研究課題/領域番号 |
23K17701
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平原 聖文 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50242102)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 宇宙プラズマ / 半導体検出器 / 宇宙探査 / フローティング / 粒子検出 / エネルギー分析 / 小型・軽量 / 低電圧 / 直接計測 / 同時計測 |
研究開始時の研究の概要 |
惑星周辺も含む宇宙全体に分布する宇宙プラズマ粒子を探査機などにより直接的に計測する技術に関し、以下の2つの新規要素技術の基礎開発を行う。第1は、宇宙プラズマを構成する電子・イオンに対して同時にエネルギー分析を行うセンサー技術を独自考案し、概念設計・基礎開発を経て技術実証を行う。第2は、入射粒子検出用に単一検出素子あるいは複数素子の結合により新規の応答信号も生成し、先進的な微小応答信号の処理回路の新規導入を行う。これらの要素技術の基盤開拓・統合により、将来の宇宙惑星探査計画に向けて、日本独自の機器開発能力と革新的・独創的な計画立案・推進力を増進する。
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研究実績の概要 |
プラズマ粒子は宇宙空間に広く分布し、無衝突状態にもかかわらず電磁場を介した特異なエネルギー輸送機構により流体として扱うだけでは基本的な物理過程は解明されない。そのため、プラズマを構成する粒子毎に3次元速度を計測する必要がある。このための革新的な計測技術の基盤開拓として、プラズマ粒子を検出するための半導体検出器の一種であるアバランシェフォトダイオード(APD)に着目する。APDは比較的小型・軽量であり低電圧にて駆動可能である上、出力信号の波高分析により入射粒子のエネルギー弁別が可能である。本研究では、宇宙プラズマの数密度・質量密度を左右する低エネルギー帯域の粒子分析のため、APD全体の電位を±5kVに制御することで入射粒子を加速しつつ入射させる手法(フローティングモード)を導入し、APD入射面の不感層ができるだけ薄いものを新規に設計・製造し、現有の荷電粒子ビームライン装置を用いて粒子入射実験を実施する。また、エネルギー弁別用の出力信号の波高分析に加え、1nsec程度の時間分解能により高速で信号処理が可能な前置増幅器の検討・設計・開発を行い、できるだけ低いエネルギーの粒子に対してエネルギー弁別と到達時刻判定が同時に可能な粒子検出器系の基礎開発を行う。本年度の研究活動・成果としては、世界的にも高性能であり宇宙計画での実績もあるAPDを製造可能である国内メーカーと議論しつつ、不感層ができる限り薄いAPDを新規に調達した。また、高速に信号処理が可能な前置増幅器についても、実績のある国内メーカーの技術者と検討を行い、次年度に具体的な設計・製造を行う見通しとなった。さらに、本課題に関連する学術論文の作成・改訂を行い、フローティングモード式APD単体およびそれを適用可能な平面状視野式静電型エネルギー分析器の新規設計・開発に関する学術論文、合計3編を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度としては、本研究課題に関わる基軸的技術が革新的であるという理由から、関連する学術論文3編の作成・投稿・改訂・出版を優先させた。並行して、宇宙プラズマ粒子が入射するアバランシェフォトダイオード(APD)前面の不感層が可能な限り薄く、APD全体の静電容量がなるべく小さいこと、粒子検出上の雑音となる漏洩電流がなるべく小さいこと、などに考慮し、新しい設計・製造を前提とした半導体検出器の選定・発注・納品に時間を要した。また、高速で出力信号を処理できる前置増幅器の検討においては、出力信号の波高分析の精密化と信号到達時刻判定の高時間分解能化の両立における課題を議論する必要があり、新規設計・製造のAPDの特性と前置増幅器の設計の両面から時間をかけて慎重に検討する必要があった。また、2023年後半からの円高に伴う半導体などの価格高騰と調達の遅延などのため、ある程度の物品調達が次年度に先送りされた。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ粒子がアバランシェフォトダイオード(APD)に入射する面の不感層に関しては、本研究の規模に鑑みた場合の適正価格において国内で調達可能な規格を前提とする場合、最も薄いタイプ(約34nm厚)のAPDを調達しているため、宇宙プラズマを構成する電子・各種イオンを真空内で新規格のAPDに照射できる荷電粒子ビームライン装置を用いて、様々なエネルギー(~10 eV/q ― ~100 keV/q)で実験を行い、薄い不感層の効果を調査する。これらは入射粒子のエネルギー弁別に関する基礎実験であり、APDからの出力信号をガウス分布に近くなるように波形整形をした後、波高を分析することで入射エネルギー弁別を行うが、それらの処理時間は10μsec以上となる。この処理時間に比べ遙かに速い処理速度(1 nsec程度)で信号の到達時刻を検知できる前置増幅器の機能も含んだデュアルタイプ前置増幅器を国内メーカーと共同して開発する。これにより、エネルギー弁別に加えて高速で入射する粒子の速度分析を行う基本的な信号処理技術を獲得できると期待できる。エネルギー弁別と速度分析が一つの検出器系・信号処理系で取得可能になれば、それら2つの信号分析結果を用いることで入射粒子の質量を算出する基礎的な計測技術を構築・確立できる。
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