研究課題/領域番号 |
23K17685
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
飯田 崇史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (40722905)
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研究分担者 |
吉野 将生 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (30789938)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 無機シンチレータ / 放射線計測 / 波長粒子識別 / 粒子識別 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、現在開発中の「発光波長の情報を用いた粒子識別手法」と、「6Liを含むシンチレータ」の二つの技術を融合させ、次世代中性子検出器を開拓する。放射線の中でも中性子は、中性子回折による結晶構造分析、BNCTや重粒子線によるがん治療、コンクリ内部の非破壊検査など、様々な用途が存在し今後その利用分野は拡大していくと考えられる。本研究で粒子識別能に優れた革新的な中性子検出器を新たに開発出来れば、社会におけるインパクトは非常に大きい。革新的な放射線の撮像は、実社会に非常に大きなメリットをもたらすことが期待される。
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研究実績の概要 |
波長情報を用いた粒子識別技術の開拓を目指している。これまでにMPPCセンサーとEu:LiCaI結晶を用いて、波長による粒子識別の原理検証を行ってきた。本研究の初年度は、波長による粒子識別技術を異なる結晶への応用を検討した。 まず、様々な無機シンチレータ結晶に対し、アルファ線とエックス線を照射しての発光波長スペクトル測定(ラジオルミネッセンス)を行った。Ce:Gd3Ga3Al2O12結晶やEu:LiCaAlF6、そしてEu:CaF2結晶などを測定し、その結果を比較した。この結果、特にEu:CaF2結晶において、照射した放射線の種類と発光波長に明確な差異が確認された。CaF2の場合、Eu2+の発光が波長420nm付近、Eu3+の発光が波長590-700nmの間に複数のピークができる。アルファ線を当てたときとエックス線を当てた時で、明らかにEu3+/Eu2+の発光割合が異なり、アルファ線を照射した場合の方がよりEu3+の割合が高いことが判明した。この結果、放射線の種類の違いによって発光波長に違いが生まれ、波長情報から粒子毎の放射線量が個別に測定ができる可能性が示された。 また、カラーCMOSカメラを購入し、MPPCの代わりに用いるための準備を進めた。実際に10分程度の長時間露光を行うことで、CMOSでEu:CaF2結晶からの発光を確認することに成功した。これらの成果は次年度以降の研究につながるものであり、現在は結果を学術論文としてまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたEu:LiCaI以外でも、様々なシンチレータ結晶に対してラジオルミネッセンスの測定を行った。その結果、Eu:CaF2結晶において、Eu2+/Eu3+という配位の異なる発光中心の発光量比が、アルファ線とエックス線で異なることを突き止めた。これまでに知られていなかった画期的な発見であるとともに、新たな波長情報を用いた放射線粒子識別技術の第一歩を踏み出すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Eu:CaF2結晶にアルファ線とエックス線を照射した際の飛跡をカラーCMOSカメラで撮像する。実現すれば世界初の放射線飛跡カラー撮像となる。そのためにEu濃度を変えたEu:CaF2結晶を複数作製し、ラジオルミネッセンス測定を行うことで実験に適した組成の最適化を行う。加えてCMOSカメラに水冷のオプションを導入し、素子を-40℃に冷却してノイズを限界まで下げた測定を行う。また並行して、Eu:LiCaIやCeBr3等の結晶でもラジオルミネッセンス測定を進めていく予定である。
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