研究課題/領域番号 |
23K17697
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 宇宙線 / 時刻同期 / muometric / cosmic time synchronizer / cosmic time calibrator / muPS / MuWNS |
研究開始時の研究の概要 |
2次宇宙線の一種である、高エネルギーミュー粒子の相対論的エネルギーは高く、ほぼ、真空中の光速で飛行することから、これらの粒子が地表に到来するタイミングの同時性は高く、また、光速で飛行することから時計間の距離がわかっているとその間を飛行する時間を正確に計算可能である。更に、宇宙線ミュオンの貫通力は強く、屋内、地下、山間部、水中にも到達可能であることから、同環境下でも時刻同期が可能である。本研究では、屋内、地下空間、大型水槽などを活用して、GPSが使えない環境下における異なる位置での時刻同期を行い、その同期精度の検証を行う。
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研究実績の概要 |
2次宇宙線の一種である、高エネルギーミュー粒子の相対論的エネルギーは高く、ほぼ、真空中の光速で飛行することから、これらの粒子が地表に到来するタイミングの同時性は高く、また、光速で飛行することから時計間の距離がわかっているとその間を飛行する時間を正確に計算可能である。更に、宇宙線ミュオンの貫通力は強く、屋内、地下、山間部、水中にも到達可能であることから、同環境下でも時刻同期が可能であ る。本研究では、屋内、地下空間などを活用して、GPSが使えない環境下における異なる位置での時刻同期を行い、その同期精度の検証を行う。高精度な時刻同期は、固体地球観測や物理探査など科学的観測研究に重要な技術であるだけでなく、金融取引、交通機関、放送、医療、工場稼働、社会基盤系などを始めとする社会システムの安定運用やセキュリティ強化など人類社会活動の推進においても極めて重要な社会基盤技術である。 しかしながら、屋内、地下や水中においては、GPS信号が届かないために、セクターごとの様々な活動において統一的な高精度無線時刻同期法によるトレーサビリティが確立しているとは言いがたい。本研究課題においては、ミュー粒子の飛行速度と貫通力を応用して、100ナノ秒レベルの精度を無線で実現する技術を開発、実証することを目的としている。ミュー粒子時刻同期装置の運用において、信号が同一ソースによるものであることを同定する必要があるが、事象頻度と事象間の時間間隔に8桁以上のスケール差があることから一般的なクオーツで求める事象を偶発事象から分離することが十分可能であるが、オフライン同期に限られる。時刻同期をオンライン(リアルタイム)で実現するためには、より安定的な時計が必要である。これまでに恒温槽付水晶発振器技術を宇宙線到着時刻記録電子回路に適用することでリアルタイムで高精度無線時刻同期が実現可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、屋内、地下空間などを活用して、GPSが使えない環境下における異なる位置での時刻同期を行い、その同期精度の検証を行うことを目的としている。そのために、ほぼ、真空中の光速で飛行する2次宇宙線の一種である、高エネルギーミュー粒子が地表に到来する時刻を測定する。 宇宙線ミュオンの貫通力は強く、屋内、地下、山間部、 水中などのようなGPS信号が届かない環境下にも到達可能であることから、このような環境下で宇宙線到来時刻を測定することで、GPS信号が届かない環境下における同期精度の検証を行う。この検証のためには、測定されたミュー粒子信号が同一ソースによるものであることを同定する必要があるが、事象頻度と事象間の時間間隔との間にある8桁以上のスケール差から一般的なクオーツで達成できるタイムゲートであっても求める事象を偶発事象から分離することが十分に可能である。ところが「同期された」という情報が後の解析からわかるのみであり、時刻同期技術の実用性としては低い。一方で、事象と次の事象との間をリアルタイムに予測、補間できれば、リアルタイムの無線時刻同期が実現可能である。この可能性を念入りに調査した結果、時間デジタル変換器から出力されるタイムスタンプと次に出力されるであろうタイムスタンプとの間を恒温槽付水晶発振器で精度良く予測、補間することで、リアルタイム無線時刻同期を行えることを見出した。研究遂行上、この恒温槽付水晶発振器技術の適用による時刻同期高度化技術の本質を見極めることが不可欠なため、遅延が生じたが、これにより、当初の計画「オフラインでの時刻同期」から当初計画を超える「オンライン(リアルタイム)での時刻同期」が可能となる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、屋内、地下空間などを活用して、GPSが使えない環境下における異なる位置での時刻同期を行い、その同期精度の 検証を行うことを目的としている。これまでに、恒温槽付水晶発振器を宇宙線到着時刻記録電子回路に実装することで時間デジタル変換器から出力されるタイムスタンプ間を恒温槽付水晶発振器で精度良く補間することができるようになり、リアルタイム無線時刻同期を行えることを見出した。今後は、恒温槽付水晶発振器を宇宙線到着時刻記録電子回路に実装することで、このアイディアの検証を行う。続いて、2次宇宙線粒子が地表に到来するタイミングの同時性をGPS信号が届かない環境下で、次に示す(A)、 (B)の手順に従い検証する。(A)恒温槽付水晶発振器を実装した宇宙線到着時刻記録電子回路を高速粒子検出器に接続して、時刻同期センサーを複数台製作する。(B)そのうち1台をGPSアンテナに接続して、GPS時刻を取得する(マスターセンサー)とする。残りのセンサー(スレーブセンサー)はGPS アンテナには接続せずにGPS信号が届かない環境下に設置する。更に(B)においては以下の2通の比較を行う。(B-1)GPS信号が届かない環境下に設置されたスレーブセンサーの時刻とマスターセンサーが出力するGPS時刻との比較。(B-2) GPS信号が届かない環境下に設置されたスレーブセンサーの時刻と地上のスレーブセンサーとの比較。ここで比較とは「同軸ケーブルで繋いだ有線」と「ミュー粒子による 無線」との比較を意味する。「同軸ケーブルで繋いだ有線」の測定結果については、ケーブル長による遅延時間の補正を行う。
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