量子ビームなどの高エネルギー粒子と分子の相互作用において最も重要な初期過程のひとつである.電子衝突に伴う負イオンの生成過程についても古くより研究され,主な描像は確立したものと考えられてきた、しかし申請者は最近、その生成過程の描像に不十分な点がある可能性に注目している。本研究では,3次元運動量画像分光装置を用いて電子衝突による多原子分子からの新奇な負イオン生成過程の詳細を実験的に明らかにすることを目的とする.
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研究実績の概要 |
本研究では、高速重イオン衝突において最近発見された多原子分子の解離に伴う新たな負イオン生成事象の発見を契機とし、電子衝突における同様の過程の探索を目指した実験的研究を進めている。主に申請者が最近開発を進めている解離イオン同時検出3次元運動量画像分光装置を用いて研究を行った。本研究課題によって、本装置に新たに電子銃を追加することに加え、分析のための引き出し電場をパルス方式とする改良を加えることにより、電子衝突に伴う解離イオンの分析を実現する。パルス電場によって引き出した解離イオンの検出器までの飛行時間と検出位置を測定し、そこから全解離イオンの3次元的な運動量ベクトルの相関を得る。本年度は新たな分析装置の立ち上げに伴い、その測定条件の最適化や改良を進めた。電子ビームを分子線と精密に交差させる必要があるため、高精度な位置制御が可能な超音速分子線標的のシステム構築を行った。分子線ノズルとスキマー位置を外部から調整できる機構を構築し、分子線を上下左右に制御して分析部中心のビーム交差位置へ精度良く導入することが可能となった。位置敏感検出器を用いて、ビームと気相分子の衝突位置を直接モニターできることも確認した。また、生体への放射線影響に最も大きな影響を及ぼすとされる水分子など、気体の分子のみならず液体由来の分子についても研究対象を広げるため、液体試料からの分子を含む分子線標的を生成するシステムを構築し、水分子の解離イオンが測定できることを確認した。また、先行しているイオン衝突の実験で、候補となりうる様々な多原子分子の測定を進め、多原子分子に特徴的な遅延解離過程などの新たな解離経路の詳細を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で測定対象としている負イオンの強度は正イオンに比べて数桁小さく、大量の正イオンが起因となって発生する不純物イオンや二次電子の干渉が生じるため、これらの対策に時間を要しているが、全体としては概ね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
電子銃のシステムを本装置に設置し、電子ビームの輸送ガイドと二次電子検出の抑制を兼ねて装置全体に弱磁場を印加する。最初の試験的な実験として、電子衝突実験における本装置の性能評価を行うため、O2やCOなどの簡単な2原子分子に対する測定を行う。これらは、負イオン収量の衝突エネルギー依存性がよく知られているため、これらのデータから負イオン収量測定の正確性を確認する。さらに、解離イオンの運動エネルギーと放出角分布の高精度な情報の取得を目指す。多原子分子標的としては、重イオン衝突で実績のある、水、炭化水素、アルコール分子を対象とする。研究が順調に進めば、グリシンやアデニンなどの生体分子まで測定を進める予定である。
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