研究課題/領域番号 |
23K17683
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柏木 茂 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (60329133)
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研究分担者 |
川瀬 啓悟 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 光量子ビーム科学研究部, 主幹研究員 (60455277)
齊藤 寛峻 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 特別助教 (10964976)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | コヒーレント放射 / 誘導放射 / 自由電子レーザー / テラヘルツ光 / 電子ビーム / テラヘルツ / 電子加速器 / 極短電子ビーム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、2種類の電子バンチからの光の発生機構:「誘導放射」と「コヒーレント放射」を使い、大強度・高効率のハイブリッド光源を実現する。目的達成のための重要課題は、①FEL増幅過程を利用した光マイクロバンチング、②マイクロバンチをラジエータ(偏向電磁石)まで輸送するアイソクロナス(等時性)ビーム光学系の構築である。原理検証実験のためにテーブルトップハイブリッド放射光源の開発を目指す。開発するシステムでは、波長60um(5THz)の基本波とその高調波を発生することが可能であり、光共振器の結合口からはFELを取り出すことも検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、電子バンチからの光の発生機構である誘導放射とコヒーレント放射の2つのプロセスを融合し、大強度・高効率のハイブリッド光源の実現するための基礎研究を行う。 本年度は、本研究の基盤開発要素の一つである電子銃開発を重点的に行った。川瀬を中心に電子ビーム源を用いるファイバーレーザーシステムのシード共振器部の構築を行った。これと並行して、レーザーパルスをカソードに照射する際に必要となる波長変換システムの設計も行い、当初予定していたマルチアルカリ光陰極カソードではなく、銅カソードにも対応できるよう、2倍波生成だけでなく4倍波生成も可能なシステムを設計した。一方、代表者の柏木は東北大学先端量子ビーム科学研究センター内で直流高電圧印可型の電子銃システムを構築中である。これまでに、電子銃の高圧デッキおよび電子銃、電子ビームエミッタンス測定システムの構築を行った。本電子銃システムはX線発生装置となるため、現在、届出手続きを進めている。また、最初に電子銃システムの動作確認をするため、光陰極を導入する前に熱陰極を電子銃に取付け、ビーム発生試験を実施する。 電子ビームのマイクロバンチ化に関しては、新たに分担者に加わった齋藤と柏木がビームシミュレーションと数値計算によりシステム設計を進めている。これまでに、テラヘルツ光の波長よりも十分短い時間幅まで圧縮された電子ビームが発生する放射(コヒーレント放射)について評価を行った。また、超短電子パルスがパルス列になった場合に放射されるコヒーレント放射についても詳細に調査を行い、光共振器を設計するための基礎データとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テーブルトップサイズのハイブリッド放射光源開発のなかで、最も重要な電子ビーム源開発は順調に進行中である。光陰極については、マルチアルカリ光陰極カソードとともに、堅牢性の高い銅カソードについても検討を進めている。また、電子銃の基本システムである100kV高圧印可電源についてもほぼ予定どおりに準備が進んでおり、本年度前半にはビーム試験が実施可能である。 電子ビームとテラヘルツ放射を相互作用させる光共振器の設計を電子ビームからの放射計算をもとに進めている。一方で、当初、電子ビームエネルギーを3MeVまで加速することを予定していたが、放射線発生装置の申請などに時間を要するため、1MeV未満での実験が可能であるかの検討もこれまで行ってきた。まだ、最終的な結論には至っていないが、1MeVの低エネルギー電子ビームによるテラヘルツ領域の電磁波放射に関する研究は、非相対論的エネルギーの電子ビームからの放射に関する新たな知見が得られる可能性がある。その他、ビーム輸送系(アイソクロナス輸送系)について数値計算をもとに設計を進めている。 また、初年度にマイクロバンチからのコヒーレント放射計測に関する準備を東北大学先端量子ビーム科学研究センターの試験加速器を用いて行った。約100fsの時間幅の電子バンチからのコヒーレント遷移放射を計測し、バンチ形状などを推測する試験実験を実施しており、ハイブリッド放射光源の特性測定にも利用できる。
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今後の研究の推進方策 |
数値計算に基づくパラメータを使い、光陰極直流型電子銃により100kV電子ビーム発生実験を実施する。カソードには、現段階では堅牢性の高い銅カソードを用いる予定であるが、光陰極用のレーザーシステムにおいて4倍波(紫外光)で十分な強度が得られない場合には、当初の予定通りマルチアルカリ光陰極カソードの導入を検討する。(量子効率は、銅カソードよりも、マルチアルカリ金属の方が2桁程度高い)ビームエネルギーに関しては、ブースター高周波空洞を使い1MeVを僅かに下回るエネルギーまで加速し、短周期のアンジュレータを通過させることにより、コヒーレント発生実験を実施する。そして、電子ビームパラメータと放射光特性の詳細な比較をし、ハイブリッドテラヘルツ光源開発に向けた基礎データを収集する。 ビームエネルギーが1MeV程度と当初の想定よりも低くなったため、光の発散角が大きくなりオープンレゾネータ型の光共振器内で光損失を起こす可能性があるため、前年度に検討した光共振器設計をもとに再度確認を行い、最終形状を決定した後、直ちに光共振器の製作に取り掛かる。この作業と並行して、アイソクロナスビーム輸送系の最終設計を行い、電磁石等の製作などに取り掛かる。基本的に電磁石などは既存のシステムを改良して使用する。
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