研究課題
挑戦的研究(萌芽)
圧力は地球科学や物質科学において重要な状態変数である。本研究は、これまで蓄積した研究設備および技術を大容量プレスによる超高圧発生のために進展させるものである。現在、大容量プレスとしては川井型加圧方式による実験が主流に行われている。この方式において、発生可能圧力は現状約120 GPaである。この圧力は地球のマントル最下部のD”層にぎりぎり到達する圧力であり、マントル核境界や核の研究を行うことは難しい。そこで、本研究では、かつて1970年代に研究された多アンビル摺動型加圧方式に着目する。近年の材料開発と装置技術の発展により、この加圧方式が可能ではないかと考えており、その可能性を探究する。
マントル全域を網羅するような圧力を発生させるための技術開発を行っている。その方法としてマルチアンビル型高圧装置を用いてのMASS型セルを圧縮する。MASS型はmulti-anvil sliding systemの略であり、2段目アンビルの表面同士を滑らせることによって試料体空間を圧縮することになる。この方式では、圧縮空間は無限小サイズまでの可能であり、また、最高圧となる試料体部分をガスケットが支える必要がなく、他のマルチアンビルセルに比較して有利なセルであると考えられる。近年の材料開発の進展により、かつては困難であったMASS型による加圧が可能となっていると考えられる。当該年度では、2段目アンビルに超硬合金を用いて実験を行ってきている。これは、焼結ダイヤダイヤモンドアンビルが高価であるために、まず第一歩として、超硬による予備的実験を試みたものである。MASS型セルにおいては、一段目アンビルとの空隙を埋める疑似弾性体がアンビルの側面サポートに重要な役割を果たす。そこで、その材料として、パイロフィライトなどの粘土鉱物や銅などの金属を試験した。その結果、ステンレススチールが強度と流動の関係において適当であるとの結果に至った。また、3次元加工機を用いて様々形状を試験してきた。
3: やや遅れている
超硬合金を用いた実験では、放射光X線を用いてのその場圧力決定が不可能であるため、電気抵抗測定による圧力校正が必要となる。しかしながら、MASS型では、アンビル間の絶縁を確保することが難しく15 GPa以上での電気抵抗の測定が出来ていない。れは、所謂6-8型といわれる圧縮方式に対して、ガスケット方法
前述したようにアンビル間の絶縁の確保が重要となってくる。そこで、マイカシートやカプトンシートなどの種々の材料を試して行くとともに、X線その場観察実験において、X線方向のみのアンビルをX線透過能が高いシリコンバインダーの焼結ダイヤに置き換え(ハイブリッドアンビル)、その場観察で圧力を決定してことも検討する。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 120 号: 32 ページ: 2221770120-2221770120
10.1073/pnas.2221770120
Journal of Geophysical Research: Solid Earth
巻: 128 号: 6
10.1029/2022jb026165
Core-Mantle Co-Evolution: An Interdisciplinary Approach
巻: -